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権利サイト。  作者:
1/3

プロローグ:川尻浩一

初めまして。今回オリジナル作品としては初めて投稿します。

昔二次創作で稚拙ながらあげておりましたが、二次創作関連の問題で創作活動から離れておりました。

久しぶりの作品ですので、誤字やぐだぐだな展開などがあるかもしれません。

あまり更新速度は早くないかと思いますが、頑張っていこうと思っていますので温かい応援お願いします。

ドンナ権利ガほイシ?


スマホのブラウザに黒い背景に赤い血文字のサイトが現れている。

おどろおどろしい、と言うよりは、誤字と読み難さが合わさって雰囲気はぶち壊しで、小学生が作ったようなレベルの低さを感じさせるサイトだった。

スマホの持ち主である川尻浩一かわじり こういちはお気に入りのサイトを見て回っているうちに、子供騙しのサイトを開いたかとすぐにブラウザバックをしようとページの端を触る。

その時、川尻は自身が通う高校で最近に女子達が話していた噂話を思い出した。


『「権利サイト。」ってのがあるらしいよ。』

『何それ、法律の勉強でもしてんの?アンタには似合わねーって』

『違う、違う。そのサイトでは特別な「権利」が貰えるらしいよ。ってヒドくな~い』


うつぶせになって寝たふりをしている時に聞いた、どうでもいい噂話。

そう、噂話だ。頭の中身を生まれる前からどこかに落として来たような女子どもが話していた、ただの子供騙しの噂話。

それが今現実に自分の前にある。

川尻は「くだらない」と呟きつつも、そのウインドウを消すことなく、違うウインドウを開くと、スマホの電源を閉じて、朝の通学電車に乗り込んだ。




暗く、嫌悪感を催す臭いがする男子トイレの奥でサンドバックを叩くような低い音が響く。

同時に「うげっ」という腹から絞り出すようなくぐもった声が川尻の喉の奥から漏れ出た。


「ひひっ、かわじりくーん。今日も上納金出してもらえるかな~」


川尻の腹を殴った同級生が下卑た笑みを浮かべながら金の催促をしてくる。

いわゆるカツアゲ、いじめだった。


「…かひゅっ、ひゃらいはす、ははいますから…」


腹を殴られてうまく声を出せない川尻の様子を見て、先ほど腹を殴った同級生と同じ笑みを浮かべた数人の男子生徒達の一人が踞った川尻の腹に軽い蹴りを入れた。


「げふっ」


「かわじりっちよぉ、そこは「いいとも~」って返すところだろ~?ほら、もう一回」


「……い、いひと…も…」


川尻の苦しげな声に周りの男子生徒達は猿のような笑い声をあげた。


「さーて、戦利品はっと」


先ほど腹を殴った同級生は川尻のズボンの尻ポケットに入った財布を取り上げると、中から数枚の夏目漱石を取り出した。


「毎度あり~」


そう言って、薄くなった財布を踞る川尻の頭の上に捨てると、用は済んだとばかりに、他の男子生徒達を連れてトイレから出て行った。


いつものことだった。

そう、いつものことだ…。

放課後、逃げるように帰ろうとする川尻を、人数に任せて人気のない校舎の端にある男子トイレに連れ込み、金をふんだくる。

逃げれば翌日にリンチにあう。

教員は事件になるのを嫌がって、臭い物に蓋をするように見て見ぬ振り。

放任主義の親にこのことを言っても、お前が弱いのが悪いと言うだけだろう。


川尻の目に涙が貯まる。

悔しい。

川尻は暴力が嫌いだった。

喧嘩なんて嫌いだったし、争い事も嫌いだった。

ただ、波風なく平穏に静かに暮らしたいだけなのに…。

そんな日和見とも言える平和主義の川尻に目を付けたのが彼らだった。


「何の権利があってあいつらは俺の日々を侵して来るんだ……!」


川尻は自身の心の吐露から出た言葉にふと、気がつく。


「権利サイト。」


スマホの電源をつける。

そこには相も変わらず、どこかずれた血文字が表示されている。


ドンナ権利ガほイシ?


血文字の言葉の下には空欄があり、そこに入力ができるようになっている。


「誰にも邪魔されず平穏に生きる権利が欲しい」


口に出すと同時に打ち込んでいく。

打ち込み、決定を押すと、更新されると同時に画面が切り替わる。


ソコに出たのは、文字化けしていて先ほどと同じく恐怖よりもどこかずれた印象を受ける血文字で描かれた言葉だった。




ヨウこそ、権利サイト。へ。

オマえの権利はコち#二りな〼。


「ーー権」



「これが、ボクだけの権利…」


歓喜と同時に言葉が漏れた。







翌日、数人の男子高校生が学校でガス爆発に巻込まれて死亡した事件がニュースに流れた。

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