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07

「ねえアイリス……このまま王命隊を続けるの?」


そうミリアは問いかけた。


「えっ?」


戸惑うアイリスに自身の考えを告げた。


「アイリスは弱い人達を守る為に騎士を目指していたよね? でも、聞く限り、王命隊はそんな場所じゃないよね?」


「…………」


「このまま王命隊で腐っているぐらいなら、潔く騎士団を去るのもひとつの手なんじゃないかな? アイリスの実力ならどこでもやっていけるよ。例えばハンターとか? あれだって薬草とってきたり、魔獣を討伐したり、誰かの役にたつ立派な仕事だよ」


「うーん……」


ミリアの話ははなかなかに的を射ていた。と、いうよりアイリス自身が王命隊を去ることを既に検討していた。


1ヶ月前、騎士団を止めずに王命隊に入ったのは、例え左遷されても騎士は騎士、誰かを救える事もあるはずだ…。そう思っての事だった。


だが、この1ヶ月なにもなかった。これからも何もないかもしれない。


であるならいつまでも名ばかりの騎士でいるより、いっそ騎士団を去る。


そういう選択肢はアイリスの中にある。


だが、王命隊で日々を過ごす内に芽生えた思いもある。


それは、


「でも、負けたくないわ」


という思いだった。


「えーと……何に負けたくないの?」



ミリアの質問にアイリスは自身の考えを告げた。


「もし私が去ったとして、王命隊は変わらず何にしないと思うわ。隊長もルナさんもアルト君も変わらず森の中で引きこもったまんま。特にアルト君は私と同い年だよ。いつまでもニートやってないで、町に出ていくべきだと思う。同じ部隊の仲間として放っておくべきじゃないと思うわ」

「…………」

「もしこのまま王命隊を去ったら私は負けた気持ちになると思う。王命隊を止めるのは何時だって出来るんだから、やれるだけやって見ようと思うの」


ミリアは考えを聞いて素直に賛同出来なかった。


それは、ちょっと押しつけがましいんじゃないかとか。


やる気のない人の背中を押しても無駄なんじゃないかとか。


王命隊では、聞く限り、けっこうないがしろにされているのに、それなのにちょっとお人好しがすぎるんじゃないかとか。


そんな風に思って……、でもアイリスらしいなと思った。


騎士学校の時から、当たり前のように他人の事情に突っ込んで、当たり前のように手を貸すのだ。


それを、余計なお世話だと非難するやからもいたが。それで救われた人間もいたのだ。例えばミリアのように。


アイリスはちょっと荒れているけど腐ってはいない。今日のところはそれでいいだろう。


「そっか…じゃあ止めないよ」


ミリアはそう言い、


「うん。頑張るよ」


アイリスはそう答えた。


そのまま、食事も終わり帰宅する流れになった。


別れ道まで二人は並んで歩いた。


途中ミリアは聞いた。


「そう言えば、やれるだけやってみるって具体的に何をするの?」


「うーん……今日までは、敢えてみんなの前で剣を振っていたんだけどさ……」


「ああ、それ? でも意味なかったんだよね?」


「うん。だから新しい方法を考えたわ」


そして、アイリスはミリアに自身の考えた方法を説明した。


「………本当にそんな事するの? 無茶するね……」


「無茶は承知の上よ」

「そっか、じゃあ止めない。頑張ってねアイリス」


「ありがとうミリア」


そう言って二人は別れ道でそれぞろの家路についた。。


次の日の朝、アイリスは王命隊の舘の扉をくぐると開口一番、隊長に向かって言いはなった。


「隊長、決闘を申し込みます」

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