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16 ある日のリオン

 


 ※リオン視点




「リオン様の好みのタイプはどんな方ですか?」


  第1小隊に配属されて数日。本日は夜会に王女が出席されているので、その護衛をしている。第1小隊は王族の護衛が主な仕事であり、今日もいつもと変わらない。毎日王女の護衛をしているのではなくて、担当は日々変わる。

  そして夜会の途中、令嬢に話しかけられる。


  きつい香水を身にまとい、女としての武器である胸をを惜しみもなく見せつけながら尋ねてくる女性。男ならば誰もがそこに目がいってしまうだろうが、お生憎様、自分には興味がない。興味がないというよりも、この女性の胸には興味がない。


「申し訳ありませんが、仕事中ですので。」


  やんわりと笑顔で今は相手できないと伝えても伝わってもらえずにぐいぐいと近付いてくる令嬢。香水の匂いがきつい。


「そんな冷たい事おっしゃらないで下さいな。こういう時でないと、リオン様とお話出来ないじゃないですか。わたくし、今日お会いできてとても嬉しいんですの。」


「麗しいご令嬢にそんな事おっしゃって頂けてとても光栄ですね。」


「麗しいなんて…。嬉しいですわ。」


  お世辞を言っただけなのに、目の前の令嬢は顔を赤く染める。その横で違う令嬢達が、ずるいだの言っているが、正直どうでもいい。


  以前、誰にでも愛想を振りまくよね、なんて言われた事を思い出す。愛想を振りまく様になったのは、そうした方が上手く事が運ぶ事に気付いたから。別に好かれたいわけじゃない。昔、あからさまに嫌そうな態度を取ってすごく面倒になった事があった。面倒ごとを回避しようとして更に面倒になったのならたまったもんじゃない。


  そう、ただそれだけ。


  女なんて皆一緒だ。ただ一人を除いて。





 ーーー





 それは何年か前の出来事。まだお互いがとても幼く、何をするにも一緒だった頃。


「ルナ、どうしたの?」


「…うっ、ひっく……うさぎさんがっ、う、うごかないのっ…。」


 小さな体を震わせながら、うさぎを抱きしめているルナ。うさぎには他の生き物に噛み付かれた後があり、残念だがもう死んでいる。


「もう、た、たすけて、あげれないのっ?…ひっく…っ…」


  自分に出来ることはもう何も無い事は頭では分かっているが、心がそれを飲み込めていないルナ。ルナの涙を見て胸がキュッとなった。


「…うさぎを埋めてあげよう。それが僕達がうさぎにしてあげられる事だよ。」


  頭をよしよししてあげると、泣きながらうん、と言うルナ。一緒に埋めてあげて最後に手を合わせる。泣きながらも一生懸命なその姿に目が離せなかった。


「リオン。」


「なに?」


「……ありがとう。私1人じゃ何も出来なかったよ。」


  瞬間、落ちた。


  目の前には瞳に涙を溜めながら、花のように綺麗な笑顔があった。眩しくて、とても儚いと思った。

  もともと大切な存在だったが、更に上をいく存在となったのはこの時だ。この笑顔を守りたい、ずっと側に居たいと強く願った。





 ーーー





  好みのタイプ、そう言われて思い浮かべるのはただ一人。


  それはこれからもずっと変わる事がないだろう。どれだけ想っても、彼女は気付かない。いっそのことこの想いを告げたのなら、なんて考えたのは一度や二度じゃない。


  いつからだろうか。この腕の中に閉じ込めてしまいたいと思ったのは。


  冷たくしてしまうのは愛情の裏返しだ。

  もし、万が一にでも隣に居ることを許される関係になったのなら、自分はどうなってしまうのだろうか。ずっと愛しく想ってきた彼女をこれでもかというくらい可愛がって甘やかしてしまうのだろう。

  後にも先にも、俺には彼女だけ。


  思い浮かべる彼女はいつも笑顔。その笑顔はかけがえのない宝物。




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