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21 掴めない手がかり②

 

  謎の男の子や、オグマさん達の手がかりを求めて広場まで戻ってきたものの、ヴィーナと一緒にいるとどうも緊張感がなくなってしまうようだ。


  気を取り直して、協会や町中を見回ってみるものの、手がかりは無し。男の子も、オグマさん達も見当たらない。気づけばお昼の時間をとっくに過ぎ、賑やかな町並みも少し落ち着いている。子供はお昼寝の時間だろうか。辺りに見えなくなってきた。


「一度第5小隊の方へ連絡を取ってみましょう。このままじゃ埒があかないわ。」


「そうだね。オグマさんからの連絡とかも入っていればいいのだけれど。」


  これ以上は無闇に探しても無駄足になる恐れがあるので応援を呼ぶか、オグマさんとの連絡を待つのがいいのかもしれない。そう2人で判断して一度戻る事にした。


  そして一歩歩き出した瞬間、突然のめまいに襲われた。立っているのも辛いくらいのめまいに思わず頭を抑える。そして頭を抑えながらも前を見るとはっと気付いた。めまいじゃない。まわりが歪んでいるのだと。あり得ない光景に頭がついていかない。


「ちょ、ちょっと!なんなの!?」


「えっ!?ゆがんでる!?気持ち悪い!ルナっ!」


  ヴィーナはわたしを咄嗟に掴む。その間にもどんどんまわりの空間が歪んでいく。頭の中もぐわんぐわんしてきてので頭をおさえる。抵抗する様に動こうとするも歪みが酷くて動けない。


  空間の歪みは収まることなく、どんどん歪んでいき、私達はそこで意識を手放した。





 ーーー





「…え?」


  目を開けると、そこは手がかりを探そうと行った男の子と出会った広場だった。私、さっきまで町中に居なかったっけ?また?また移動させられたの?でも今回は男の子に触られてもいないし、そもそもヴィーナと2人で居たはず。予想外出来事に頭が混乱してしまう。


「あ!そうだヴィーナは…?」


  まさか違う所へ移動させられてしまったのかと思ったが、隣を見たらそこに居たのでひとまずほっとする。


「る、るな…?」


「ヴィーナ…。」


  お互いに目を合わせた途端がばっと抱きしめ合う。


「ヴィーナぁあ。なにこれ〜!」


「し、心霊現象かしら…。私、聞いたことあるもの…。男の子の幽霊が1人になりたくなくて生きている人間を誘拐するの…。この状況、そっくりじゃないっ!」


「ちょ、ちょっとやめてよ!怖いじゃん!もー!怖くなってきた!こわいこわい!!」


  ヴィーナが幽霊の話を始めたせいで、何となく否定したかった事実を浮き彫りにされて寒気がする。若干周りの気温が下がったのではないかと思うぐらいなんだか肌寒い気がする。


「じゃ、じゃ、じゃあ!あの男の子は幽霊?なの!?さっき触られちゃったよ!?」


「るるるるるな、おおおおおちついてね。」


「ヴィ、ヴィーナこそ!」

 

  一度そうだと思ったら幽霊だとしか思えなくなってきてヴィーナと共に震えだす。幽霊なんて信じた事なかったけど、実際にこうして不可解な現象に立ち会うと信じてないなんてもう言えない。お祓い、お祓いをしなきゃ!


「ルナ、こういう時は何か、楽しい事考えましょう…。楽しい事考えていれば幽霊もどっかいく、はず。」


「楽しい事、楽しい事…。そ、そういえば入隊式の時、新しい恋を探すって言ってたけど、良さそうな人はいた?」


  そう尋ねた途端、ずどーんと落ち込むヴィーナ。あれ、なんかまずい事言ってしまったみたい。


「それがね…いたのよ良い人が。ものすごくタイプの人がいたからアタックしたの。」


「初対面で!?」


「そう。だって恋は盲目なのよ。好きになっちゃったらそうせずにはいられないわ。…だけどね、その男……。」


「その男…?」


「………あいつ!ゲイだったのよっ!!!もー、信じられない!!超かっこよかったのに!しかもよ、聞いて驚きなさい?その男の好きな相手はあのリオンよ!」


「え!リオン…!?…………っぷ。」


  まさかの人物に思わず笑いが止まらなくなる。私の幼馴染は性別問わず好かれるらしい。まったくもって恐ろしい男である。


「もー、ルナってば笑いすぎ!あの男、リオンを熱い視線で眺めながらうっとりしてるんだもの。ないない。一気に冷めたわ。私、初めてみたの。男が男を好きなとこ。本当にいるのね。」


「そ、そうだね。……まぁ私も最近そんな状況にあっているんだけどね…。」


  思わず遠い目をする。毎日毎日顔を合わせれば場所雰囲気問わずアタックしてくる先輩を思い出して溜息を吐く。恋は盲目、まさにその通りだと思う。


「ど、どう言う事…?」


「第3小隊の先輩がね、私を好きみたいで…。」


  いざ言葉にしてみるとなんだか照れてしまうのは何故だろう。頬をさわるとほんのり熱い。これは多分赤くなっているだろう。


「る、るな?その反応……。も、も、もしかしてその先輩の事……?」


「違う違う!でも違うは失礼だよね。エリ先輩の事は大好きだけど恋愛感情かは違う?かな?」


「そこ断言しないの!?」


「だって私、まだ恋した事ないし…。もしかして初恋は同性、なんて事もあり得るよね。」


  世の中何が起こるか分からないのだ。だからこのままエリ先輩にアタックされ続ければ私も好きになったりして?そうヴィーナに伝えると、何故か呆れ気味に溜息を吐かれる。


「相変わらず、天然というか、突拍子も無い事ばかり言うわね。ルナらしいといえばらしいけど。いいルナ?確かに恋愛に決まりはないわ!でも私は貴女には絶対に男がいいと思うの!何故ならその方が興奮するから!!!」


「興奮?ちょっとヴィーナ。何を考えてるの…?」


「だって想像してご覧なさいよ?思わず守ってあげたくなるような天然愛され系美少女が1人の男と恋に落ちるの。2人は深く愛しあって、あんな事やこんな事を……。あぁ!!まさに小説に出てきそうな展開だわ!妄想が止まらないわ!」


「……。」


  ヴィーナの妄想癖が始まった。

 人の恋愛事情であんなに熱くなれる人を私は他に知らない。あんな事やこんな事って、一体何を妄想してるんだろう。…怖くて聞けない。時々きゃっと言って鼻をおさえてるのは鼻血でも出そうなのだろうか…。こうなった彼女はしばらく誰にも止められない。




  果たして、エイレネさんは見つかるのだろうか。手がかりすら無く、むしろ不可解な事が増えてくこの状況に、私はそっと溜息を吐いて肩を落とした。




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