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未来人の話 2

まだ試し書きの段階です。

 そのあと田中唯が僕に語って聞かせてくれた話は、とても本当のことだとは思えないような、驚嘆すべき内容だった。


 田中唯の説明によると、これから十年のあいだに、火星で様々な、信じられないような事実が次々と明らかにされていくことになるということだった。まず第一に火星には空気が存在し、豊かな水があるということ。乾燥した赤茶けた大地がほとんどを占めているが、しかし、部分的には植物が生い茂った緑豊かな場所も存在すること。火星には微生物はもちろん、生物も存在すること。かつて火星には知性をもった生命体が存在していたこと。その遺跡が火星のいたるところに存在すること。


「ちょっと待って」

 と、僕は田中唯の説明を遮って言った。

「僕の世界では・・・一部のオカルトを抜きにしてということだけど、かつて火星に豊かな水があったらしいことはわかってるんだけど、でも、それだけで、あとは何の発見もされてないんだ。今のところ、火星は二酸化炭素の大気に覆われた死の世界だということになってる。でも、それは間違っているということになるのかな?現在も火星に探査機を送って色々調べてるんだけど、田中さんが言ったような事実が見つかったというような報告は聞かないし・・・」


「それは情報が操作されてるんです」

 と、田中唯は事もなげに言った。

「実はもう既に早い段階でNASA、アメリカ政府は火星に人間が呼吸することができる空気が存在することも、生命が存在することもつかんでいたみたいですね。でも、それを公にしていなかったのは、それらの事実があまりにも現実離れしていて、とても一般のひとが受けいれられるようなレベルにはないと考えたかららしいです。もし、一度にこれらの情報が公になれば、その到底受け入れられないような事実に世界中がパニックに陥る、と、アメリカ政府、NASAは考えたみたいです。もちろん、これには異論があって、アメリカが知識を独占するためだったとか、何か深い意図があって伏せられていたとか色々言われてますけど」


「なるほど」

 僕は頷いたものの、まだとても信じられない気持ちで一杯だった。

「でも」

 と、田中唯は説明を続けた。

「これからの探査で・・といってもこれは表向きのことで、実はそんなことはとっくの昔にNASAは知っていたんですけど・・・色んな新発見があったと事実が小出しにされていくことになります。さっき言った火星に空気があることとか、生命が存在することとか、極めつけはかつて火星に知的生命体が存在していたこととか。そして最後に、我々は実はこれらの事実を早い段階で掴んでいたのだが、今までパニックに陥ることを恐れて発表していなかったのだ、と、公の場で説明が行われることになります」


「でも、どうして急にアメリカは真実を告げる気になったんだろう?」

 僕は不思議に思って訊ねてみた。


 僕の問いに、田中唯は自信なさそうに小首を傾げた。

「これ以上事実を隠し続けるのは難しいと思ったんじゃないですかね。宇宙開発競争が激しくなって、中国とかインドなんかも独自に宇宙船を飛ばせるようになってきていたし、ほんとうのことがわかってしまうのは時間の問題だった・・・で、あとで色々なことが発覚して非難されるよりかはということで、思い切って発表に踏み切ったんじゃないですかね・・・事実を小出しにしっていって、最終的には全ての事実を公にしてからの本格的な火星の探査を行っていくというシナリオを描いたんだと思います。実際に二千二十年頃に国際的なプロジェクトとして火星への有人探査の計画があって、それには今まで伏せていた事実を公にしたうえでの探査をする方が都合が良かった部分もあったんだと思います」


「なるほど」

「わたしの居る二千百年の世界においては、火星にはもう既にかなりの人たちが移住していて、実際に火星でひとが生活するようになっています。火星で知り合って結婚して子供を設けているひとも結構いますね」

「火星生まれの火星育ち。つまり火星人だ」

 僕は冗談めかして言った。

 田中唯は僕の言葉に少し口元を綻ばせた。


「二千四十年過ぎに開発された宇宙船の新しい推進システムのおかけで、火星はかつてに比べるとぐっと身近なものになりました」

「じゃ、結構みんな気軽に宇宙旅行ができる時代が来るんだ」

 僕はわくわくして言った。

「そういうことになりますね。だいたい二千七十年頃くらいには宇宙旅行が、今の時代で言う、海外旅行とそれほど変わらない感覚になります」


「すごいな」

 僕は言いながら自分が宇宙船に乗って火星へ向かっているところを想像した。

「じゃあ、田中さんも火星に行ったことがあるの?」

「何度か」

 田中唯は僕の顔を見ると微笑んで言った。

「すごい」

 僕は憧れるように田中唯の顔を見つめた。


「で、ここからが話のキーポイントになるんですけど」

 田中唯は一転して真剣な表情を作ると、改まった口調で話はじめた。


「火星人・・・かつて火星に存在した知的生命体ですね、彼からが残した遺跡の研究を続けて行くうちに様々な驚くべきことがわかってきたんですけど・・・彼らの文明はかなり高度に発達していて、どうやら宇宙船を開発して遠い銀河系まで出かけていくことができるくらいのレベルにまで達していたみたいなんです。当然、彼らは調査、研究のために地球にも訪れていて…彼らの文献によると…彼らが地球に訪れていたのは五十万年前くらいと推定されるんですけど・・・その当時の地球に、なんと、かなり進んだ文明を築いた人類がいたことが記されているんです・・これまでの定説では、人類が文明を築きはじめたのは一万年前ということになっています。ところが火星人の文献によると、一般的に人類が文明を築きはじめたと考えられているよりも遥か大昔に、かなり進んだ文明を持った人類が存在していたことになってるんです」


 僕は田中唯の、SF小説のような話にすっかり魅了されて何も言葉を発することができなかった。


「そこであるプロジェクトが立ちあげられました」

 と、田中唯は言った。


「タイムマシンで五十万年前の地球を訪れ、火星人の文献に書かれていることがほんとうのことなのかどうか確かめてみようというプロジェクトです。つまり、ほんとうに五十万万年前の地球に人類が築いた文明があったのかどうか、もしほんとうにあったのだとしたら、それはどういったものなのかどうか」


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