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06

「あのニートども! ニートども! ニートどもぉぉぉぉっ!」


アイリスは酒を飲みながら荒れていた。


同じテーブルに座っている少女がそんなアイリスをなだめている。


「まぁまぁ、アイリス落ち着いて。飲み過ぎだよ」


彼女の名前はミリア。騎士学校に同期で入学して、同じパーティーで迷宮を攻略し、同じ第一隊に配属された仲のよい同僚だ。


彼女とは時々、夕食を共にしている。それは、アイリスが王命隊に左遷されても変わらず続いている。


そんな仲であるからアイリスも遠慮なく、王命隊での不満をぶちまけている。


「飲まなきゃやってられないのよ! ほらミリアも飲みなさいよ!」

「………困ったなあ」


彼女はアイリスの荒れっぷりに言葉の通り困っていた。


ミリアはあまりお酒に強くないのだ。ちなみにアイリスも強くないので普段はこんなには飲まない。よほどストレスをためているみたいだ。


それにしても、


「噂通りの王命隊だねぇ…普通、噂なんてものは誇張されるものなのに……」

「誇張なんて1つもないわよ。奴らは噂以上のだめ人間よ!」


アイリスは断言した。さらにコップの中味を飲み干して続ける。


「百歩譲って存在感のない副隊長はいいわ。食事の用意とか掃除とか紅茶の栽培とか、それが副隊長の仕事か? って、そう言いたくなるけど働いているからまあいいわ」


全然良くない顔でそう言った。更にコップにビンの中味を注ぎ、一息で飲み干した。


「でもねぇ、隊長とパジャマはなんなの? なんなのさあれ? 毎日毎日、昼寝したり、遊んだり、飲んだくれていたり。働けって言ったら、ここにいる事が俺達の仕事だとか訳の分からない事ペラペラと……あれが騎士といえるの!? いいえ、断じて言えないわ! あれは騎士じゃない! ただのニートよ!」


いいながら、更にコップに注ぐ。


「ア…アイリス。もうその辺で……」


「大体、陛下も陛下よ、なんで、あんなのをのさばらせておくのよ!あんな奴らは有無を言わさず炭鉱送りにして朝から晩まで働かせればいいのよ!」


遂にアイリスの矛先が国王にまで及んだ。


ちなみに、今日の昼間に隊長と飲んでいた男が国王だとアイリスは知らない。


そして、空になったコップに、ビンからおかわりを注ごうとしてビンも空になっている事に気づいた。


即座にかわりを注文した。


ミリアが顔をしかめた。


「もうやめときなよ。お給料使い果たしちゃうよ」


そうは言ったが実の所、さほど高級なワインを飲んでいる訳でもない。本当に心配したのはアイリスの体調のほうだ。


ただ、ミリア自身が言った言葉が引き金となり疑問が出てきた。


それをアイリスに聞いた。

「そう言えば、王命隊ってお給料どうなっているの? 大丈夫? ちゃんと食べていける?」


ミリアにとって、というより世間一般にとって王命隊は左遷先だ。当然、給料も冷遇されるものだと思っていた。


だから、アイリスの返事がすぐには理解出来なかった。


「……ほぼ2倍になったわね」

「2倍? 何が?」

「お給料よ……第一隊にいたころに比べて2倍近い額をもらったわ」

「…………何で?」


ミリアの疑問にアイリスが事情を話した。


「私だって、もらったときに疑問に思ったわよ。普通は思うよね? 島流しにされて、毎日毎日、森の中。することも何もない。お給料が下がったって仕方がないってさ……」


だが、実際は逆だった。当初はアイリスはルナが間違った額を渡したのだと思った。(ちなみに王命隊の金銭の管理はルナの仕事だ。ブラッキーは例によって例のごとく何もしていない)


そこで、アイリスは正直にルナに申し出た所、王命隊の給料は他の隊よりも多いという衝撃の事実を知った。


ルナ曰く、


「王命隊は一応、国王陛下直属の部隊ですから、かなりの予算が振り分けられているのです」


そう説明されたアイリスはこれほど無駄な税金の使い道はない。と、そう思った。


そして、いまアイリスから事情を聞いたミリアもまったくの同感だった。


「ええ? じゃあ、パジャマのアルト君も同じだけもらっているの?」

「もらっているのよ……信じられない事に」

「それは、ちょっと納得できないなぁ……」


ミリアの言葉にアイリスが自虐的な表情になった。


「そうよね。日々真面目に働いている人達には、納得できない話よね。いいわ、好きなだけ罵ってくれてかまわないわ。給料泥棒、ごくつぶし、クズニート。どれでもよりどりみどりよ」

「いや、言わないし、アイリスが悪い訳でもないし」


そう慰めながらも、性格変わったなぁ〜と思う。


アイリスに憧れていた後輩達には見せられない姿だ。


ちなみにアイリスは異性以上に同性からもてる。


真っ直ぐな性格。剣を握ったときの凛とした立ち姿。そして実際の剣の腕。

それらが年下の乙女心を直撃するらしい。


その信奉ぶりはかなりのもので、アイリスが王命隊送りになっても、か弱い乙女を守る為の行為だったと解釈され、(実際その通りだが)多くの後輩がアイリスのファンを続けている。


そんな後輩達には見せられない姿だ


それはともかく。


ミリアはそれから暫くアイリスの愚痴を聞いていたが、意を決して今日アイリスに聞こうと思っていた事を聞いた。


「ねえアイリス……このまま王命隊を続けるの?」

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