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18 派遣②

 

「……は?」


  あ、いけないいけない。先輩なのに失礼な声出しちゃった。だってオグマさんが、リオンと付き合ってるのか、なんて聞いてくるから。


「え、えっと、私達そんなんじゃないですよ?」


「そうなの?君達有名だからさ、僕てっきり付き合ってるのかと思ったよ。2人はお似合いだしね。」


「有名って…私何かしましたっけ…?」


  自分の知らない間に何か恥ずかしい事をしてしまったのではないかと、さーっと青ざめる。過去を振り返ってみるけど、有名になるほどの失態などした覚えはない。はず。


「悪い意味じゃなくて、今年の大型新人2人って事だよ!どっちも美形ってね!」


「美形って…。リオンがそう言われるのは分かりますが私なんかはそう言われる要素は無いですよ?」


「ルナってば、またそんな事言って。オグマさん、この子ってばちょっと鈍感で。」


「ヴィーナ、鈍感って…そんな事ないのに。」


「そこがまたいいところだよね。」


「「え?」」


  さり気なくオグマさんに褒められる。オグマさんみたいな良い人にそんな挨拶をするみたいにさらっと言われるとちょっと照れてしまう。


  ヴィーナは先輩でもあるオグマさんに問い詰めている。いつから好きなんですかとか何とか。ヴィーナ、そんなにオグマさんの肩を揺さぶっちゃ…


「ちょっと、ヴィーナ!落ち着いて!」


  鼻息を荒くしたヴィーナをオグマさんから離す。人の色恋沙汰に興味津々でしつこい所が彼女の悪い癖だ。


「あらやだ、取り乱しちゃって。すみませんオグマさん。」


「だ、大丈夫。は、ははは。」


  オグマさんはだいぶ引いてしまい、何とも言えない空気が流れる。どうしてくれるんだ一体。何か話題を変えようと考えているとオグマさんが口を開いた。


「でも、リオンって奴は相当らしいね。顔もさることながら、なかなかのやり手らしいし。第1小隊の隊員からはもう一目置かれてるらしくて、新人ながら先輩達を差し置いてけっこう重要な仕事を任されてるらしい。」


「えっ本当ですか?リオンってば、もうそんなに…。」


「第1小隊の次期隊長候補、とまで言われてるからね!」


「「隊長!!??」」


  頭良くて強い事はもちろん知っていたけど、次期隊長候補だなんて。先輩達を差し置いて隊長候補?思わずヴィーナと目を見合わせてしまう。


「信じられない…。」


「普通そう思うよね。でも、第1小隊の中では既にリオンの事一目置く奴が多くてさ。おまけに第1小隊は実力主義な隊でもあるからそういう話が出てるんだよ。あと男からもけっこう人気なんだよこれが。」


「………あいつ、とうとうそこにまで手を出しちゃったの……。」


「ははっ。ルナってば違う違う。そっちの意味じゃなくて、男からの信頼も集めてるって意味ね。なんか少し前に王様が暗殺者から狙われる事件があったらしいんだけど、その時身を挺して王様を守ったと同時に、狙われた騎士を庇ったらしいんだ。それから騎士達から尊敬の眼差しを向けられてるみたい。ただの女たらしじゃないぞ!ってね。」


  危ない事件って、王様達大丈夫だったのだろうか。そんな事があったなんて知らなかった。大ごとにならないように黙秘されたのだろうか。


  それにしてもリオンは騎士を庇ったって言ってたけど、怪我、とかしてないよね。昨日寮まで送ってくれた時、特に怪我をしてる感じもなかったし、大丈夫だよね。


「さてと、町に着いたことだし、見回り開始しようか。ルナは初めてだけど、気楽にというか、肩の力を抜いて大丈夫だからね。3人で見回りするから、異常があればすぐに報告する事。急ぎの危険があった場合、指示を待たずに自分の判断で動いても大丈夫だから。」


「はい。分かりました。」


「ルートは特に決まりはないけれど、必ず全部の通りを通る事。もちろん裏道もね。おしゃべりはしても大丈夫だけど、辺りに目を向けることは忘れずにね。」


「はい!」


  所々にお店があってにぎやかな町。行き交う人達は皆んな穏やかな顔をしていて、何も事件なんて起きなさそう。騎士を見慣れているのか、小さな子供達が時々手を振ってくる。なんだか人気者になったような気分になってしまう。騎士の制服様様だ。


  人がけっこういるため、いろんな話が聞こえてくる。今日の夕ご飯何しよう、あそこのお店に行きたい、あそこの奥さん浮気した、などが聞こえてきて案外退屈しない。中には込み入った話もあり、勝手に盗み聞きしてるみたいで申し訳ないが、聞こえてくるものは仕方がないと思う事にする。


 "そういえば、あそこのおばあさんちの娘さんは帰ってきたのかね?"

 "いや、まだ帰ってないらしいぜ"

 "なんとまあ。家出するような子じゃなかったしねぇ。おばあさん思いの良い子だったよ。"

 "じゃあなおさらなんかあったんじゃねえか?"


