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屍生島奇譚 記録終了

 この物語の中の私が描く後書きとして最後に冒頭と対応した話をお贈りします。全話移行が気になった方は是非読んでみて下さい。

 これは冒頭にも述べたとおり、葉山礼輔氏が私、竹島兆に話してくれた内容を三人称の小説形式で簡単にまとめた物であり、此処に記載されているような事件の詳細な事情やウイルスの性質は一般に公開されていない。

屍生島は未だに閉鎖されているが、政府は事件の調査のためと公開しているため、事件に関係のない人はこれらの情報を全く知らない。また、事件の黒幕と思われるウイルスを流し、パンデミックを起こした何者かの正体も未だに警察は掴めないまま調査は停滞している。廃墟になった屍生島は放置された居住区が真に屍の様に薄気味悪く残っていて、たまに海上保安庁或いは海上自衛隊の調査船が訪れる以外は人の出入りが見えない。

 また、ウイルスに関する研究に極秘で協力している機関や研究者がいると、巷間では噂されているが、名前が公開されていないため、私はウイルスの性質を知らないままこれを書いている。


 先日、改めて葉山氏に会い、彼の現況を聞いた。警察からは誰にも事件の概要を知らせるなと口止めされているらしいが、彼は今、広島市の小学校の教員という形で職務復帰したらしい。今は実家に住んでいて、彼が事件によって殺した命に関しては極秘、黙認されることになった。実際に警察や臨時の調査機関も島を捜索し、状況から正当防衛と判断したらしい。島の住人や葉山氏の名前も極秘扱いとして非公開になっている。私には特別にと今作品が書ける程度に恐らく機密として政府が扱う情報を話してくれた。これは事件で発狂し、貴い命を落とし、或いは奪われ、彼の生徒や住民への追悼、或いはレクイエムに近いものかもしれないと葉山氏自身が語ったのを私は鮮明に記憶している。しかし、私の小説は残酷な描写が多く、記録小説という形を取る都合上、彼等を穏やかに眠らせる物は書けないという旨を話すと、

「それでいい、いや、だから貴方にお話ししているのです。記録はより克明で、事実に忠実であるべきで、今回の事件が、またその死者の記録が抹消されることが無いようにそのスタイルを維持して下さい。」

と快い返事を頂いた。


 事件後の処理、被害者の葬儀に関しても実際は極秘で行われているらしく、関係者は葬儀を行いたいと要望を政府に提出しているらしいが、感染した遺体を不用意に公開するわけにもいかず、警察及び国家は、死体を安置したまま、遺族には状況の整理、研究が着き、一連の事件が解決されてからと強引に説明し、押し通したらしい。

 これも葉山氏が情報源だが、例のウイルス(臨時名称として、マーズ・コントローマと呼ばれるようになった。)に感染した人間は治癒不可能で発狂し、暴走したまま、元に戻ることが無かったらしい。自分の無罪が承認されたのも、治療不可能の暴徒化現象付きの病で生者を保護する為に行ったという事、警官として島に訪れた笹沼氏による助言、嘆願があったかららしい。一連の事件の責任や行動の対応が政府に一任され、詳細を調査し、全面的な解決を早急に実現することが国民から要求されている政府は暴徒化事件として、情報を制限して公開し、一応の対応として、他は黙認している。マスコミや掲示板、ありとあらゆる情報源が現実と食い違った情報を巷間に流出させ、事実と異なる見解や理解を大衆に拡散させようとする無知で不用意な専門家気取りが大量に出現し、この事件は新たな困惑と混乱を呼んでいる。これは今日の情報のあり方を皮肉するような結果として、専ら批判と中傷の対象として扱われている。非常に皮肉めいた性質を嘆きたいところだが、情報社会を制御するのが不完全な人間どもである限り、これは致し方ない事であろう。

 

 話が随分逸れてしまったが、いずれにしろこの事件は闇の中で低迷したまま、黒幕もその暗黒のヴェールを脱がないまま、月日は5か月ほど流れた。記録してこの証言を残し、記すことは私の仕事だと考えている。そしてこれを書くに当たって情報提供に積極的に協力して下さった葉山氏には感謝を伝えきれない。物語中でも、私と葉山氏が会うシーンがラストとして描かれている。この時の彼の心情を思えば、私はなんと不躾で嫌な人間だろう。そんな私に口を開き、一つ一つを鮮明に教えたのは紛れもない葉山氏の正義であろう。私はそれに最大の尊重の意を示す。

 この物語を書くに当たって表現を工夫したり、葉山氏と私の主観を混ぜたが、一連の動向や事象が事実であることに変わりはない。また島の名前を除き、私と葉山氏を含めた人名や学校名は全て仮名であることご了承願いたい。

 そしてここまでの物を私に教えて下さった葉山氏に私は恩返しをしたいと思っている。その道筋は今丁度書いている時に浮かんだ。もう一度言おう。私は葉山氏に恩返しをする。事件の完全な解決と黒幕の逮捕という形で。

                                                                        竹島 兆 

 今回までの完読有り難うございます。冒頭にも述べたとおり、今後これの続きが展開できる形にしましたが、まだ一字も執筆していないので未定です。もし続きを書く場合は別の作品として「支配ウイルスに関する記録 第二部」というタイトルで書きます。今まで読んで頂いた方には改めて感謝を述べたいと思います。本当に有り難う御座いました。お疲れ様でした。  完

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