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「はあっ…」
アルトはウンザリした気持ちで目の前の光景を見ていた。
「カトリーナ!左よ!ぜったいこっちよ!」
「違いますわ!右ですわ!こちらが正しいですわ!」
「さっき、同じ事言って全然ダメだったじゃない!」
「そ…それはそうですけど、今度は間違いありませんわ!」
「どうだか? カトリーナって思い込んだら融通きかないじゃない」
「なっ! 考える頭のない脊髄反射女に言われる筋合いはありませんわ!」
「なんだとー!」
「なんですかー!」
アイリスとカトリーナが進路の事で延々と争っている。
「はあっ…」
アルトはもう一度ため息を吐いた。
正直な所、喧嘩するのも判らなくはないのだ。
すでに100回は部屋を通り抜けた。
25部屋あるのだから単純計算すれば、一部屋4回は回っている計算だ。実際、全ての部屋を少なくも一度は通り抜けている。
たが、いまだに二人は突破の糸口すら見つけていない。
部屋の数字いがい、ほとんど変わらない所を延々と進むのはメンタルにくる。
50を越えた頃から二人はギスギスしだして、今、こうなった。
まあ、元々は仲の悪い二人だ。
この流れは意外とゆうより、必然だったとゆう気がしないでもないが、それにしてもあの暗殺者たちの前でのお互いを思いやる美しいやりとりは一体なんだったのか?
などと、アルトが友情の儚さについて考えている間にも二人の口論はますますヒートアップしていった。
互いの意見を否定し合う段階はとうに過ぎて、互いの知能、互いの能力、互いの容姿など様々な事(迷宮攻略にはなんの関係もない)でいがみ合い、今では騎士学校時代の事に遡って言い争っている。
「カトリーナはー! 付き合う気もないくせにー! 男の子にー!これでもかってほど思わせ振りだったよね、この詐欺師!!」
「はあっ!? とんでもない言いがかりですわ!? 身の程知らずにも言い寄ってくる男性に丁重にお断りしていただけですわ!貴方の方こそ、マルグッテラドルコングのごとき本性を上手に隠して男性どころか女性までたぶらかしてきたでしょう!?」
「そんな事してないし!それに誰がマルグッテラドルコングよ!」
「貴方ですわ貴方!」
二人は飽きる事なく口論を続けている。
そして更に、
「よーし、もう我慢できない。カトリーナ、決闘よ。剣でどちらの意見が 正しいのか決めましょう」
アイリスが凄まじく馬鹿な事を言い出した。
「いいでしょう。貴方の愚かさを痛みと共に刻み込んであげますわ」
それにカトリーナがのった。
たまらずアルトは口を挟んだ。
「止めろ。馬鹿ども!」
突然の罵声に二人がアルトを見た。
「「へっ!?」」
二人がキョトンとした顔でアルトを見た。
そんな二人に呆れた顔でアルトは言い聞かせる様に言った
「ちょっと冷静になれ。只でさえ三人しかいないのに仲間割れしてどーする? 結果的に自分の首を絞めてるだけだろ」
アルトの正論に二人は苦いものを飲んだ様な顔をした。
そして、少しばつの悪そうな顔でお互いを見る。
「ちょっと熱くなったね、ごめんカトリーナ」
「私の方ほど、言い過ぎましたわ……」
それで、とりあえず喧嘩はお仕舞いになった。
しかし、だからと言って、迷宮の謎が解けたわけでもない。
カトリーナが切り出した。
「正直な所、私の方はまだ、糸口すら掴んでいませんわ。右に進もうとしたのも確信があるわけではなく、当てずっぽうに近いですわ、貴方はどうですの?」
「ごめん。私もおんなじだよ……」
そう言って、二人は沈みこんだ。
「このまま、謎が解けないとなると永久に迷宮内をさまよう事になりますわね」
カトリーナが弱気な事を言った。
「大丈夫だよ。実際にこの迷宮を突破した人達がいるんだから、何日でも、何ヵ月かけてでも突破しよう」
アイリスが強気な事を言った。
「何ヵ月って……まあ、そうですわね。そう覚悟しておけば動揺する事もありませんわね」
「でしょう」
アイリスは笑顔でそう言った。
そうして、二人は仲直りしたのだが、横で聞いていたアルトが疑問に思った。
問う。
「いや、その前に俺ら飢え死にするんじゃねえの?」
何の準備もなく迷宮に放り込まれたのだ。食糧など用意しているはずもない。
そんな、アルトにとっては当たり前の疑問だったのだが、二人には意外な質問だったらしくアルトの事を何をいっているのだろう? という顔をした。
アイリスが言う。
「何をいっているのさアルト君? これまで何回も出くわしているじゃないミノタウロス」




