キラキラお茶会 2
案内された部屋には大きな姿見があり、その前に並んだ侍女たちがドレスやアクセサリー、化粧道具を手にほほ笑んでいる。
「ふふ、私とおそろいよ」
それは丘の上から見下ろした人間の国のどの少女たちのものよりも、ずっとずっとかわいく素敵なドレスだった。エクサはまるで夢でも見ているのかと思うほど、ただ呆然と立ち尽くす。
「これ、私のために……?」
「そう! きっと似合うと思って!」
侍女に手伝ってもらいながら、ドレスに袖を通す。いつもの木綿のワンピースと違い、なんとやわらかく優しい肌触り。淡いピンクは色白のエクサをより可憐に魅せた。
ピコのティアラと同じデザインのチョーカー、髪をアップにして薄く化粧を施すと、愛らしい姫君の完成だ。エクサは鏡の中の自分に驚くばかり。
「エクサ、素敵! 誰よりも可愛いわ!」
「ほんと……?」
もともと整った顔立ちなのだが、おしゃれとは無縁な生活、ましてや神父と少年たちでは気の利いた言葉など出てくるはずもなく。可愛いだなんて言われると、どうも気恥ずかしく落ち着かなかった。
「きっと、エルグも喜ぶわね」
「えっ!」
思いがけない名前につい声が裏返る。
「ななななんで、エルグがっ!」
「ふふ」
ピコも侍女たちも、何もかもお見通しと言わんばかりに不敵にほほ笑んだ。まったく、なんと素直で可愛いのだろう。
「……エルグは、お父さんだもん。というか、ときどき、お母さんだし。こんなドレスやアクセサリー、贅沢してって怒られる」
それに、こんな暮らしをしているのは、魔王を討ち損じた責任を取るためなのだから。無事に復活を阻止すれば、もう一緒にいる必要はない。
「自信を持って、エクサ。エルグはあんなだから口に出して言わないけれど、あなたのことを愛しているわ」
森の泉のような深い碧色の瞳に勇気付けられ、エクサの心が熱くなる。
「いい、エクサ? もしエルグが一瞬でも言葉に詰まったら、あなたを可愛いと思ったということよ」
試しにフェムトとメガにドレスアップした姿を見せると、なるほど、何も言わずうつむいて顔を赤くしていた。
ピコは残った菓子を土産に持たせ、もう一度「自信を持って」と励まし見送った。
「まったく……愛してもいない娘を、命懸けで守るお人好しなどおらぬよ」
女王がつぶやくと、侍女たちはそのとおりとうなずいた。