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屍生島奇譚 交番 乱戦

 ホラーの定番として交番に行って銃を奪う。これって本当に出来る物かよく分からないですよね。

(間違っても実践しよう真似しようなどとは思わないでください。)

 計画を実行に移すのは3時と決めた。外の様子をたまに窺う子供に声を掛ける。少し休まないとこの後辛いぞと忠告すると、不安と弱音を口にした。思わず、礼輔も暗い気持になった。

「これ一個食うか?」

 そういって差し出したのは礼輔の倉庫のなけなしの食料の一つである飴玉である。

「いいよ、先生に迷惑かけてばかりじゃいけないしね。」

 そう言って断る仕草をすると、俯いたまま、話し始めた。

「もしかしたら、お母さんもお父さんももう、化物かもしれないけど、先生、もし、もし、そうだったら。生き延びるために打ち殺して。」

 言葉に息が詰まりそうになった。涙や悲鳴が出なくてもその異様に沈痛な空気と表情が礼輔の気道を塞いだ。心が体を叩いているのかと思うくらいにその我慢ならない感情が暴れていた。

「悪かったな...お前達にこんなことを考えさせるなんて教師失格だ。」

 礼輔の自責が初めて口から零れ出た。

「先生の所為じゃないよ。誰の所為なんだろうね...」

 そういうと、その子は再び窓に顔を向けた。何処か遠くを見つめるような悲しげな視線ときりりと結ばれた口の奥できっと自分と同じように悩み、苦しみ、同じくらいに苦しくなっていると礼輔は思った。


 佐伯は風呂場の換気扇の近くで煙草を吸っていたらしく、服に残り香が染みついている。この様な事態であるにもかかわらず、良く吸えるものだと感心してしまう。本当に止めなければ呼吸器が危ういと教わらなかったのだろうか。それとも依存症でもうニコチンが無いときついのだろうか。いずれにしても、子供達に受動させるわけにはいかないので、換気扇を全開で回し、彼の服を強くはたいた。その時刻が刻々と近付いているプレッシャーが自然と圧し掛かる。自分達はこの子供達だけでも守らなくてはいけないという使命感から来るものだ。礼輔は正義感が強い性格だと自負している訳ではないが、ここで生徒を生存させる手助けが出来るのは自分だけだと精神を鼓舞しているのだ。普段は臆病で軟弱な自分へのエールを一人で送っているのだ。


 時刻になると直ぐに玄関を出て軽トラックの運転席に乗り込み、エンジンキーを回し、荷台に全員が乗ったのを確認し、急いでアクセルを踏み込む。佐伯には感染者に発見されても、一先ず無視し、乗り込もうとするしぶとい奴には消火器と斧で叩き殺せと伝えてある。子供にこの仕事を手伝わせることは出来ないが、何名かが自分から協力したいと名乗り出たので、他の子供の目を塞いでいてくれと伝えた。その内容と目的は理解したらしく、6年の二人は上級生らしく頷いた。何よりも最優先事項は自分の身を守る事だ。万が一でも荷台から投げ出されたら、助けに行くのが非常に困難だ。それに加え人の体を轢き殺す衝撃で腰や足に負担を掛ける可能性もある。これに関しても細心の注意を払うようにと伝えた。


 小さな島なので直ぐに交番に到着した。雑に、だが直ぐに発射できるように軽トラックを停止させ、交番の中に押し入り、奥の方に踏み込む。

「生き...ている。」

 奇妙な程に低い感染者の声に最悪の状態がすぐさま把握できた。警官が感染しているのだ。しかも拳銃を構えている。しかし、礼輔は用意周到だった。軽トラックの運転席に取り付けてあった緊急発光筒を咄嗟に構え、相手が拳銃の引き金に手を掛ける前に投げた。交番内を容赦なく包み込む激しい光に両者の眼が眩む。奇襲を食らった警官の感染者よりも礼輔の方が立ち直りが早かったのは言うまでもない。右の拳で相手の鼻を圧し折ると、左足を腹部に打ち込む。格闘を習っていたわけでもない礼輔の神経から繰り出されたものとは思えないほどの強烈な連撃が相手の体勢を崩す。礼輔は相手の右手の拳銃を強引に奪い取ると警官の格好をした化物、元警官だったそいつの脳を貫く一撃を放った。生まれて初めて銃を撃った、そしてそれで人を殺した。微かに銃を持つ手が震えている。脳幹を完全に破壊した為か相手はもう微塵も動かない。礼輔は警官が持っていた替え玉と警棒を引き抜き、猟銃として此処に保管されているライフルを探した。


「あった。」

 丁度二丁の大型の猟銃を引き出し、外へ向かおうとしたその時、

「きゃああああああ」

 子供の悲鳴だと直ぐに分かった。礼輔は急いで駆け出した。

 前書きにも書きましたが、この小説から悪い影響を受けても私は一切責任を負いませんので予めご了承ください。もう予めではないのですが。今回もお付き合い頂き有り難う御座いました。

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