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ファミレスで2

まだためし書きの段階です。ちゃんと物語が終わるかどうか未定なので、ご注意ください。

「ところで、ずっと気になってたんだけど」

 僕は席に戻ると、ドリンクバーで汲んできたばかりのウーロン茶をストローで一口飲んでから言った。田中唯はなんでしょうというように僕の顔をまっすぐに見つめてきた。


「いや、もしほんとうにタイムマシンが発明されてるのなら・・・いや、もちろん、現にこうして田中さんが現れてるわけだからタイムマシンがあるのはわかるんだけど、でも、それにしてもどうして、今まで僕たちは田中さんみたいなタイムトラベラーに会ったことがなかったんだろうって思って」


 田中唯は僕の言葉の続きを待って黙っていた。僕はまたウーロン茶を飲んでから言葉を続けた。


「だって、タイムマシンが発明されているのなら、僕たちは田中さんみたいなタイムトラベラーにもうちょっと頻繁に会ってたっていいわけだよね?


 極端な話、自分は未来からやってきたっていう人間が名乗り出で、テレビとかに出演するようなことがあったっていいくらないのに、でも、そういうことはなくて。友達とかとタイムマシンは作られるのかっていう議論をすると、いつも決まってその部分で、タイムマシンなんて作られるはずがないっていう結論になるんだ。


 つまり、今まで誰も未来からやってきた人間に会ったことはないから、タイムマシンは作られることはないんだって」



「それは俺もずっと気になってたな」

 と、近藤も答えを求めるように田中唯の顔に視線を向けた。


「えっとですね、それは基本的に、未来からやってきたことを過去の世界で公にすることが禁止されてるからなんです」

 と、田中唯はなんでもなさそうに言った。


「一応、パラレルワールドということで、未来の人間が過去の世界に変更を加えたとしても、問題はないっていうことになっていますけど・・・たとえば親殺しのパラドックスですね・・・わたしが過去の世界に戻って、自分の親を殺したとしても、わたしが世界から消滅してしまうことはありません。ただ、そうはいっても、実際には何が起こるかわからない部分もあるんです。


 

 確かにわたしが過去に戻って親を殺したとしてもわたしは消えません。でも、それ以外の部分で何か影響があるかもしれないんです。わたしたちの世界でも、タイムトラベルというのはまだ確立されたばかりの分野で、色々未知数の部分が多いんです。だから、可能な限り、過去の世界に影響を与えるような行動は控えるようにしようという取り決めがなされています。


 

 自分が未来からやってきたと過去の人たちに告げることで、自分たちがもといた世界に何かしらの悪影響を与えないとも限らない。だから、通常、余程必要がない限り、未来からやってきた人間が自分が未来人であることを告げることはありません。またもしそんなことをしたとしても、信じてもらえないか、変人扱いされてしまうのがおちです。余計な注目を集めるのは避けたいところです。


 

 だから、タイムマシンというものが発明される前の世界で、タイムトラベラーの存在が知られることは基本的にはないはずなんです。また、原田さんたちが生きているこの世界が、未来のひとたちから見てそれほど魅力的な世界ではないということもその理由のひとつにあげられると思います。


 

 たとえば、第二次世界大戦が起こった時代や、恐竜が生きて動き回っている時代に比べて、今のこの世界は、わたしたちが生きている未来と比べてそんなに変化がない、インパクトがないんですね。だから、わざわざこの時代に訪れてみたいと思う未来人も少ないんです。従って、タイムトラベラーの目撃例とかも少ないんじゃないかと思います」


「なるほどねぇ」

 と、僕は田中唯の説明に納得して頷いた。田中唯の説明で、頭のなかにもやのように広がっていた疑問が晴れたような気がした。 


「確かに俺が未来人で同じ時間旅行をするなら、遠い過去の世界を覗いてみたいと思うかもしれないな」

 近藤は考え込んでいる顔つきで言った。


「まあ、ひとそれぞれですけどね。なかには両親が運命的な出会いを果たす瞬間が見たくてこの世界を訪れている未来人がいるかもしれません。だとしても、そういうひとたちはみんなの注目を集めることがないようにひっそりとこの時代に訪れているはずですから、一般のひとは気づきようがないんですよ」

 と、田中唯は微笑んで言った。


「・・・ただ、そうは言っても」

 と、近藤は腑に落ちないといように田中唯の顔を見て言った。


「過去の世界に影響を与えるような行為は控えるようにしようというルールがあったとしても、当然そのルールを無視する人間は出で来ると思うんだ。現に田中さんがこの世界を訪れたのもそれが原因なわけで・・・そういう場合はどう対処するんだろう?たとえば未来においてそういうことが起こらないように未然に防ぐための措置として、タイムパトロール的なもの、つまり時間犯罪に対するような機関は存在しないんだろうか?」


