少女と少年と麦わら帽子
「ほら、悪かったって」
「もう、2度とこんなことしないでください」
「……善処しよう」
「しないでください!!」
少女はすっかりおかんむりで、頬を膨らませてプリプリ怒っていた。
正直に言うと全く怖くない上に愛着まで沸いてくるのはなぜだろうか。はしゃいでいる犬を頑張って落ち着かせようとしているようなそんな気持ちになってくる。
そんなことを考えていると、少女はハルキをジト目で見てきた。
「何か失礼なことを考えていませんでしたか?」
「……別に」
「何で間があったんですか!?やっぱり考えてたんですね!!」
「ああ。にしてもお前は子供なのにしっかりしてるな」
「あ、家では年上なので私がしっかりしないと---て、今さらっと認めましたよね!?あっさり過ぎて気付かない所でしたよ!!」
「お前、よくそんな喋っても疲れないな」
「誰のせいだと思ってるんですか!!」
まさに犬のように息をフーフーと荒げる少女であったが、しばらくすると1つため息をついて大人しくなった。
「はあ、これならまだ子供たちの方が扱いやすいです」
「そりゃどうも」
「誉めてません!!」
「ところで、お前こんなところでぴょんぴょん跳ねて何してたんだよ」
「何で貴方はいちいち煽ってくるんですか---て、は!?そうでした!!」
そろそろ気になっていたことを指摘すると、案の定忘れていたようで、慌ててもう1上を見上げる。
つられて見ると、遠くから見えた麦わら帽子が、枝の先に引っ掛かっていた。
少女はそれを焦って見上げていて、おどおどと世話なく動いている。
「あれ、お前のか?」
「はい……どうしよう、大切なものなのに……」
そう呟いた少女の顔は自分と同等の価値のものを失ってしまう時ほどの辛そうな表情だった。
「……」
ハルキはそんな少女を一瞥すると、すごい早さでスケッチブックと鉛筆を取り出した。
そして、座る時間も惜しいとばかりに立ったまま絵を描き始める。
「あの……?」
戸惑う少女には目もくれず物凄い早さで絵を描きあげていく。
魔力を込めている鉛筆は黄色の線を尾のように引きながら絵を描いていく。
少女が状況を理解して唖然としてから、数秒で描き終わしたハルキは、1度描いた見る。
そこにはホトトギスのような鳥が描かれていて、今にも動き出しそうな絵である。
だが、ハルキは特に何か思った様子はなく薄く輝く鳥の絵にイメージを流し込む。
すると、絵が1度震えたかと思うと、眩い光を放つ。
そして次の瞬間には、スケッチブックの上に少し大きめの青に色付いた鳥がとまっていた。
「え?……え?」
さすがにこの状況に理解が追いついていないのか、唖然とした表情から一切動いていない。
ハルキはそんな少女に何か言うわけでもなく、横目で少し見たあとに、すぐに鳥に向き直る。
鳥を麦わら帽子の方向に向かせる。
「行け」
その言葉だけで、鳥は勢いよく飛び立つ。
鳥はあっという間に麦わら帽子の場所までたどり着くと、少しくちばしで突っついてから、足で掴んでそのまま降りてくる。
そして、ハルキの手元まで麦わら帽子を持ってくると、もう1度スケッチブックの上に乗ると、絵の具のように紙に浸透していき、気づいたときにはまた1枚の鳥の絵になっていた。
それを見届けたあと、ハルキは手に持っていた麦わら帽子をいまだに動いていない少女の頭の上に乗っける。
すると、その重みでやっと我に帰ったのか、一気にまた喋り出した。
「ちょ、今のなんですか!?」
「魔法」
「魔法って……そんな規格外な魔法が有るわけ……」
「まあ、そういう魔法なんだよ」
「そんな簡単な感じで済ませられることではありません!!だいたい貴方は----」
そのあと、しばらく少女のハルキに対する説教が始まったが、ハルキは適当に流して、それでさらに少女が怒っていた。




