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19 不思議な現象

 

  エイレネさんの手がかりを求めて、ホーラさんの家の所の路地裏の先にある広場へとヴィーナと向かった。目的の広場は少しじめっとしている。本当にここに子供達は居るのだろうかと思ってしまうほど、子供の雰囲気とはかけ離れている場所だ。


「子供達、居ないね…。広場ってここであってるよね?」


  おそらく同じ事を考えているであろうヴィーナに確認するように問いかける。あたりを見回しても誰も居ない。


「ええ、ここであっているはずだけれど。今は教会の方にいるのかしら。少しこのあたりを捜索したら教会の方へ行ってみましょうか。」


「…うん。」


「ルナ?大丈夫?」


「…大丈夫!うん、私達が頑張らないとね!ホーラさんの為にも、エイレネさんの為にも!」


「ルナ…。そうよ!私達が頑張らないとね。」


  そう言ってヴィーナは私を抱きしめてくれた。ヴィーナにはバレてるんだろうな。私が両親の亡くなった昔の出来事を思い出してるって。


  ヴィーナは恋に盲目で破天荒な所もあるけど友達思いの優しい子だ。すごく頼もしい。うん、元気出た。

  ヴィーナは抱きしめた腕を離して、私の顔を覗き見る。その顔には安堵が浮かび、心配かけちゃったなぁと思う。


「ヴィーナ。ありがとう。」


「どういたしまして。私ルナの笑顔が好きだから。」


  ふふふ、とお互いの顔を見ながら笑い合う。

  捜索から少し外れてしまったが気を取り直して何か手がかりがないなもう一度よく探す。すると、急に人の気配を背後に感じ、振り向く。

  振り向いた先にいたのは、あどけない顔の1人の男の子だった。


「あ、子供が…。」


  私の呟きを聞き取ったヴィーナは、私の目線を辿り見る。さっきまで居なかったはずなのにいつのまにそこにいたのか。それが不思議で少し警戒してしまう。男の子の微笑んだ顔が更に警戒を強くする。男の子の異様な佇まいに何か嫌な予感がする。


  私達が言葉を発するよりも早く、男の子が口を開いた。


「お姉さん達、ここで何してるの?」


  首をかしげてこちらを見てくる男の子。その仕草は年相応のように見えて、先程の嫌な予感は気のせいだったのかと思う事にした。


「私達はね、人を探しているの。君、エイレネさんっていう女の人知らないかな?」


「エイレネさん?うーん、あ!もしかしてあの人の事かなぁ?」


「あの人?もしかしてそれがエイレネさんかもしれないわ。ここにその人の写真があるから見てもらえるかしら?」


  そう言ってヴィーナは写真を取り出す。そして男の子を怖がらせないように私達はゆっくり近づいて写真を見せた。


「あー!この人だ!このお姉さん!僕知ってるよぉ。」


「本当に!?良かった。君、このお姉さんと最後にあったのはいつか覚えてる?」


  エイレネさんを知ってると分かりほっとする。ようやく手がかりの第一歩だ。焦る気持ちを抑え、ゆっくりと男の子に問いかけていく。


「実際に会ったのは1週間前かな。あっ、でもね、あっちでは毎日会ってるよ!」


「あっち…?あっちってどこのことかな…?」


  何を言っているのだろうか。実際に会った?それにあっちとはどこのことか。男の子の純粋な笑顔がだんだん歪んだ笑顔に見えてきた気がして落ち着かない。落ち着け、と自分に言い聞かせるものの、私の心臓はドクドクと鼓動を強めていく。隣にいるヴィーナも怪しいと思ったのか、眉間に皺を寄せ、私達のやり取りに聞き入っている。


「あっちはあっちだよ!……お姉さん達、気になる?」


  瞬間ぞわっとした。何かがおかしい。この男の子は普通ではない。エイレネさんの失踪にこの男の子は関わっている。背中に嫌な汗が流れる。その先を聞きたくないような、でも聞かなきゃいけないので先を促す。


「……教えてくれるの?」


「うん!………いいよぉ。」


  男の子はそう言ってこちらに両手を伸ばし、私達の腕に触れた。瞬間、目を開けてられない程のまばゆい光が辺りを包んだ。







  目を開けると、そこは先程オグマさんとヴィーナと共に見回りした町中だった。さっきまで一緒に居たヴィーナと男の子を探してもどこにも居ない。


「…どういう事…?さっきまで広場に居たはずなのに…。」


  転移魔法で転移されてしまったのか。それしかこの状況に対して思いつかないけれどそれだと疑問が残る。一緒にヴィーナが居ないのはおかしい。転移魔法なら同じ場所に転移されるはずなのだから。


  焦っても仕方がないので辺りを観察する。特に変わった事もなさそう。何も変わったことがないことが少し怖いような気もするが。


  それにしてもこれからどうすればいいのか。ヴィーナと合流したいが彼女は一体どこにいるのだろう。

  少し悩んだ結果、先程まで居た広場まで戻る事にする。オグマさんと合流してもいいかとも思ったがオグマさんはホーラさんを連れて医者の所まで行ってるはず。オグマさんとは後に合流できると信じて先にヴィーナと合流しよう。

 

「ルナ!!」


  広場に着くと、先に着いてたヴィーナが駆け寄ってきた。お互い合流できてほっとする。


「ヴィーナ!良かった合流できて。」


「ええ。でも一体どういう事なのかしら。あの男の子に腕を触れられた途端、光に包まれたと思ったら移動させられたのは。おまけにルナとは離れ離れになるし。」


「転移魔法かと思ったんだけど、転移じゃなさそうだしね。なんらかの魔法?なのかな。」


「あの男の子、実は魔法使いって事?確かに、その線が濃いわね。じゃないとさっきの事説明できないし。」


「それに、私なんだかあの男の子に対して嫌な予感というか………とりあえず一旦オグマさんと合流しない?男の子の事も相談しつつ、今後の計画も立てよう。」


  そうね、と言ってヴィーナはお医者さんのいる所へ歩き出す。私もそれに続く。


「ねぇヴィーナ。」


「なぁに?」


「そういえばあの男の子、確か私達にエイレネさんの事教えてくれるって言ってたよね?でも結局何も言わず、方法は分からないけど私達をここへ連れてきた。ってことは自分達の目で確認してって事だったりして。」


「…確かにそう言われてみるとこのおかしな出来事にも説明つくわね。でも本当にそうだとしたらなんか嫌な感じがするわね。自分の目で確認しろだなんて。口じゃ説明できないことなのかしら。」


  先程の場所からお医者さんが居る場所は近かったらしく、すぐ目的地に到着した。玄関にあるベルを鳴らす。すると低い男の人の声が聞こえてきて、すぐに扉が開く。


「急患かい?」


  出てきたのは白髪のおじいさん先生。低い声とは裏腹に、顔つきはとても穏やかである。私達を見てにこりと微笑みを浮かべたその様子はまさに理想のお医者さんと言っても過言ではないくらい、まんまお医者さんである。


「いえ、先程こちらに騎士の者がおばあさんを連れて来たと思うのですが…。」


「…はて?今日は誰も来ていないがのぅ。本当にここに来たのかね?」


「え…?確かにお医者さんの所へ行くと言っていたのですが…。もしかして他にもお医者さんはいらっしゃいますか?」


「いーや?この辺りだとわしだけだがねぇ。」


  お医者さんの言葉に、私達は顔を見合わせ言葉を失った。




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