オマエハダレダ?
「……お前、誰だ?他人の家で何をしてる?」
「…………。」
「無視すんな!理由と名前を言え」
「まだない」
「はぁぁ???」
不法侵入してそうそう名前を名乗るとは思っていなかったが
言うに事欠いて“ない”とか言えるその神経が腹立つ。
しかもだ。
泥棒なら泥棒らしく取るもの取ったら
サッサ逃げればいいものを何でリスクを伴う
家主を起こす(足で!)とかいう暴挙に出るとか完全に理解不能。
全くふざけた野郎だ。
「ヨシ、通報する。そこにいろ」
今思えば律儀に予告して通報しようとした俺もバカだったが、
いや、きっと昨夜のお酒が残ってて判断力が低下していたのだと思う。
通信機で警備課に連絡を入れる為に
伸ばした手ごとヤツに捕まれ、あろうことか……
「ん……んん!?」
自分がキスされていることに気が付くのに
かなりの時間を要した。
ウソウソウソだろ??
空いてる手や足でヤツを叩いたり蹴ったりしてもビクリともしない。
それどこころか腰に回された腕によって
引き寄せられたかと思うと更にキスが濃厚になった。
「……ッ、ん……」
くっそ、なんて馬鹿力だ。
一見優男に見えんのに明らかに力の質が違う。
「よ……せ、……ぅ」
相手は女の子じゃない男なのに
いやいや、ヤバイヤバイ、めっちゃくちゃ上手い、コイツ。
徐々に足に力が入らなくなってきた。
もうダメ、へたり込みそうだと思ったその時だった。
いきなりバタンという大きな音とともに
ドタドタとこれまた慌てふためくような足音が聞こえてきた。
「わーお!お楽しみ中ですねっ!
ハイハイちょ~っと失礼しますよ~」
つい数時間前に聞いていたその忌々しい声は……。
「!?んーんー!!」
「あ、そのまま続けて~目線だけこっちクダサ~イ。
じゃ、記念写真を撮りますよぉ。
はーい、OKでーす。
バッチリ、カメラ目線ありがとうございます!」
「!?!?」
なんかとんでもない非常事態が起きているのに
この野郎は全く動じると来なく尚も俺を離そうとしない。
しつこく絡みつく奴の舌を噛んでやった。
「かはっ、い、いい加減に離せッ、この変態野郎がっっ!」
頭がクラクラするとか言ってられないくらいに
訳わからんことが身の回りで起こってる。
それもこれも昨日から。
この最悪なタイミングで現れた上でのこの行動。
その確率を鑑みる限り全てはこの男が絡んでるに間違いない。