屍生島奇譚 記録概要
長く不投稿の状態が続き申し訳ありませんでした。この期間に書き続けていた小説を一遍、完結済みの状態で投稿します。先の二編とは完全に異なる趣向を凝らしたホラーテイストを心掛けて習作として書いてみました。心臓に悪いのでお気を付け下さい。第一部とありますが、例の如く第2部は未定で、リアルでも多忙もあり、いつ投稿出来るか解りません。それでも今作だけで完結できる作品として、この習いたてホラーをお楽しみいただければ幸いです。
これは瀬戸内海のに浮ぶ小島で起きたとある大事件の全容を知るとある人間の体験談から構成した物語である。
その舞台となる島の名前だが、屍生島と書いて(かばねいじま)と読む。奇妙で薄気味悪い名前だと大概の人間が思うが、普段は閑静で実に穏やかな場所である。人口は600人ほどで、数年前までは老人が過半数だったが、10年前に広島県と香川県が共同で実施した過疎島民招致政策の影響で、若者世代や専業漁師、農家が此処に住み始め、子供も増えた。面積は与那国島位で、最高地点は32mである。島の南部は居住区や学校、港など主要な建物が多く点在している。北側は山や灯台などがある。此方にも臨時として時々使われる港があるが南側のそれよりも小さく、大型船舶は停泊出来ないようになっている。
そしてこの出来事の告白者、体験を私に語ってくれた人物のプロフィールを紹介する。
氏名:葉山 礼輔
性別:男性
年齢:28歳
職業:小学校教師
身長:179cm
体重:69kg
血液型:B型
出身:広島県広島市
物語当時の職場:屍生島小学校である。
広島大学出身
他に私の目から見た彼の特徴を幾つか挙げよう。性格は非常に穏やかである。(本人曰く臆病らしい。)身体的には痩せ形で、持病は特にない。スポーツは昔剣道をやっていたという事である。彼自身はかなりその頃の動きを忘れていると謙遜していたが、今までの職場でも剣道部の顧問を務めていたので腕は中々の物だろう。
広島の小学校からこの島に転職してきた経緯はここで触れるほどの物でもない。丁度島の人手不足で広島市の教員に募集が掛かった時、独身で若い彼が出向することになっただけで、出向と言っても生活環境が変わっただけで給料は変わっていない。
この物語は完全に彼の告白を元に作られているが、論理と順序の都合で私と彼の憶測が入ったり、彼の視点を利用しながらも三人称的な描き方をする。また他の島民に関しては詳しく触れない人物もいる。それはプライバシーの問題、特に重要でない人間、彼も私も対象の名前を知らないのいずれかである。
一般的にこの事件は『屍生島集団暴徒化事件』と呼ばている。警察や周辺の関係者は黙秘を一貫し、情報の殆どは非公開で会ったり、抽象化されている。その中で唯一の生還者であり、積極的に事実を告白してくれた彼、葉山氏に私は感謝する。繰り返しになるが、この物語は世間には公表されていない今は封印された島の事件の経緯を彼の体験と私の憶測による物語で構成するものである。都合上、三人称視点の物語として展開していく。実名の公開は一切なく、この話の主人公である葉山氏の事は「礼輔」他は臨時で決めた名字で呼び、著すことにする。葉山氏の証言に基づくものだが、一部には記憶違いや、まだ発覚していない事実と異なる描写が含まれるかもしれない。しかし、それは私や彼の知見を超越する範囲の話である。それほどにこの事件は一般を逸脱しているのだ。想像に難い話であり、ジャーナリストである私の文章でも言い表せない内容が多い。予め御容赦願いたい。
屍生島奇譚 序文 ジャーナリスト 竹島 兆
今作は物語上の私が物語上で小説を書くという一風変わった設定を付加しました。次回から本編です。