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屍生島奇譚 計画 自室

 主人公というのは適度に出来ていない方が好きですが、いざというとき人はどのような行動をするのでしょう。それが解らないのが、自分の文章の甘さ、未熟さかなとも思います。

 礼輔は自分の非常食と常備食を子供達に分け与え、自分と佐伯はスポーツドリンクと少しの乾パンで我慢した。異常に硬いクッキーの破片が臼歯に挟まるこの感覚が礼輔はどうも苦手だった。スポーツドリンクを砂漠に齎されたオアシスの様に感じた。水道水は感染源であることを危惧して、触れることもしなかった。自分のマンションの部屋に他人、それも生徒を招き入れるのは初めてであった。狭い部屋に7人が入っているのだ。某子沢山父親のドキュメンタリーに似た状況になってきた。幸い物分りの良い子が多く、下手な事はしなかったが、そろそろ彼等も体力が限界らしかった。

「この後何処で休息を取れるか解らないから今のうちに休め。」

 佐伯は人の家だが此れを言う。少し不躾だが、この意見も一理あると思った。

「佐伯君、この後どうしようか?まずい事になったのは言うまでも無いし、いつまでも此処に居る訳にはいかない。おまけに電波の基地が破壊されているときた。これはいよいよ本格的にヤバい事になった。」

「解っている。さっき荷台からこの町の住民の感染者を見た。このままではもう全体的に感染が広がっていると見ていい。学校からもうこんなに広まったってのは驚きだが、潜伏期間も短いし、感染のスピードが速い。」

 やはり、水道水も感染源の一つであるらしい。もう何も信用できなかった。経口感染ならば鼻腔と口腔に侵入する全てを警戒の対象に入れなければならなかった。

「待って、いま感染が拡大って言ったけど、どうやって感染しているの?」

 礼輔はこの時某ホラーのゾンビが噛んで仲間を増やす様子を思い浮かべた。

「違うだろうな、あいつ、さっきのあの子供が先生も芥子の仲間にとか言っていただろ。あれだ。彼奴らは町の井戸や水道管に自分の吐瀉物や血液を流し込んだんだろう。実際の所噛んで感染なんてのは狂犬病や爬虫類の毒だろうが、あれはそういうのとは少し違うんじゃないのか?」

 礼輔の思考を見透かしたかのように佐伯が言った。

「でもさっきの生徒が言っていた先生も自分の仲間にってのはどういう事?」

 直ぐに佐伯の言葉の矛盾に気付く礼輔に佐伯は顔を顰めた。

「物分りが良いな。まぁ、その経口感染、つまり唾液や血液を口移しで感染させるって事だろう。」

 想像して吐き気がした。

「まぁ、そんな顔をするな。実際、性病や肝炎も口内の粘膜に張り付いているって言うのが普通だろう。」

 佐伯の意見は確かに筋が通っている。

 非常食として取ってあるのは人数分のカロリーバランスしかない。つまり、あと一食分しか持たないという事になる。これでは時間も身体も直ぐに限界が来てしまう。

「さて、本題に入ろうか、葉山君。この後どうする?」

「いくつかプランを立てたから補足や訂正を加えてほしい。」

「了解。」

 礼輔は島の全体図を取り出し、自分の家の位置に蛍光色マーカーを当ててそこから道に沿って一本の線を引いた。線が辿り着いた先は島唯一の交番である。ここがまず、寄って損は無いと思われるところだと礼輔は考えている。警官が所持している銃を奪うことは出来ないが、この他に交番に大型のライフルが置いてある。猛獣駆除用で警官の許可が無いと使えないが、島の中で尤も威力が高い武器と思われた。

 次にマーカーで刺したのは南側の停泊所の隣にある防災基地である。此処には使用時に本州まで届くほどの光を放つ緊急用のフラッシュ弾が常備されている。これを使えば広島と四国に助けを呼べると、礼輔は考えたのだ。

 更にマーカーで刺したのはガソリンスタンドと防災倉庫だった。これは現在のサンバーの燃料補給の為と、食料を補給する為である。流石に優先度は低く、ここで時間を潰す事は出来ないが、位置を確認する意義は確かにある。

 最後に一際大きく丸を付けたのは島の北側の灯台である。此処は他の目的地とは離れているが、非常用信号で広島に助けを呼ぶ第二の手段として有効だろう。しかし今マークした全てに行くのは流石に無理がある。さらに厳しい事にサンバーのガソリンはほぼほぼ切れかかっている。町に感染者が居る限り徒歩で子供たちを連れて歩くというのはリスキーだ。やはり小さい島でも車が必要になってくるだろう。昼にごみを捨てに行った時にガソリンを入れて置かなかった事を激しく後悔した。あの中古のサンバーは学校の共用であるため、普段はそれほど使われない。ましてやこの島は狭く、ガソリンも高い。


 佐伯は一通りの作戦には同意したが、新しい発案を一つ付け加えた。

「俺が北側の灯台に向かってライトのスイッチを付けてくる。」

 それはあまりに無茶だと礼輔は直ぐに反対した。

「確かにそうかもしれないから、もう一か所、寄って行ってくれ。」

 そう言って佐伯が指差したのは自分の住んでいる居住区の外れの家だった。此処に行って何をするの礼輔には予想が着かなかった。

「俺は車を持っていないし、バイクも無いけど、隣に住んでいる親父が持っているプレミオがまだ使える。」

 鍵は何処にあるのかと尋ねると、実家の車の鍵がある場所を知っていると答えた。それでもリスクが高いのは変わりない。もしかしたら佐伯の親も例の発疹に侵食されているかもしれない。この事に関して佐伯はその時は戦うまでと静かに言った。礼輔は佐伯もまた生存の為に心を鬼にしたのだと思って何も言わなかった。

 今回もお付き合い頂き有り難う御座いました。実際私は島というものシステムを詳細に知りません。指摘等あってもそれはお許しください。

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