3話 転移
語彙力が少ないと中々難しいですね......。
それからサブタイトル考えるのも難しい。
「よっ。その本、もしかしてもう読み終わったのか?相変わらず早いな」
「あぁ。丁度読み終わったとこ。楓こそ今日は随分と早いな」
野球部員たちのかけ声、吹奏楽部の演奏が微かに響く教室で、椅子に座り本を持つ音凪徹也と一人の少年が話をしていた。
──少年の名前は秋月楓。
運動神経がとてもがよく、成績優秀な上に容姿端麗。
剣道部に所属。
青みがかった黒色のサラサラな髪に、鋭くどこか優しげな瞳。
完璧なその容姿、能力から女子からの評判が当たり前に良く、ファンクラブなんてものが学校内で作られている。
徹也とは幼馴染み。小学校からの長い付き合いで普段から常に一緒にいる事が多い。
正義感が強くとても優しい性格。
困っている人を見ると頭より先に体が動いてしまうようなタイプの為、普段から共にいる徹也は結果的に彼の人助けを手伝う事になっていた。
具体的には重い荷物運ぶ手伝いだったり、道案内などと些細な人助けが多かった。
学校へ登校中にもそういった事が多々あり遅刻する事が頻繁に増えた結果、そんな楓の癖を徹也が先生に相談した所、一時間目が始まる前までの遅刻なら免除するという異例のルールが特別に取り入れられたりした。
この遅刻免除の特別なルール関してはクラスメイト達も容認している。
それは楓が誰にでも優しく、正義感が強い事を知っているからこそなのかもしれない。
「今日はミーティングだけだったんだよ。いつも待たせて悪いな」
「お疲れ様、別にいいよ。本があるしな。今日の本はなんか……イマイチだったな」
「ふーん。今日はどんなジャンルなんだ?」
楓は黒板にチョークを使ってカツカツと何やら絵を描き始めた。
「ファンタジー。……恋愛?」
「へぇー。徹也が恋愛を見るなんて珍しいな」
「たまたま手に取ってさ、ちょっと見てみようと思って」
「話はどんな感じだった?」
「簡単に言うと……神様が空から降ってきて……人間に恋する話、みたいな?」
「それだけ聞くとちょっと面白そうだけどな」
「そうか?」
楓は黒板に一つ、赤い花を書き終えると椅子に座る徹也へと近づいていった。
「なにそれ?なんて名前だっけ……」
楓はチョークを手で弄びながら答えた。
「確か、彼岸花?この花のフワって感じと名前が好きなんだよ」
「ふーん。俺はあまりよく分からないな。白色もあるんだっけか?」
徹也は本を閉じ、帰る支度を始めていた。
「それよりさ、その本ちょっと読んでもでいいか?」
「……ん?あぁ、いいよ。でも帰りながら読んでくれな。俺も借り物でさ、今日返しに行く予定なんだ」
「あぁ、軽く読むだけだからいいよ」
徹也は本を楓に渡そうと掴んだ。
掴んだ瞬間、徹也は不思議な感覚に襲われた。
(なんだ?本が熱い?寒い……変だ。息が苦しい……。呼吸が、頭が痛い)
徹也は苦しそうに頭を抱え、呼吸が乱れ始めた。
徹也に異変を感じた楓が心配そうに見つめた。
「徹也……?おい、大丈夫か?」
楓は、息を切らし苦しむ徹也へと何度も呼びかけたがその声は届いてはいないようだった。
「おい!徹也!すぐ先生を呼ぶから!しっかりしろっ!」
程なくして徹也はそのまま気を失ってしまった──
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「いたっ……。」
テツヤは頭を擦りながら目を覚ました。
「どこだ……?ここ」
その場所はさっきまでいたよく見知っている教室では無かった……。
目の前にはとても豪華な装飾の施された天蓋付きのベッド、手前にはティーカップの置かれている綺麗な装飾で彩られた机に、座っていた筈の椅子すら豪華な物へと変わっていた。
その他に本棚、クローゼットなど何から何までが見慣れぬものだった。
見慣れたものと言えば、手でしっかりと掴んでいた本くらいだった。
「何なんだよ……」
テツヤが変わり果てた景色に呆然としていると、ベッドと反対側──テツヤの真後ろに位置する場所にある扉が開かれる音がした。
恐る恐る振り返ると、そこには一人の少女が佇んでいた。
栗色の綺麗な長い髪。歳はテツヤと変わらないくらいで、キラキラな黄色のドレスに身を包んでいた。
「……どなたですか?」
綺麗な透き通った声が微かに響いた。
テツヤはその声と少女の容姿に見惚れ、長い間ぽけーっとしていたが、彼女の体が微かに震えていることに気が付くとハッとし、頭でこの状況を打開する策を考え出した。
(なるべく怯えさせないように……でも何て言えばいいんだ……。普通に名前?それだけで納得するのか……?)
(イヤイヤイヤ!それよりも早く何か言わないと、返って怯えられる!)
「おっ......お邪魔してます。とりあえず、座りませんか?」
テツヤは引きつった笑みを顔に浮かべ、もう一つ空いていた椅子に手を差しのべ、彼女にそう言った……。
(何言ってんだ!逆に不審がられるだろ!)
テツヤは心の中で悲痛な叫びをあげた。
栗色の髪の少女は硬直し、ただただテツヤを見つめていた。
(終わった……絶対おかしな奴だと思われたな……)
(俺がここにいる時点でおかしいとは思うけどさ……)
ここから少しの間沈黙が続き、互いに見つめ合うという状況が続くのだが、それはテツヤにとってとてつもない苦行となるのだった……。
少し文が長くなった気がします。
また暇つぶしに読みに来て下さいね笑
(本タイトルが大幅なネタバレな気が......。
まぁ別に良いですよね??)