 田中唯は近藤の問いに難しい表情を浮かべて首を傾げた。


「・・・わかりません」

 と、田中唯は数秒間黙っていてからやがて口を開くと言った。


「少なくもわたしたがいた世界においてはまだそんな機関は存在していませんでした。何しろ、わたしたちの世界ではまだタイムマシンが発明されから間もないですからね。そういうことに対する問題意識が希薄な部分があるんだと思います。



 それに今のところタイムマシンが存在することは極秘扱いになっていて、誰もが簡単に時間旅行ができるわけではありません。基本的にタイムトラベルをするのは政府機関の厳密な審査をクリアした人間だけで・・・だから、通常であれば、わたしが体験したような時間犯罪は起こりえないはずなんです・・・というか、起こらないという前提のもとにわたしたちの世界ではタイムトラベルは行われているんです」


「でも、結果として、実際に、田中さんがまさしくその時間犯罪に直面している」

 近藤は田中唯に対して問題提起するように言った。


 田中唯は残り少なったコーラを飲み乾した。


「確かにそうですね・・・だから、わたしも近藤さんの言う通り、タイムパトロール的な機関は必要だと思います。


 といっても、正直なところ、わたしたちの世界においてそういう機関を作るのは難しいですね。時間旅行者を逐次監視して、何か起こりそうな気配、時間旅行者が何か違反行為をしようとした場合にすぐに駆けつけるというようなことは技術的に難しいと思います。基本的にタイムトラベラーのモラルに頼るしかありません。


 それに、今のところ、さっきはああ説明しましたが、理論上は仮に時間犯罪が起こったとしても、そっちはそっちこっちはこっちという具合でわたしたちの世界が影響を受けることはないはずですから…保障はありませんけど」

 田中唯はいくらか自信なさそうな口調で続けた。


「それに、田中さんが来た世界では無理だったとしても、田中さんがいた世界よりも更に未来の世界ではもっとテクノロジーが発達して、そういった時間犯罪を未然に防ぐための機関ができている可能性もあるよね」


「・・・いや、それはどうたろうな」

 近藤は僕の科白を否定した。


「自分で言い出しておきながらあれだが、もし、そういう機関が未来において設立されているのなら、田中さんが過去の世界で経験したような事態は起こらないはずなんじゃないのか?時間犯罪が起こったあと、もしくは起こる直前に、それらの機関が現れて何らかの行動を取っているはずなのに、今回そういうことが起こっていないことを考えると、未来においても技術的に難しいのかもしれないな」


「いや、でも」

 僕は近藤の意見に反論を試みた。


「未来においてそういった機関は確かに作られているんだけど、現在の警察みたいに完璧じゃないだけかもしれないよ」

 近藤は僕の意見に興味を惹かれたように僕の顔を見つめてきた。僕はウーロン茶をまた一口飲んでから言葉を続けた。


「つまり、タイムパトロールはそういった時間犯罪が起こらないように監視はしているんだけど、でも、色々技術的な問題とかかがあって、どうしてもカバーしきれないところがでてくるんじゃないかな。それで田中さんの場合がまさしくそれで、今回はたまたま時間犯罪が成立してしまっただけなのかもしれない。


 あるいはタイムパトロールというのは、時間犯罪が起こってしばらくしてからしか動けないだけなのかもしれない。もし、あのまま田中さんが過去の世界に留まっていたら、タイムパロールの人間がやってきて、田中さんとお兄さんを保護して、犯罪者を取り締まっていたっていうこともあるかもしれない」


 近藤は僕の言ったことについて検討するよう黙っていたけれど、ふと田中唯の方を向くと、

「田中さんはどう思う?」

 と、意見を求めた。


「あるいはそうかもしれませんね」

 と、田中唯は少しのあいだ黙っていてから口を開くと言った。


「わたしがいた世界ではまだ一般のひとが時間旅行を楽しむことはできませんでしたけど・・・もっと遠い将来であればそういったこともできるようになってくるでしょうし、そうすると、当然それに比例して時間犯罪が起こるリスクも高まってきますから・・・そのような機関がないと困るかもしれません



 ・・・というかそういった機関が存在するからこそ、わたしがいた世界で未来人が起こしたと思われるような不自然な歴史というものが見つかっていないのかもしれません・・・いずれにしても、確かめたわけじゃないので確実なことはわからないですけど」


「まあ、確かにそうだね」

 と、僕は微笑して言った。


「それに、ここでいくらこんな議論をしたとしても、田中さんのお兄さんを救うことはできないものね。とにかく、今、僕たちにできることをしないとね」


「そうだな」

 と、近藤は頷いた。そして近藤はもう議論の時間は終わったというようにそれまで座っていた席からおもむろに立ち上がると、レジのある方向に向かって歩き出した。僕たちも慌てて席を立つと、近藤のあとを追った。


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