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君が闇に堕ちるなら 2

 「エル……グ……?」

 「エクサ、よかった……!」

 もう離すまいと、腕に込める力を強める。伝わる温もり、たしかな鼓動。エクサもしっかりとしがみつき、広い胸に顔をうずめた。

 想い合う心が、エクサの秘めたる力を正しい方へと導く。エルグと傷付いた者たちは癒され、魔物は消え去り、壊れた世界はみるみるうちに修復された。

 『オノレ、人間メ……』

 エクサの身体からはじき出され、怒り狂う魔王が上空で吼える。

 だが、人々はもう恐れない。いつしか雨は止み、雲の切れ間より差す日の光が彼らを祝福するかのように。

 「姫さまが、我々をお救いくださった!」

 「勇者どのが、姫さまを魔王から守ったぞ!」

 憎むべき敵はただ一つ。武器をとり、エクサ達を守るように陣形を組んだ。

 「よお、ご両人。喜ぶのはまだ早いぜ」

 炎のような髪の女戦士テスラが、白い歯を見せて豪快に笑う。エルグはうなずき、斬魔の剣を握り直した。

 「エクサ、力を貸してくれ」

 「う、うん!」

 手を重ね、瞳を閉じ祈る。全ての力を注ぎ込むように思い描いて。

 『ココマデ来テ……後少シ、後少シデコノ世ヲ我ガモノニ……!』

 実体のない魔王は渦巻く雷雲に姿を変え、その力を蓄積する。ついに最大の稲妻がエルグとエクサに襲いかかった。

 「負けないんだからっ!」

 ようやく、暗黒の恐怖から解放されるのだ。エクサとエルグは呼吸を合わせ、剣を振るった。

 集う人々の想いも乗せて、流星のごとく光の刃が雷撃に撃ち込まれ、炸裂する!

 強烈な閃光、爆風、衝撃、そして……静寂。

 青く澄み渡った空には、一点の曇りもなく。人間もエルフも武器を捨て、ともに感動を分かち合った。

 「エルグのバカ!」

 「え、エクサ……?」

 「死んじゃったかと、思ったじゃない!」

 大きな瞳いっぱいに涙を浮かべて睨みつけられ、エルグはたじろぐ。

 「ふふ、エクサ姫は知らぬだろうが、エルグの剣は魔を斬るもの。ひとは斬れぬよ。なあ、エルグ?」

 「え? あ、ああ、はい。そう……です」

 エルフの女王ピコに助けられ、曖昧に返事する。まさかひとを斬ったことがなく、知らなかったとは言えずに。

 「その……君のいない世界なんて、意味がないと思ったのは本当ですよ」

 何よりも大切だと言った言葉に偽りはない。

 テスラが口笛を吹いて冷やかすと、みな勇者と姫を讃え祝福した。

 「さあ、お城まで送りますよ」

 フェムトが特大の光の輪を描く。


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