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青く澄み渡った空の下 3

 「おー、いいニオイだなー!」

 勢いよく窓が開き、明るい栗色の髪の少年が飛び込んできた。フェムトと同じく、耳の先が尖っている。エルフ族だ。

 「オレ、もう腹へっちゃってさー」

 「やだ、メガ! ちゃんと玄関から入りなさいよ!」

 「こっちの方が近いからなー。エルグさん、今日の晩めしは?」

 おとなしいフェムトとは正反対の快活な少年メガは、がたごとと騒々しく音を立てて席に着く。毎晩、決まって食事時になると現れる。

 「今日は魚のスープと、豆ときのこのサラダです」

 「ちぇ……肉はないのかー」

 本来ならば食べることのない肉だが、一度口にして以来すっかり気に入ってしまったらしい。

 「なによ、文句あるなら食べないでよ」

 「エクサ。意地悪なことを言ってはいけません」

 エルグは苦笑し、睨み合うエクサとメガ、そして困った顔で見守るフェムトの前に皿を並べた。温かい湯気と、ピリリと効いた香辛料の香りに、一時休戦、子供たちは声をそろえて「いただきます」と叫んだ。

 「んん、エルグさんの料理はンまいなー」

 「きのこは僕が採ってきたんですよ」

 「ね、ね、スープのおかわり、ある?」

 楽しく和やかな時間。このまま何事もなく二ヶ月が過ぎてくれるといいのだが。エルグは自身の心によぎる不安に気付き、いけないと首を振る。不安など、魔王に力をくれてやるようなものだ。

 「あ、そうだ。女王がさ、明日お茶会するから遊びにおいでって」

 「女王様が! やった、もちろん行く!」

 娯楽のないエルフの国で退屈しないように、女王はしばしば茶会や音楽会を開いてはエクサを城に招いた。エルグはその心遣いに感謝する。

 「じゃ、エクサ、フェムト、また明日! エルグさん、ごちそうさまでした!」

 腹が満たされたメガは来た時と同じように窓を開け、ひらりと飛び出し月明かりの森へ消えていった。優しい風がカーテンを揺らす。

 「楽しみだな、お茶会。エルグのお料理もおいしいけど、女王様が用意してくれるお菓子はかわいいし」

 「私がかわいいお菓子なんて作ると、気味が悪いでしょう?」

 それもそうかとエクサは笑う。

 「さあ、寝坊しないように、今夜は早く休みなさい。お祈りと歯磨きを忘れずに」

 「はい」と良い返事をして、エクサとフェムトはそれぞれの自室に戻っていった。

 一人になり、エルグはふとため息をつく。

 「あと二ヶ月……」

 窓に映る姿を見て、よくも化けたものだと可笑しさがこみ上げてきた。



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