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14 歓迎会②

 

  「なんだ〜!第3小隊のメンバーも来てたんだ!奇遇だなぁ。」


「エギルじゃねぇか。第1小隊も飲みに来たのか?」


  隊長はエギルさん、もとい第1小隊のエギル隊長と肩を叩き合う。2人は仲が良いらしく普段から飲みによく行く間柄らしい。


「それにしても…。」


  エギル隊長は辺りを見渡す。


「酔いつぶれてるやつ多くね?」


  テーブルには空き瓶がたくさん転がっていて、それを囲む様にテーブルに突っ伏している隊員達。

  どうにか起きてる隊員達も目がとろんとしてたり、笑い上戸になっている者や気分を悪くしている者でいっぱいだ。誰がどう見ても酔い潰れている。


「なーに、新人の歓迎会をしてるからよ、みんな嬉しくていつもより飲み過ぎちまったんだよなぁ。」


  また新しいお酒の瓶を開けながら気分良く話す隊長。それを見たエギル隊長は苦笑いをしながら、二日酔いになるぞ、と忠告する。


「第3小隊の新人って、もしかして噂のあの子か?」


「噂?ルナって噂になってんのか?」


「あぁ。この間のキメラの事件でドレス着てただろ?そのドレス姿を見た奴らが噂してたんだよ。第3小隊に大物が居るってな!んで面白いのがここからなんだけどよ、うちの隊にリオンって奴が居るんだけどそいつが…」


「隊長遅れてすいません。」


「おー、リオン、お疲れ。噂をすればだなぁ。」


「噂?」


「いーや、何でもないさ。」


  エギル隊長は話を誤魔化し、既に席についている第1小隊のメンバーの所へ誘導した。リオンは誤魔化された事を不審に思うが、黙って歩き出す。騎士団のかしこまった制服も相まって、歩くだけで他の女性客から熱い視線を浴びるが、いつもの事のようで当の本人は気にしない。 だが隣のテーブルに見知った顔を見つけて立ち止まる。


「は?ルナ?」


  目を見開き驚くリオン。ぽかん、と開けた口もなんだか様になっている。


「はーい、るなでーす!」


「お前、酔っ払ってるの?」


「んー、よってないれすよー。」


「……はぁ、完璧酔ってる。」


  呆れた顔を隠しもせず、リオンは席に着く。そして先に頼んでくれていたお酒をお礼を言ってからぐいっと飲んで、首元の服を緩める。普段はきっちりとした騎士服も、今はゆるさがでて、それはそれでリオンを引き立たせる材料にしかならない。お酒がごくごくと喉を通っていくその様子に近くの女性客が頬を染めながらそわそわし出す。あの騎士様は誰かしら、なんて声が聞こえてくる。

 

「ねぇ。」


「んー?」


「もしかして君、この前青いドレス着ていた子だよね?」


  もう一杯飲まないかと機嫌良くエリさんと話していると、隣のテーブルの第1小隊の隊員の男性騎士が隣に来て声をかけてくる。青いドレス?お茶会の時の事かな?


「そうでーす。」


  今は騎士服を着ているから印象が大分違うはずだから、よくわかりましたね、なんて笑いながら答えると、嬉しそうに返事が返ってきた。


「だよね!俺さぁ、君のドレス姿が忘れられなくてまた会いたいなぁって思ってたんだよ。」


  ぐいっと、食い気味に顔を近づけてくる男性騎士。肩がくっつきそう。


「あ、俺第1小隊のセト、よろしくね。」


「せと、さん?わたしはるな!」


 そう言って目の前に手を出してくる。よろしくおねがいします、と手を握り返す。握った手はすごく大きくて、さっきまで外にいたせいか、とてもひんやりしていた。


「せとさんの手、おっきいですねぇ。それに、つめたくてきもちいい。」


  そう言って頬にセトさんの手をくっつける。ほてった頬にちょうど良くて、ほっと息をはく。おまけに手が大きく、面積が広いので頬全体が冷やされて最高だ。


「ふぅ、ほんときもちいい。」


「ル、ルナちゃん!?」


  セトさんは、酔ってもいないのに顔を真っ赤にする。頬を触ってない方の手はせわしなく動いている。その動きが面白くて、セトさんの手を頬に当てたまま笑ってしまう。


「…ルナちゃん…君最高だよ…。」


「さいこー?えりしゃん、わたしさいこーだってー!」


「ルナはいつも最高よぉ。」


  最高、と言われた事に更に気分が高まり、エリさんにぎゅっと抱きつくと、同じくぎゅっと抱きしめてくれる。


「やわらかーい。」


「あらあら、ルナったら。お持ち帰りしちゃおうかしら?」


「えーいいなぁ!ルナちゃん!俺にも抱きついて!ほら!」


「あら、ダメに決まってるじゃない。男になんて抱きついちゃダメよ。」


「おとこはだめ?んー…ん?……あ!」


「ルナ…?あ、って何よ…?まさか抱きついた事があるの……?」


「このまえ!しました!」


「「「は?」」」


  先日のお茶会の場で連れ去られた時、情報を聞き出す為、演技でやった事を思い出し、キリっと返事をするが、途端に聞こえて来た重なる苛立った声。あれ、離れた所からも聞こえてきた気がするなぁ。


  先程までの和やかな雰囲気も、一瞬で変化してしまうおかしな事を、どうやら私は言ってしまったようだ。


「んんん?」


  そんな変な事言ったかなぁ、と考えるも考えがよくまとまらない。考えようとすればするほどふわふわした気分になってしまい、ぼーっとしてしまう。


「んー?」


  エリさんもセトさんも固まっている。エリさんにいたっては、小刻みに震えているような気がする。エリさんどうしちゃったんだろ、と思いながら新しいお酒をごくりと飲む。このお酒も美味しい。


「ルナ…貴女彼氏居なかったんじゃないの…?」


「いませんよー?」


「い、居ないのにっ!?どういう事なのか説明してもらおうかしら!」


  ガシャンッッ!!


  エリさんに詳しく説明しなさい!と迫られた時、隣から聞こえてきたガラスの割れる音にびっくりしてしまう。音がした方を見てみると、そこは第1小隊のテーブルだった。


  そして音の犯人はリオンだった。割れたグラスの取っ手を握りしめたまま固まっている。一瞬辺りがしーんとするものの、はっとしたセトさんが話しかける。


「リオン?お前大丈夫か…」


「……ええ。少し手が滑っただけです。」


  だから大丈夫です、なんて言うが絶対大丈夫ではない。目が笑っていない。殺気を向けられたかの様な気分にさせられてしまうその表情に、近くに居た者達は固まってしまう。


  だがその事に気が付いていない周りに居た女性客は、ここぞとばかりにリオンに近付く。


「まぁ、大変。お怪我はしていませんか?」


「……大丈夫ですよ。ありがとう。」


  女性からタオルを受け取り、リオンお得意の笑みを浮かべる。相変わらずのその態度にもはや感心してしまう。間近でリオンの微笑みをくらってしまった女性はくらくら〜、っと座り込んでしまう。


「あーあ、リオンはモテていいなぁ。俺もモテたい。お前強いし、顔もいいし一体何なんだよ。」


  「別にモテたい訳じゃないですけどね。」


  その言葉を聞いたセトさんは、くそぅ、と悔し涙を流しながらお酒を一気に飲み干した。そしてそのままあっけなく潰れてしまった。




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