表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/28

01

『騎士の国』、そう呼ばれる国がある。


クルルアルトは大陸の東に位置している国だ。


大陸では長く戦乱の世が続き、国の名が瞬く間に移り変わる時代だったが、クルルアルトはその名を不動の物としていた。


決して平和ではない時代、クルルアルトも数多の外敵と内乱に悩まされてきた。


その脅威から国の名と民を守ってきたのは国王率いる騎士団だと言われている。


騎士団は王都を守る第1隊、それぞれの地域を守る第2隊から第9隊、国王の護衛である親衛隊、情報を扱う情報探知隊、そして、それらを指揮する統括隊。


それらの部隊が時に協力し、時に競い合う事で長きに渡りクルルアルトの平和を守ってきた。


だがクルルアルトにはもう1つ部隊が存在している。


皆からクルルアルトの平和を守ってきたと呼ばれない部隊。


それが王命隊である。


王命隊はその名の通り王の命令を受けて動く部隊だ。まだ若かった頃の国王が造り、王命で動く時は国王と同等の権限を与えると明言した。


これだけなら、さぞや特別な部隊だと思うだろうが、実際、設立当初は誰もがそう思ったのだが、そんな考えは長くは続かなかった。


まず王命隊は人数が少ない。設立以後40年の歴史のなかで隊員が10名を超えた事など一度もない。これは少数精鋭を通り越し騎士団として成り立っていない。

次に、王命隊が王命を受けて動いているところを見た者がいないという事だ。設立から何年たっても王命隊が何かしらをやったという話はでてこなかった。


疑問に思った臣下が国王に王命隊の存在意義を問うこともあったが、返ってきたのは、


「別に国の治安を乱している訳でも、騎士団の動きを阻害している訳でもないのだから、良いではないか」


などという、日頃、名君として名高い男の言葉とは思えない程あやふやな言葉だった。


そして、更に何年か後に当時の情報探知隊の隊長が王命隊を危険視して、部下を王命隊に送り込み内情を探らせた。


国の内外を問わず、国を脅かす様な勢力を把握しておかなければならない彼には、正体不明の武装勢力など認められなかったのだ。もっとも僅か数人しかいない王命隊を武装勢力などと呼べるのか? と言う疑問は彼にもあったのだが。


それでも部下のなかでもとびきり優秀な人間を送り込んだのだが、その部下が3ヶ月と持たず根をあげた。


驚いた彼が部下に何があったのか問いただしたが、部下は死人の様な目で彼に言った。


「何も…、あそこには何もありませんでした…。私はもうこれ以上、無為の日々には耐えられない」


部下が言うには、王命隊は毎日が休日で、何の仕事もなかったらしい。


そんな日々に耐えきれなくなった部下が王命隊の隊長に「なぜ? 働きもしない部隊が存在しているのか」と尋ねたところ、王命隊の隊長は国王の幼なじみで今でもよく酒を酌み交わす仲なんだと言う答えが返ってきた。


要するにコネだ。


それ以降、王命隊はあってないような扱いをされた。また王命隊も他の隊に関わる事はなかった。


その状況は長らく変化しなかったが、8年ほど前に変化が訪れた。


統括隊の将校が気に食わない部下を王命隊に飛ばしたのだ。その部下はほどなくして騎士団を去った。


その件以降、たびたび懲罰として王命隊に人が送られ、そしてやめていった。


それ以前、空気隊などと揶揄されていた王命隊だったが、今では陸の孤島とかごみ捨て場などと呼ばれる様になった。


ちなみに、王命隊から元の隊に戻れた例など皆無である。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