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17 派遣①

 


 「おはようございます!ってあれ?」


  ここは第3小隊の執務室。新人らしく元気良く挨拶をしてみたものの、そこらから返ってきたのは覇気のない声。


「皆さん、どうしたんですか?」


「どうしたもこうもないよぉ。ルナはなんでそんなに元気なんだよ。」


「もしかして皆さん二日酔いですか?」


  もしかしても何も、皆昨日の飲み会の所為で二日酔いらしい。頭痛いとか気持ち悪いなどそこらへんから聞こえてくる。

  これでいいのか騎士団よ。


「貴方達、だらしないわねぇ。ルナ、おはよう。今日もいつも通り可愛いわよ。」


「エリさん!おはようございます!エリさんもいつも通り、綺麗です!」


「あらやだ、嬉しいわ。」


  これはエリさんと恒例の朝の挨拶だ。初めは変な感じがしていたが、今ではこの挨拶がないとはじまらない。

 

「エリさんは二日酔い大丈夫ですか?」


「私は大丈夫。二日酔いなんてなった事ないもの。ルナも大丈夫そうで良かったわ。」


「私も二日酔いなった事ないんですよ。一緒ですね!」


  ねー!っと二人できゃっきゃとはしゃいでいると周りからげんなりした声が聞こえてくる。


「こいつら一体何者なんだ…?」


「ルナまで…隊長といい、エリといい、とんでもねぇな…」


「あら、失礼ね。貴方達が情けないだけじゃないかしら?」


「くそぅ、言い返す言葉が見つからねえ!!」


  エリさんに言い返す言葉が見つからず、二日酔いの騎士達は項垂れる。そこまで落ち込まなくても。


  二日酔いって大変そうだな、と人ごとながらに思ってしまう。お酒はあんなに人を楽しませてくれるものなのに、次の日にはこうも地獄へと付き落とす。ひどい仕打ちのようでなんだかいたたまれたい。

  本当に自分は二日酔いにならなくて良かったと心の底から思う。


「おう、お前ら!おはよう!おーおー!情けねぇなあ!二日酔いかぁ!?」


  バンッと大きな音を立てて入ってきたのは第3小隊のシヴァ隊長。隊長は飲み会の後、第1小隊のエギル隊長と二軒目に行っている。隊長は二日酔い大丈夫なのかな。聞いてみると隊長は元気良く笑い私の頭をぐしゃっと撫でる。


「ルナおはよう!昨日は楽しかったな!俺は二日酔いなんかに負けねぇからよぉ!酒なんて俺にとっては水と一緒よ!がははは!」


「み、みず!?さすが隊長…。隊長ともなると酒なんて水分を取るのと一緒なんですね。さすがです、尊敬します。」


  隊長を尊敬の眼差しで見つめると、隊長は更に機嫌を良くし、また頭を撫でてくる。可愛い奴だな、なんて微笑みながら言うものだから、不覚にもきゅんとしてしまう。きゅんと言っても異性にときめくようなあれではなくて(隊長ごめんなさい)、なんかこう安心する様な、例えるならお父さんに褒めてもらってすごく嬉しい気持ちみたいな感じだ。といっても隊長はまだ30代前半なのでお父さんという年齢ではないのだけれど。早くに父を亡くしてしまったので、こういった暖かさに飢えているかもしれない。あの忌々しい事件の事はふっきれていても、やっぱり愛情は恋しいものだ。暫くその暖かさを堪能していると、遅れてソールさんがやって来た。


「皆さん、おはようございます。………なんですかこれは、情けない。第3小隊の騎士でありながら二日酔いとは…どうやら皆さんは修行が足りないみたいですね。」


  メガネを人差し指でクイっとあげながら、あたりを見渡しため息をつくソールさん。ソールさんも二日酔いにならなかったんだ。良かった。


  残念ながら、二日酔いになった騎士達は後日、ソールさんのもとで修行、もとい罰が下される事になった。何でも以前にもこういった事が起きたらしくて、その時もソールさんの地獄の罰が下ったらしい。エリさんがこっそり教えてくれる。ソールさんはまじめな見かけに反して体育会系らしく、彼の修行という名の特訓に参加させられた者はもれなくずたぼろになって戻ってくるらしい。男、女問わず。どんな特訓をするのか気になるような、ならないような。


