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over.それから@future

最終回です。今までこの作品を見届けてくださった皆様、ありがとうございます。


連載完結につき、登場人物の回のネタバレ部分を消しました。


それでは最終回をお楽しみ下さい。

「まもなく3番線 列車が参ります ご注意下さい」

 電車のアナウンスとともに、轟音が近づいてくる駅。そして開いた扉に、これでもかというほど人が詰め込まれていく通勤ラッシュ。2016年9月1日は普段どおりの朝を迎えることが出来た。

 首都が木更津市であることを除けば、である。



「千葉新聞、1枚」

「100円です。あ、どうも」

 そして通勤駅ではキオスクに並んでいる朝刊が次々と消えていく。

 その日の各紙の一面を飾っていたのは、

『第二次小峰内閣発足 側近のみで固めた強力地盤政権』



 6月16日。あの忌まわしいクーデターの全てのプログラムがおわりを告げた日は終わったが、それから1〜2ヶ月は事実上政府機能が止まっていた。国会が無いためである。そこで小峰首相は国会を木更津市に再建することとした。各省庁も次々と一時的な庁舎を作っている。

「将来的にはまた永田町に戻ってこられるようにしたい」

 というのが小峰の意思だった。これが本人の心からの意思かどうかは分からない。あの永田町に小峰は本当に帰ってきたいと思っているのだろうか。



 そして8月31日、臨時国会が開会した。そして今日9月1日はニュースの山となってしまった。

 臨時国会開会、改憲党が民政党へ復党、そして小峰の再任。



 8月31日。国会衆議院議場。

「どうも小峰さん」

 綾葉が小峰に声をかけてきた。

「どうも」

「とりあえず政府見解は挙国一致内閣にすると」

「まあ、そのつもりですが改憲党が復党する今となっては必要無いかもしれません」

「総理自身の進退は?」

 小峰は少し考えたような顔をした。そして、

「それは皆さんに任せます。場合によっては末崎君や菊名君がなっても構わないかと」



 まずは小峰総理の事件の実情説明からだった。

 振り返れば長い話である。13日、原理党味議員により閣議室に内閣メンバーが閉じ込められる。次々と閣僚達が脱走、射殺される。14日、味内閣成立。閣議室から事実上解放され、参議院特別集会を開く。15日、味内閣総辞職。自衛隊による国会占拠。そして東京都に非常事態宣言、都民全員が避難。16日、終結。それをあの頃の自分に戻ったような感覚を味わいながら、説明した。そしてこのような事態が起こったのは内閣の責任であると謝罪した。

 そして首相指名である。

 結果は衆参ともに小峰が圧倒的大勝だった。首都崩壊後の処理も小峰内閣は担当することとなったのだ。

「これは……」

 小峰は第102代首相としての演説台に立った。予想していなかったことだ。

「とりあえず、信任してくださった皆様、ありがとうございます。新首相としてこれからの首都・政府機能の回復、事件の再発防止対策に努めてまいります。しかしあいにく自分が組閣することは想定外だったため、これより閣議室に戻って、人事を決めてゆきたいと思います。よろしくお願いします」

 すると綾葉が挙手した。

「綾葉豊一君」

 議長が指名する。小峰が演説台から降り、代わりに綾葉が立った。

「我々改憲党は小峰首相を全力で応援していきたいと思う。それにあたって本日付で改憲党は民政党に復党する」

 驚きの声が上がった。

「小峰総理に拍手!」

 議場が拍手の音に包まれた。



 あれから味は救急車で運ばれ、何とか一命を取り留めた。病状が回復し次第、裁判にかけられる見通しだ。既に安西副代表は起訴されている。

 小峰も一回、見舞いに向かった。その時、味は一つ頼みをした。

「総理、是非私の名前を内閣総理大臣一覧に入れてくれませんか。たった2日の内閣、クーデター内閣、名前だけ内閣、何とでも言っていい、でもそれだけしてほしい。せめてもの願いだ」

 そんな願い、聞き入れるもんか――などと小峰も当然に思ったが、そのうち味を可哀想に思えてきてしまった。性格が災いしたとしか言いようが無い。



 またその後、小峰の娘・菜々子は4月を持って私立高校の政経の教員になった。

「それでは内閣について説明します。資料集の……25ページを開いてください」

 資料集を開いた。そこの歴代内閣一覧を見て、菜々子は複雑になった。


『101代 味幹夫内閣 2016年6月14日〜2016年6月15日

在任日数最短の内閣。永田町ゲーム事件(→P.27)の最中に発足。小峰内閣在任期間中とする説もある。』


「クーデター事件は今までにほとんどありません。『二・二六事件』、『五・一五事件』、そして『永田町ゲーム事件』。この永田町ゲーム事件は、首謀者が計画段階で『永田町ゲーム』と呼んでいたことが名前の由来ですが、単純に『六・一三事件』と呼ばれることも……」




「綾葉さん」

 議事終了後、小峰は閣議室へ向かう途中で声をかけた。

「本当に私が首相でよかったのでしょうか」

「あなたしかいまい。それにこの事件が起こった原因を自分だと認めるなら、これからの処理も責任を持って行うのが筋というものでしょう」

「そうですね」

 やる気に満ちていた。

「政治はゲームなんかじゃない、いつかそう言ったそうじゃありませんか」

 綾葉の顔が意地悪な笑いを浮かべている。小峰も思わず笑ってしまう。

「ええ、たしかに」

「あんな酷いゲーム二度と起こさないよう、頑張っていきましょう。ゲームだとしてももっと幸せに満ちたゴールが待っているゲームに」

「ええ」

 閣議室に入ると末崎、そして尾崎が既に待っていた。

「総理、再任おめでとうございます」

 末崎のその言葉に、小峰は微笑を返す。そして、

「総理、戻って参りました」

 尾崎がその言葉を言うと、小峰は尾崎と抱き合った。尾崎の目から涙が出る。小峰は涙をこらえながら、そして笑顔で、

「よし! それでは新人事を決めるぞ!」

ご読了ありがとうございました。



またしても滅茶苦茶なオチですが、

「永田町ゲーム」

中編第2弾、完結しました。

皆さんからするとどうか分かりませんが、今までの中で一番楽しく執筆することができました。また連載中の励ましのお言葉ありがとうございました。



ご読了された方は、ご意見・ご感想を是非お願いします。まだまだ未熟な作者はアドバイスが必要です。二言、三言で結構ですのでどうかお願い致します。



それではまたの機会に。佐乃海テルでした。

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