13 歓迎会
「ルナの歓迎会するぞ!!」
騎士団として働き始めて少しした頃、正確に言うと3日経った頃。
その日はゆっくりした時間が過ぎていく日で、みんなで書類仕事をしていた。私は新人なのでエリさんのお手伝いをしていた。
そんな時突然隊長が叫んだ。誰かが自分が酒飲みたいだけだろ!とすかさず突っ込む。
「普段飲む酒も美味いが、誰かの為に飲む酒はもっと美味いからな。」
うんうん、と頷く隊長に、ほらやっぱり酒じゃん!なんて声がかかる。
「とにかく!今日仕事終わりに歓迎会するから皆集合な!」
ーーー
仕事が終わると、連れて行かれたのはイキシア王国の中心にあるオリンピア城を一周するようにあるメインストリート。
騎士団の寮もこのメインストリートにあり、イキシア王国で一番栄えている所だ。お店が多く、ここへ来れば何でも揃ってしまう。
そのメインストリートの東寄りにある一軒の飲み屋。その名も"カフェ・飲み屋"。看板を見て変わった名前だと思ったのは私だけじゃないはず。
中に入ると気前の良い店主が居て、隊長と話し始める。店内は落ち着きのある色合いでまとめられた装飾でそろえてあり、とても綺麗で好感が持てた。
「ルナの第3小隊配属を記念して…かんぱーい!!」
がしゃん。
グラスを合わせる音が辺りに響く。かくいう私もエリさんや隊長など、隊の皆と乾杯してもらう。
「みなさん、ありがとうございます。」
ただでさえ皆良い人達ばかりなのに、こんな会まで開いてもらえてすごく嬉しい。まだ3日しか経ってないが第3小隊最高に配属されて本当に良かったと思う。それくらい居心地が良い。
「いいのよ。ルナの為だったら私なーんでもしちゃうからね。」
ぱちん、とウインクするエリさん。尊い。隣のテーブルに座っている他のお客さんがたまたまそれを見て顔を赤くしている。分かるよその気持ち。女の私でもぐっとくるものがある。
「ここのお酒、すごく美味しいですね!」
「そうなのよ、私達の行きつけのお店よ。隊長なんかはほぼ毎日来てるらしいわよ。」
「毎日!?隊長本当にお酒好きなんですね。まぁ見たまんまというか。」
「なんだ?俺の話かー?いいぞいいぞもっとしてくれ!あははは!」
既に赤い顔をした隊長に絡まれる。片手にお酒のグラスを持ったまま腕を肩に回してくるので、お酒が溢れないか心配になる。
出来上がっている隊長だが、声音はとても優しく良い人オーラが隠しきれてない。誰かの為に飲む酒は美味い、と言っていたがそれはどうやら本心の様でとても楽しんでいるのが見てとれる。
「ルナ、楽しんでるか?」
「はい!楽しいし、お酒もとても美味しいです!」
「それは良かった!いやー、しかし近くで見ると本当に可愛い顔してるなお前!」
「隊長それセクハラです。」
メガネをクイっとあげながら言うソールさん。
「ついでにエリもセクハラです。その手を離しなさい。」
「あ、バレちゃったー?うふふ。」
テーブルの下からエリさんに太ももを撫でられていたのをソールさんがばっちりと目撃していてそれをやめさせる。さすがソールさん。
エリさんからの過剰なスキンシップにも大分慣れて来ているのでこれくらいどうって事ない。初めは驚いてしまったりしていたが、もうまたか、としか思わなくなった。慣れって怖い。
「ったく、うちの隊は変態しかいないんですか。」
「まぁまぁ!賑やかでいいじゃないっすか!」
そう言ったのはウルさん。いつもニコニコしてるさわやか系なお兄さん。いつも敬語を使っている。
「ソールさんそんなピリピリしてると将来ハゲますよ〜!」