  突如聞こえてきた老夫婦の物騒な会話。オグマさんとヴィーナも聞いていたようでお互い目を合わせる。ただの家出なら良いが、事件に巻き込まれていたら大変だと言うことで聞き込みをする事になった。


「すいません。騎士団ですがその話、詳しく聞かせて頂けますか?」


  いきなり話しかけられた事で老夫婦は驚いていたが、私達が騎士団と分かると肩の力を抜いたようで、頷いてくれる。ぽつぽつと話してくれた。

  老夫婦に聞いた内容はこうだ。


  人通りの多い町並みから少し外れた所にあるおばあさんとその娘の2人で暮らしている家がある。そこの娘さんが1週間前から行方不明との事。帰って来なくなる前に喧嘩をしたという訳でもなく、普段の日常と変わらなかったらしい。はじめはおかしいな、と思いつつも探しもせず家で待っていたのだが、3日経っても帰って来なかった為おばあさんは娘を探し始めたそう。そして娘はいまだに見つかっていない。


  そのおばあさんの家を老夫婦から聞いて礼を言って別れる。教えてもらった家を目指して3人で向かう。


「ただの家出、だったらいいんですけどね。」


「そうね。でもルナ、私なんか嫌な予感がするわ。女の勘ってやつかしら。」


「確かにヴィーナの言う通り、僕も嫌な予感がするよ。少し調べてみて事件の可能性が高くなったら本格的に調査に出ないとね。」


「分かりました。あ!この家ですね!」


  目の前には小さいながらも可愛らしいこじんまりとした家。先程老夫婦から話を聞いた所から少し歩いた所にある一軒の家。玄関先には目印になった赤い花が咲いている一本の立派な木。それは可愛らしい家にとても合っていた。


  呼び鈴を鳴らすと、中から慌てたように人が飛び出てきた。まずは落ち着かせる為、こちらから自己紹介とここに来た理由を話すと、落ち着きを取り戻したのか話し始めてくれた。


「……そうだよね、あの子が呼び鈴を鳴らすわけないものね。………騎士様方、どうかっ、どうかあの子をっ、見つけてくださいっ……。」


「…尽力を尽くします。」


  泣き崩れて倒れそうになったところを、オグマさんが支える。悲痛な気持ちが移ってしまいそうでぐっとこらえる。


「…すまないね。感傷的になってしまって。一人娘なものでどうも過保護になってしまって。娘も良い年だが、娘はいくつになっても娘だからね。心配で心配で。」


  彼女はホーラさん。立ち話はなんだから、ということで中に入れてくれた。ホーラさんが入れてくれた紅茶は彼女の人柄を表すかのように暖かく、優しい味がしてとても美味しい。


「居なくなった娘はエイレネと言ってね。今年で29になったばかりさ。明るくて母親思いの優しい子なんだ。身内だから褒めてるじゃなくて、誰に対しても優しいんだよ。」


  これがエイレネの写真だよ、といって見せてくれた写真には優しい笑顔で笑う女性、エイレネさんとホーラさんが写っていた。これを見ても2人の関係は良好だったと分かる。捜索の為、エイレネさんの写真を一時預からせてもらう。


「エイレネさんは行方不明になった日、何をしに出掛けて行ったのかは分かりますか?」


「えっと、確か子供に会いに行くと言ってたねぇ。」


「子供?」


「そう、身寄りのない子供さ。エイレネは昔、子を身籠っていた事があってね。生きて産んであげることができなくて、それをずっと引きずっているんだ。だから可哀想な子供を放っておけなくて時々身寄りのない子供達に会いに行っているんだよ。」


「そうだったのですね。それでその子供達というのは何処にいるか知っていますか?」


「寝泊まりは教会でしてるみたいなんだが、日中はこの家の裏路地を越えた先にある広場に居るよ。」


「分かりました。話してくれてありがとうございます。今からその子供達に会いに行って来ます。」


「どうか、どうかあの子を、エイレネを探してくださいっ!」


「はい。お任せください。」


  オグマさんはそう告げ、立ち上がる。ホーラさんもお見送りすると言って椅子から立ち上がった瞬間、ホーラさんはぐらっと倒れてしまう。床に打ちつけられる前に咄嗟にオグマさんが支える。


「ホーラさん!大丈夫ですか!?」


  オグマさんがホーラさんを抱き抱えながら問いかけるが、ホーラさんは意識が朦朧としているのか、ぐったりとしている。額にはうっすらと汗をかいていて気分がすごく悪そう。


「心労、でしょうか…。」


「…そうかもしれないね。大事な家族が居なくなってしまったから毎日十分に休めなかったのかもしれない。…ヴィーナ、ルナ。」


  オグマさんは私達2人の名前を呼ぶ。返事をするとそこには優しそうなオグマさんではなく、険しい顔をしたオグマさんが居た。


「君達2人で先に子供達の所へ行ってくれ。僕はホーラさんを医者の所へ連れて行く。本当はどちらかにこの役目を任したいところだけれど、僕じゃないと運べなさそうだしね。医者の所へ連れて行ったらすぐ向かうからそれまで聞き込み等頼んだよ。」


「「はい!」」


  もし自分の大切な人が居なくなってしまったら。ふと考えてしまう。私は昔両親を亡くした。辛くて悲しくてさみしかった。その時の気持ちを思い出すと、すごく苦しい。状況は違えど、ホーラさんはまさにその思いをしているのだ。なんとかしてあげたい。その思いが強くなる。


  それに早くエイレネさんを見つけないと、ホーラさんは回復しないだろう。精神的にもっと追い詰められてしまうかもしれない。

  今一度、私達は気を引き締め直した。





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