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『迷宮の掟』

一つ、この迷宮は一番の部屋から二十五番の部屋まで存在している。

二つ、部屋の配置はある法則にもとずき変化する。

三つ、一番の部屋から二十五番の部屋まで順を追って通過することが迷宮を突破する条件である。

三人は壁に刻まれた文字を見ながら各々、考え事をしていた。


一番最初に声をあげたのはアイリスだった。


「ようするに全ての部屋を通ればよいのね」


続けてカトリーナ、


「事はそう簡単ではないでしょうが、実際に行動して見なければわかりませんわ」


「私が先頭を勤めるわ。カトリーナが真ん中、アルト君が最後ね」


「ええ」


カトリーナは短く頷いた。実際にこのメンバーだと他に選択の余地もない。


「絶対に生きて返って……ぶん殴ろう」


「ええ」


二人は共通の目的の為にかつてないほど協力的だった。


「で、どっちに進む?」

アルトが聞いた


通路は東西南北4方向に伸びていた。


「……とりあえず、こっちで」


アイリスは自信なさげに一つの方向を指差した。


次の部屋は13番の部屋だった。そして同じように4方に通路が伸びている。

「2番じゃなかったね、戻る?」


「いえ、それでは非効率ですわ。それよりも時計回りに1番の部屋の周囲を回るほうがよろしいかと」


「なるほど。じゃ右ね」

そういって右の通路を選んだ。


そして、しばらく歩くと次の部屋があった。


やはり同じように4方向に通路が伸びていた。違うところは2つだけ。


一つは部屋の番号が21番だった事。


もう一つは敵がいた事だ。

ミノタウロス。二足歩行の牛の化け物は強い筋力を持っていて、それゆえ攻撃力も防御力も高い。


これは骨が折れそうな敵だとアルトが思っていると、


「はあっ!」


全身のオーラを一点に集約させた一撃がミノタウロスの両腕を切り落とし、そして、


「ふっ!」


切り返しの一撃でミノタウロスの、のどを切り裂いた。

そして、ミノタウロスが絶命しているのを確認すると剣を納めた。


「さあ、次の部屋にいきましょう」


そういって進むアイリスをアルトは微妙な顔つきで見ていた。


「確かにすげえけど……あんなやり方すぐばてるぞ……」

オーラをあれだけ集約させる事は全力疾走の100メートル走の何倍もの疲労がともなう。これからどれ程戦うか判らないのに序盤からこうだと、先がどうなるか?

そんなアルトの呟きに答えたのはカトリーナだった。

「あら? 同じ隊にいるのに知りませんの」


「何を?」


「アイリスの体力はマルグッテラドルコング並ですわよ」


「……」


マルグッテラドルコング。魔物の一種で凄まじいタフな肉体を有している。カトリーナの例えは非常にわかりやすかったのだが、借りにも10台半ばの美少女がそんなものに例えられるのはどうなんだろう?


そんな事を考えながら二人のあとを着いていった。


そして更に2つの部屋を越え、3つ目の部屋にたどり着くとアイリスは困惑した。


「どうゆう事?」

「さあ?」


カトリーナにも判らなかった。

二人が困惑しているのは部屋の番号だ。

13番……先程通った部屋だ。


「まだ一週回ってないよね?」


「ええ、いままで通った部屋は全て記憶していますわ」


二人が考え込んでいると、

「変化したんじゃねーの?」


と、アルトが言った。

二人が振り向いた、続けて言う。


「迷宮のルールにあっただろ。部屋の配置はある法則にもとずき変化するって…、だから部屋の配置が変わったんじゃねーの」


「……ある法則って……どんな法則?」


「さあ? それがわかればこの迷宮を突破できるんじゃね?」


アルトの言葉に二人は黙った。


少なくとも現時点である法則とやらは検討もつかない。

この迷宮を突破できるだろうかという疑念が二人を襲った。

それを、振り払うようにアイリスが首を振った。

「と、とにかく進みましょう。もっと情報を集めなきゃ…、生きて返ってルナさんをぶん殴るんだから…。一人一回として三回は殴るんだから……」

半ば自分自身に言い聞かせている言葉にカトリーナが乗った。

「そ、そうですわね、生きて帰ってあの女を殴らないと気がすみませんわ。もっとも私は最低でも10回は殴らせてもらいますわ」


そしてアルトは、


「…………勇者だなお前ら」


二人が聞こえない様な小声でそう呟いた。


そして、いくつかの部屋を越えた所でカトリーナが問いかけた。


「しかし、実際のところあちらはどうなっているのでしょう」



「どうって?」


「私達を迷宮に放り込んだ事で、とりあえず暗殺の危機を回避したとしても、戻った所を囲まれれば私達はおしまいですわ」

「でもルナさん暗殺者を全滅させるって言ってたけど…」


「可能だと思いますか?」

その疑問にアイリスは即答できなかった。


「……で、でもルナさんすごく強かったわ。もしかするとルナさんも百門突破者なのかもしれない」


「そうですわね、あの女はそれぐらいに強かったですわね…。ですが仮にあの女が百門突破者だったとしてもあのレベルの暗殺者を50人、相手にできるものかしら?」


「………」


アイリスは口を閉ざした。可能だと思わなかった。


「大丈夫じゃね」


口を閉ざしたアイリスの代わりにアルトが口を開いた。二人がアルトに顔を向けた。


「足手まといが3人居なくなったんだぜ、俺ならむしろ暗殺者どもに同情するね」


「あなたはともかく私達まで足手まといですか? 不愉快ですわね」


「べつにあんたが弱い訳じゃねーよ、ただ単にルナが化け物だってだけの話だ。まあ、どのみち外の事は俺らにはどうにもなんね。それよりも餓死する前に迷宮をクリアできそうか?」

「…………」

「…………」


二人は答えられなかった。

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