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「ここで次の部屋が隣接するまで待機かな」


アルトは二人にそう言うと「休憩しよう」と座りこんだ。

アイリスとカトリーナも周囲を警戒しながらも腰を落とした。


「あと20分ぐらいはこのままかな」


「へーそうなんだ。すごーい」


アルトの言葉にアイリスはそう返したが、言葉に棘がある上に顔が明らかに不機嫌だった。


いま三人は12番目の部屋にいた。

あれから、アルトの先導によって、あっさりと最初の部屋にたどり着き、その後、進んだり止まったりしながら順番通りに部屋を通過していき、現在、約半分の所まで進んでいた。

迷宮内の部屋は一定時間ごとに配置を変えていた。その場所変えも一定の法則があるので、その法則を見抜ければ突破できる。

もっともアルトは自らの刻印の魔法を使って部屋の位置を把握しているので、正確な法則は把握してはいないのだが・・・。

最初はアルトの言葉を信じなかった二人も、迷宮を進むにつれ、信じていった。

と、同時に二人の機嫌も悪くなっていった。

あんまりにも居心地が悪いので、


「……なんだよ?」


と二人に問うと、


「別に、なんでもないよ」


「そうそう、なんでもありませんわ。とっくに謎が解けていたのに、私達が思い悩んでいたのを黙って見ていたなんて、死ねばいいのに…なんて全くそんな風には思っていませんわ」


「………思いっきりそう思っているんじゃないか」


アルトは呆れた顔でいった。


「ううん、全然そんなこと思っていないよ、このミノタウルスも食べられない軟弱者!」


「ええ、まるでそんな事は思っていませんわ。外れの外れの王命隊といえども騎士の端くれでしょうに、戦えもしない無能者!」


「カトリーナ、もしかしたらアルト君は実は戦えるのかもしれないよ。戦えるのに楽しようと戦えない振りをしているんだよ」


「なるほど、そうですわね。きっとそうですわ。また騙される所でしたわね。それでは次に敵が現れた時には先陣を切ってもらいましょう」


「ミノタウルスに突撃だ〜〜!」


「・・・悪かった。俺が悪かったから勘弁してくれ!ルナの命令だったからしょうがなかったんだ!できるだけ二人にやらせろって!この際はっきり言っておくけど、俺、魔法以外てんで駄目な上に戦闘向きな魔法なんて一個も持ってないからな、ミノタウルスどころかゴブリンにすら勝てないからな!」

アルトの必死に謝った。

その土下座せんばかりの勢いに押され、二人は矛を収めた。


「しょうがないなー。許してあげよう。・・・でもなんでルナさんはそんな指示を出したの?」


「さ・・さあ? 理由までは聞いてないだけど、あれでかなりのスパルタだから、俺の魔法でクリアするんじゃなくて自力で突破してほしかったんじゃね?」


アルトは嘘をついた。

これ以上自分の魔法について喋りたくない。

いや、正確にはアルト自身は自分の魔法をどうとも思ってはいないのだが、ルナからは軽々しく魔法を使ったり、吹聴しないように厳しく言われている。

その言い付けを破ってタダですむとは微塵も思っていない。

幸い、二人はアルトの魔法には注意を向けなかった。


「なるほど! 獅子は我が子を谷に突き落とすってことか! 生きて帰ったら『たたら突き・ 凪型』を撃ち込んでやるぜー」


「お付き合いしますわ。わたくし、彼女に出会ってからずっと気になっていたのです。彼女がああまで地味なのは、目を覆い隠す様な髪型にあるのでは?・・と。なので『炎塊』で彼女の髪を焼き払い、ついでにアフロヘアーにして差し上げる事で心機一転させてあげましょう」


「・・・・・・怖っ」


生きて帰ったら即座に部屋に引き籠もろう。アルトはそう思った。



その後も順調に迷宮探索は続いた。時折、魔物に出くわしてもアイリスとカトリーナの二人があっさりと排除した。

そして三人は25番の部屋にたどり着いた。


「到着〜!」


アイリスがはしゃいだ声で言った。

対してカトリーナは冷静だった。


「まえに通った時と変わりませんが、これからどうするのでしょうか?」


カトリーナがそう言った瞬間、部屋の中央が光り魔法陣が現れた。

三人はそれを見て納得した。

三人ともかなりの迷宮を突破している。この手の仕掛けは良く見ていた。


「きっと、選択の間行きの転移陣だね。私はベクトルを選ぶつもりなんだ。二人はどうするの?」


「マテリアル」


アルトが迷いなく言った。


「マテリアル? でもアルト君はオーラもベクトルも持っていないよね? もしかしてマテリアルしか選んでいない特化型なのかな?」


「そうだけど・・・悪いかよ?」


「いや悪くはないけれど、それじゃ百門突破者にはなれないよ。それとも、もうどっかの試練を失敗した?」


「いや、失敗はしていない。けど不老なんかに興味はねー」


「いや、それだけじゃないでしょ。百門突破者には武芸者の憧れと名誉があるじゃない?」


「なおさら、興味がねーよ」


二人がそんな会話を交わしていると、カトリーナが手を叩いて会話を遮った。


「二人ともそこまでです。まだ迷宮を突破した訳ではありますわ。おそらく、この先にボスが待ち受けています。目の前の事に集中しましょう」


「うん!」 「へーい」


二人は頷くと魔法陣に入った。

カトリーナも魔法陣に入り、全員が中に入ると魔法陣が輝き三人はその場所から消えた。

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