ヒーローは、舞台に興味がない
目に止めて頂き、ありがとうございます。
ルチアと出会う前、出会い直後のジェード目線です。
ちょっと重い感じで、はじまります。
苦手な方は、そっと閉じて下さい。
嵐の夜だった。
飛び交う怒声、響きわたる叫び声。
目の前で、人が、人でなくなっていく…。
「早く行きなさい!!ジェード!!」
父上は、強く、厳しく誰にも負けないと思っていた。
「早く!お願いだから、早く逃げて!!」
美しく、凛々しい母上は、決して取り乱したり、涙を流さない人だった。
そんな、両親が、目の前で、倒れていく。
逃げろという言葉を残して。
一緒に逝ってくれと言って欲しかった。
一人で生きて居たくなかった。
でも、生き延びて欲しいと願われたのなら…。
逃げて、復讐を誓うしか、道はなかったのだ。
逃げる先は、用意されていた。
隣国の、外交を担当している、公爵家。
髪を黒く染めて、本当は、瞳の色もかえたほうが良いと言われたが、
それは、出来なかった。
両親と同じ色の瞳。
それを失くしたくなかった。
「見つかってもいいから、変えないで…。」
そう公爵家当主に言ったら
苦笑して、頭にポンと手を置かれた。
…優しい手だった。
少し、ほっとした。
公爵家には、娘が居た。
妹になると言われた。
黒髪に金色の瞳の、お人形みたいな子だと思った。
実際はお人形などではなかった。
よく動き、まとわりついてくる、黒い子猫のようだった。
最初は鬱陶しいかった。
どこに行くにも着いてくる。
事あるごとに、抱き着き、話しかけ、頬にキスしてくるのだから。
いつから、だろう。
景色が、色を取り戻したのは。
あの夜を境に、鳴り響いていた、雨の音が消えたのは。
まとわりついてくる、妹が愛おしく思えたのは。
「_____________もう泣かないで。」
言葉に出さなくても
抱き着いてくる妹は、いつも、そう語りかけていた。
単なる思い込みかもしれないが、そう伝わってきたんだ。
抱きしめられたら、抱きしめ返す。
キスを贈られたら、贈り返す。
それが当たり前になった頃、やっと、世界が、綺麗に、見えた。
ルチア、君が嵐の夜から救ってくれた。
まだ、全ての闇から抜け出せないけど
君が居てくれたら_____________。
次回こそは、ラブな話を!!