「ハ、ハゲッ!?この僕がハゲ?なんたる屈辱。無理無理。ハゲなんて……」
「ぷぷ。見てくださいよ〜!ソールさんもう酔ってるっす!」
ハゲたくない、とぶつぶつ呟いているソールさんを見て皆で笑う。ハゲがつぼに入ったのかずっと呟いている。
「ソールはねぇ、お酒弱いの。毎回ウルにからかわれてあんな感じになるのよ〜。それにしてもルナ、貴女案外いける口ね!」
「私けっこう飲めるんですよ!父が強かったので遺伝ですかね。」
「おぉ。ルナはいける口かぁ!よーし、お前ら、勝負だ!飲み比べだー!」
隊長はそう言ってお酒をどんどん追加する。わ、すごい量。テーブルの上にはほぼお酒しかのっていない。
第3小隊のメンバーはお酒が強い人が多いらしく、お酒の瓶がどんどん空になっていく。ハゲの呪縛にハマったソールさんは早々に机に突っ伏していた。
「やーん、私もうダメ〜。」
「エリさん脱落っすね!残るは自分と、隊長と、ルナさん!」
「ルナ強いじゃねぇか!」
すごいすごいと言われながら頭を撫でられる。マッサージでも受けてるかの様に力が強いです隊長。頭が揺れる揺れる。やばい、今ので酔いが回ってきたかも。
「たいちょ〜、なですぎれすよ〜。ふふふ。」
あぁ、呂律がまわらなくなってきた。気分もふわふわしてきて気持ちが良い。
「あら?ルナ酔っちゃったのかしら?酔ったルナもかわい〜!」
「エリさんもきれーですよぉ。ふふふ」
世界がふわふわだ。エリさんの胸もふわふわ。
「お、ルナはギブアップか。って事は最後は俺とウルだけだな!」
隊長はラストスパートだ!と言って更に飲む。ウルさんも負けじと飲むが、隊長には一歩及ばず、隊長の勝利となった。さすがお酒好きである。
「たいちょ〜すごーい!」
「そうだろすごいだろ!酒に関しては誰にも負けない自信があるからよぉ!」
「さすがたいちょ〜!かっこい〜!」
「お、おお。なんか照れるなぁ。」
「ルナってば酔うとこうなっちゃうのね。天然美少女から小悪魔美少女になった感じかしら。目はうるうるしていて、頬はピンク色、いつもより大胆…あぁ!お姉さんもうだめっ!」
くらっと額に手を添え、ルナの色気にやられた〜なんて言いながら倒れこむエリさん。エリさんもだいぶ酔っているが、酔う前から常にあんな感じなのであまり新鮮味がない。
「えりさん…?だいじょーぶですか?おみず、のみます?」
「うふふふ。ありがと。」
お水をエリさんに渡そうとした時、後ろから同じく酔った隊員にぶつかられこぼしてしまう。自分も相当酔っていておぼつかない手で水を渡そうとした為、少しの衝撃で水をこぼしてしまった。グラスが割れなかったのが唯一の救いだ。
水はテーブルの上に溢れたが、少し自分にかかってしまう。
「うわ!ごめんなルナ!大丈夫か?」
「だいじょーぶ、です!…こーして拭けばっと!」
持っていたタオルで濡れた所を拭く。首の所も少し濡れてしまったので、襟元を緩めて拭く。
火照った体には丁度いい冷たさでふぅ、と息を吐く。
「……なんかえろい…。ぶつかって良かったかも……。」
「…眼福だ…。」
丁度周りにいた人達がその光景に釘付けになっていると扉の前ベルが鳴る。
チリンチリーン
「いらっしゃーい。」
「ちょっと人数いるけど空いてる?」
「空いてるよ!好きな所座っておくれ!」
ぞろぞろと入ってくる。先程までゆとりがあった店内も一気に狭くなる。
「あれ?第3小隊のメンバーじゃん?」
入ってきた集団はまさかの私達と同じ王国の騎士団だった。




