肩書は立派、それが何か?
「お前、この変態を知ってるのか?」
俺は不法侵入者第一号の方を指さし二号を問い詰めた。
「誰だコイツ?何で家にいるんだ?
……ついでになんでセキュリティかけてんのに
お前もすんなり入って来れたのか合わせて聞きてぇな!」
その二号は、いや~なんでかなぁ?とか言いながら
やたらと時刻表示に視線を向けている。
「うーん、5秒したら返事する」
「いや即刻しろ!」
「3・2・1ハイ~OK。で?何?」
間の抜けた言い方にイライラが止まらない。
「取りあえず立ってないでそこの椅子に座って、教授」
「言われんでも座るわ!」
え?教授ってお前かって?
当然だ、俺しかいないだろ。
あ……自己紹介がまだだったか。
俺は社会学者兼特定精密機械工学情報課教授こと、
銀 雷
肩書は仰々しいが要は学校で教鞭を執りながら企業等に
アドバイザーとして協力しているのが主な仕事だった。
だったという理由は後で言う。
これでも昔から頭だけは良くって今期大学からの推薦もあり
政治家へ転身。
特に職業兼任しているのは今や珍しくないし
もっと訳の分からない肩書をやたら持っている奴らは大勢いる。
一概に政治家といってもピンキリあるわけで俺は底辺組。
とはいえモロモロ忙しくて教壇に立つ時間がなくなった為
過去形になったというわけだ。
別に国家を動かそうとか、
いづれ代表になりたいだのと野心はからっきしないし、
誰もそこに期待していないだろう。
俺が担がれた理由はただ1つ。
ある特定分野限定での役割を担っているだけ。
にしても……
最初は政治家にでもなれば女の子にモテモテで
困っちゃいますよっ!この色男!とか言われちゃいますよって
担がれて、付随するであろうモロモロの特典に期待してなったのに……
確かに肩書に寄ってはくるものの
すぐ騙されるし貢ぐだけ貢がされたらポイと捨てられてしまう。
何故だ……?
こんなに頭が良くて温厚で金払いが良い男なんて滅多にいるもんじゃない、
世の中の女の多くが何故にこうも節穴なのか謎で仕方ない。
そして……全然紹介したくないけど、
二号ことコイツは時雨。
仕事関係で知り合って以降ちょいちょい飲みに行ったり、
主に俺の愚痴を聞く係みたいなものだと認識している。
ま、その大半がふんふんと相槌を打っているようで
耳に入っていないようだがな!!
雑でテキトー男だが“ツヴァイラス”の技術力は
この俺でさえ認めざる得ないものがある。
人間誰しも1つくらいは特技くらいはあるってことだ。
まてよ……お前が絡んでるってことは
もしかしてこの変態“ツヴァイラス”か。
「あ、ようやく気が付いた?
ね、“カレ”が此処に運ばれた時間は登録記録によると午後1時」
「あ……!」
「さて、今何~時だ?」
「!!」
しまった!慌てて時間を確認すると午後1時3分。
クソ!そういうことか!
「お前、謀ったな!?こんなの詐欺だ!無効だっっ」
「出来ない筈だよ。
タイムリミットは24時間。その間に通報しなければアウト。
そう法案を通したのは他ならぬ君だったよね?センセ」
「ちぃぃ……ッ」
先生、それも俺のことだ。
さっきのプロフィールに追加しておく。
いやいや、まだまだもっと語りつくせない俺の良い所を
知って貰いたいのに―――!
「あずちゃんたら」
「お前、呼び方統一しろ!
皆がまた新たな登場人物か??と混乱するだろうが!」