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タイムマシンの修理

まだ試し書きの段階です。ちゃんと物語が完成するかどうかも未定なのでご注意ください。

 それから、近藤と田中唯のふたりはタイムマシンの推進システムの修理に取り掛かった。素人の僕はそんなふたりの作業を邪魔にならないように黙って見ていることしかできなかった。


 何やらふたりは真剣な表情で黒い箱のなかにある部品を取り出して検分したり、あるいは何かドリルのようなものを使って穴をあけたり、溶接したり、またときには実験室にある巨大なよくわからない機械を使ってそこに電気を流したりといったような作業を繰り返していた。


 そんな作業を見ているうちに僕は眠くなってきた。何しろ昨日僕は田中唯の話を聞いて興奮して上手く寝付くことができなかったのだ。僕は研究室にあった椅子を並べて僕ひとりが横になることができるスペースを作ると、そこに横になって目を閉じた。すると、間もなく黒い空が僕の意識の上に降ってきた。


 僕は近藤と田中唯と一緒にタイムマシンに乗り、タイムスリップすることに成功した。


 僕たちがたどり着いたその世界は、巨大なシダ植物が生い茂る世界だった。


 気が付いたとき、僕はタイムマシンのなかにひとりきりで取り残されていた。タイムスリップするときに何かの加減で気絶でもしてしまったのだろうか。タイムマシンのドアは開き放しで、外の世界が見えていた。熱帯雨林特有の植物が見える。僕は恐る恐るタイムマシンから外に出てみた。


 すると、からみつくようなねっとりした湿度を持った大気が僕の身体を包んだ。かなり蒸し暑い。恐らく、三十五度以上はあるだろう。鳥の鳴き声が聞こえる。何か電気ノコギリの駆動音を彷彿とさせる鳴き声だった。僕は何万年も前の過去の世界をゆっくりとした足取りで歩き始めた。近藤と田中唯の姿を探して。


 一体ふたりはどこに行ってしまったのだろうと思った。いくら僕が気を失っているからといって、タイムマシンのなかに置き去りにするなんてあんまりじゃないかと腹正しく思った。おーいと、僕は叫んだ。どこにいるんだよ、と。


 しばらくそんなふうに歩き回っていると、遠くにふたりの人影が見えた。ちょうど木々の切れ間があって、その隙間に近藤と田中唯のふたりが仲良さそうに手をつないで歩く姿が見えたのだ。


 何だよ、と、僕は悲しい、傷ついた気持ちで思った。いつの間にふたりは付き合うようになったんだ、と。まあ、近藤は結構カッコいいものな、と、僕は自分の気持ちに言い聞かせるように思った。どうせ誰も僕のことなんて見てくれないさとふてくされた気持ちになった。


 途端に僕はふたりのあとを追うのがバカらしくなった。タイムマシンがある場所まで戻ろうと思った。そして僕が回れ右をした瞬間、強い振動を感じた。地面が揺れたのだ。


 地震だろうかと周囲を見回して、僕は息を呑んだ。体調十二メートルはあろうかと思われる巨大な恐竜が僕のことを見下ろしていたのだ。恐竜は僕と目があうと、この生き物は一体なんだろうというように軽く小首を傾げた。そして次の瞬間、恐竜は恐ろしい咆哮をあげた。僕を恫喝するように。


 僕は夢中で走り始めた。恐竜に背を向けて。恐竜に食われてしまうと恐ろしかった。冗談じゃないと思った。しかし、恐竜はすぐ真後ろに迫っている。僕が恐竜のその巨大な口に捕えられてしまうのは時間の問題だった。そのうちに僕は息が切れてきた。もうダメだ、と、僕は思った。その瞬間、僕の身体はまっさかさまに転落した。地面に穴が開いていたのだ。僕の身体は一瞬重力から解放され、次の瞬間、地面に激しく叩きつけられていた。


 と、そこで僕は目を覚ました。穴に落下したと思ったら、何のことはない、僕は寝返りを打って、そのまま横になっていた椅子から転落したようだった。ようする僕は夢を見ていたのだ。タイムマシンに乗って過去へ行く夢を。


「よく眠れたか?」

 と、頭上から声が降ってきた。見上げると、近藤が僕のことを見下ろしている。

「派手に落ちましたね」

 と、近藤の横に立っている田中唯も可笑しそうに口元を綻ばせて言った。


 僕は一瞬何がなんだかわからなかったけれど、やがて事態が把握できた。今、自分は近藤の研究室にいて、さっきまで僕は近藤と田中唯のふたりがタイムマシンを修理するのを見ていたのだ。


「なに?」

 と、僕は言った。

「タイムマシンは修理できたの?」

 僕の問いに、近藤は首肯した。

「タイムマシンの修理といっても、電力系統の修理だけだからなんとかった。といっても、電力系統の修理だけで果たしてちゃんとタイムマシンが起動するのかわからんし、確かめ見る必要はあるけどな・・」

 近藤は思案気な表情で続けた。


「でも、すごいよ」

 僕は近藤の科白に目を見張った。タイムマシンの修理が終わったということは、タイムトラベルを経験することができるのかと僕は興奮した。僕はそれまで床に倒れていた状態から立ち上がると、近藤の手を握った。


「いや、近藤はすごいよ。やっぱり天才だ」

 近藤は僕の手を迷惑そうに払いのけた。

「これから、田中さんのタイムマシンが置いてあるところまで移動するぞ」

 近藤はそれまで着ていた白衣を脱ぎながら言った。


 僕が説明を求めるように田中唯の顔を見ると、

「これから実際に修理したタイムマシンの推進システムがちゃんと起動するか実験してみるつもりです」

 と、田中唯は言った。

 

 僕は頷いた。そしていよいよこの目で本物のタイムマシンを見ることができのだと怖いような緊張するような気持ちで思った。


「ところで、その田中さんのタイムマシンはどこにあるの?どこか森のなかに隠してあるとか?」

 僕は歩き始めた近藤と田中唯のあとを追いながら声をかけた。

「都内の駐車場だ」

 近藤は歩きながら僕の方を振り返ると、煩わしそうに言った。

「駐車場?」

 僕はびっくりして言った。



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