25 少年の願い
「………褒めるわけないでしょ!!!」
「ちょ、ちょ、ルナ、落ち着いて!」
「こんなの落ち着いてられないよ!悪い事はダメだって教えないと!」
この現象をどのようにやったのかは未だに分からないけれど所詮子供のした事であって、今回のような件では罪に問われる事もないだろう。多少はおおめにみないといけない事もある。
でも褒めてもらいたいからってこんな風にするのなんて絶対だめ。関係ない人を巻き込むなんて絶対だめ。
ふー、と息を吐き問いかける。
「ねぇ君。お名前は?」
「ロキだよ!」
「ロキ、今すぐ全てを元に戻して。巻き込んでしまった人にはちゃんと謝るの。ロキのせいで悲しんでる人がいるの。」
「え……悲しんでる……?ぼ、僕、間違ったことしてるの……?ただ、褒めてもらいたかっただけなのに…。」
「そう。エイレネさんやそのお母さん。エイレネさんのお母さんは倒れてしまうくらいとても傷付いているの。貴方は他人を苦しめている。人を傷付ける人になっては絶対だめ。今からでも遅くないから全てを元通りにして、謝るの。間違った事をしたらちゃんと謝れる人になりなさい。」
話してるうちにどんどん熱くなってしまい、説教が止まらない。そんな私を見て、ロキは耐えきれなくなり涙を流し始めた。
「…うっ、ひっく…。」
「いい!?返事は?!!」
「…はっ、はいっ!ごめんなさいっ…ぐす。」
泣きながらもしっかりと謝る姿を見て、怒りも徐々に収まっていく。良かった、ちゃんと分かってくれたみたいだ。形はどうあれ、普通の子供と変わりない。ただ間違った方へ行ってしまっただけなんだ。それなら正しい方向へ導くのが大人の仕事だ。
泣きじゃくるロキの頭をそっと撫で、微笑んだ。
ーーー
「本当に、ありがとうございました!」
深々とホーラさんとエイレネさんが頭を下げる。その瞳には涙が浮かび今にもこぼれ落ちそうだ。無事に2人は再開し、お互いに抱きしめ合う姿を見てヴィーナと一緒につられて少し涙ぐんでしまった。
あの後、ロキは泣きながら魔法を解除した。魔法で町そっくりの仮想空間を作り出し、そこにエイレネさんや私達を連れて来たそうだ。
エイレネさんを連れて来た理由は以前魔法を披露した時にすごく喜んでくれたからで、もっと喜んでもらいたかった、と言っていた。ロキは孤児で愛情を受ける事なく育ってしまった為、最近よく可愛がってくれたエイレネさんに愛情を求めた。居ない母をエイレネさんと重ねてしまったそうだ。
そこに至った経緯を聞けば可愛い悪戯のように思えるのだが、悪戯の度を超えていた。それでもちゃんと反省できる良い子だった事が幸いだ。
事件は無事に解決したが、1つ問題が増えた。
それはロキの魔力。仮想空間を作り出すなんて、普通の子供が出来るような事ではない。むしろ大人でもそんな大それた事は普通に出来ない。
仮想空間を作り出し、そこへ人を送り込む魔法。子供ながら膨大な魔力を持っていて、それを上手く使いこなせているという事実は、下手をしたら脅威になりかねない。悪い奴らに利用されてしまえば最悪な事態を招くだろう。
そこでロキは第7小隊に保護される事となった。第7小隊は魔法関連の隊で、魔法処理や魔法研究を行なっている所だ。そこでロキのその膨大な魔法について調べつつも暴走しない様に今後は見張っていくそうだ。
ーーー
無事に第3小隊へと戻り報告も済ませ、寮の自室へと戻った。
報告の後、隊長には良くやったと頭をめちゃくちゃ撫でられ、エリさんには泣きながら抱きつかれて、あぁ戻って来たんだなぁ、と実感が湧いた。心配かけてしまったしまったんだなぁ、と反省しつつも胸が暖かくなった。
シャワーを浴びてスッキリすると襲ってくるのは気持ちの良い眠気。ベッドに横になると、あっという間に眠りに落ちるだろう。
たった1日、されど1日。私とヴィーナの不可解な1日はこうして幕を閉じた。