「さて、今日は助っ人の任務があるんだが、この調子だと助っ人に出せるのは……ソールかエリか、ルナだな。」


「助っ人ですか?」


「ああ。第3小隊の仕事内容は聞いてるだろう?第3小隊は他の隊からの応援要請に応える隊でもあるからな。それで今日は第5小隊から要請がきたってわけだ。そうだルナ、お前が行くか。」


「私ですか?はい!行かせてください!」


「いい返事じゃねぇか。よし、お前に任せた!」


  今回の任務は町の警備だ、と言って隊長は書類を渡してくる。内容が書いてあるとの事でさっそく読む。


  大まかな仕事内容は町の見回りみたいで、第5小隊の中の誰かと少人数ペアを組む。第5小隊は先月に数人が退職した為に現在人手不足らしく、町の警備もままならないそう。私1人行ったところで変わるのかと思ってしまうが、与えられた仕事は頑張ろう。


「それにしても…。」


「エリさん?」


「ルナが一人で行くなんて心配だわ。」


「そうですよね、新人なのに役立つかどうか…「ちょっかいだされないか心配だわ!!」


「え…。」


「だってこーんなに可愛いんだもの!第5小隊の奴らに好き放題されると思うと居ても立っても居られないわ!体をまさぐられ、服を脱がされたりされてしまうかも…あぁ!どうしましょ!!」


「…では、行ってきますね。」


  どう見てもそんな事するのはエリさんだけだ。そう言いそうになるのをぐっと抑えて隊長に出発する事を伝える。エリさんはソールさんに頭を叩かれていた。


  隊長は、エリの扱い慣れてきたなぁって呑気に笑ってよしよししてくる。あぁお父さん。心の中で隊長じゃなくてお父さんって呼ばせてもらおうかな。

 


  

 ーーー



 


「第3小隊から来ました、ルナです。短かい間ですがよろしくお願いします。」


  挨拶は肝心なので、元気良く笑顔で挨拶する。少しざわざわしたのは何でだろう。だが第5小隊の方達は笑顔で迎え入れてくれた。


「え、ルナじゃん!ルナー!」


「ヴィーナ!」


  親友のヴィーナからの抱擁を受け、私もヴィーナの背中に手を回す。


「ヴィーナ、お前知り合いなの?」 


「はい!魔法学校時代からの親友です!」


  へぇと言いながら、男性騎士は私を上から下までじっくり見てくる。品定めされてるみたいであまり気分は良くない。しばらく見た後、男性騎士はへらっと笑い鼻の下をのばした。やばい人だ。あまり関わらないでおこう。




「初めまして。来てくれてありがとうルナ。僕はバルドル。第5小隊隊長をしています。短い間ですがよろしくお願いしますね。」


  バルドル隊長は見るからに良い人オーラ全開の人で、皆から慕われているのが見てとれる。


「さっそくですが、ルナにはヴィーナとオグマの3人で組んでもらって町の見回りをしてもらいます。」


「オグマです。よろしく。」


  オグマさんは2年先輩だそうだ。オグマさんと握手をして自己紹介し合う。

  町の見回りということだが、正直ヴィーナと一緒で嬉しい。はしゃがないように、仕事は頑張らないと。


「じゃあヴィーナ、ルナ、見回りに行こうか。」


「「はい!」」


  第5小隊の執務室から出て、メインストリートを超えて東部にある町へと向かう。その途中、オグマさんがとんでもない事を言い出した。


「ところでルナって第1小隊に入ったリオンってモテ男の彼女なの?」


「……は?」



    


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