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LongRunner A

作者: fai

この物語はフィクションです。

   0



 もし…。

 もし私を、私より上の次元から見る事が出来る人が居るのならば、私の事を幼稚だと思うだろう。

 きっと私を分かる筈もない。そして私の上に立つのだから、私を永遠に理解出来ず、私を必ずや見下す。見下し、嘲り、浅く見据え、一番最初に浮かんできた感情を元に、私に否定的な意見を持って、すぐにここから立ち去ろうとするよね。

 だけどそんなあなたに私は敢えて聞くよ。


「お前は一度でも私を理解しようとしたのか?」


 ここまで聞いて、立ち去るのなら、私は何も言わない。だけどすぐに立ち去ろうとしたならば、


 今度は私がお前を見下す。


 お前が私を矮小な存在とする限り、お前は私にとって矮小な存在なんだよ。

 それぐらいわかれ。キモ過ぎんだよ、お前。



   ?



「それでは、帰るときにまた寄りますので。」


 そう教師に挨拶をして、職員室を出る。


 私達とは縁がないのに、事が事だけに対応は優しい。いつも私達の我が侭に未だに対応してくれている事は本当に感謝している。


 そしてまた一年ぶりにこの階段を昇る。


 少し早めに家を出たとはいえ、もしかしたらもうみんな来ているだろうか。

 流石にみんなで今年で最後にしようと決めていたから、この場所に来れなくなるのは、正直辛い。

 懺悔をするなら、この日この場所でしたいから。


 そして改めて思う。



 そうか。もうあれから十年か。



   1



 夜、道を歩く。


 出来るだけ街灯の無い道を、人気のない道を選ぶ。

 たった一人、当てもなくふらふらと夜道を行く。

 照らされることのない、見つかることのない時間。


 こんなことをしても、何も変わらないのに…。


 私は馬鹿だ、こんなことしか出来ない。


 こんなことでしか、自分を表現出来ない。


 ―――――遠い正面から、車が走ってくる。


 しかしそれでも、私は簡単に照らし出される。

 私はこれほど望んでいるのに。これほど、これほど…。


 ―――――徐々に、その瞬間が近づいてくる。


 分かってる。単に幸福を拒否する事で、私で居ようとしている事も、本当は照らして欲しい事も、いつか見つけ出して欲しい事も、全部分かってる。


 ―――――痛々しい光りが、私に当たる。


 だから、私は多少の皮肉と確かな感謝の意を込めて、何も言わぬ自動車のライトにこの言葉をそっと送る。


 ―――――今日は、最後の一歩を、踏み出せるだろうか。


 ありがとう、と。



   2



 階下の喧騒で目が覚める。目覚まし時計の時刻を見ると、いつもの起床時間より若干早い。正直、もっと寝ていたい。

 どうやらまたあの二人が一階で言い争いをしているようだ。受験間近の私に、気遣いというものはないのだろうか。


 まぁ今に始まった事ではないのだけれど。いつも通りだ。

 そう、いつも通り。


 ―――――いつも通りうるさい。


 いい加減に離婚すればいいのに。


 ベッドから起きあがり、早々に着替えを済ませ、一応、性別上は女なので身嗜みを軽く整え、自室を出て、階段を降り、洗面所で手早く歯磨きを終わらせ、居間にいる二人に挨拶も交わさず、玄関でいつも通りに靴を履く。


 こんな状況で誰がどうゆったりとした朝など過ごせようか。


 ―――――私が髪を短くしているのは、お前らが一因になっているんだよ。永遠に気付かないだろうけど。


 玄関を開け、家を出たところで私の目覚まし時計のアラーム音が聞こえたが、私は足早にその場を離れた。当然だ。

 これが私にとっていつも通りの朝。


 何て事はない。



   3



 いつもの通学路を通り、いつも通り学校に着く。今日は家を出るのが早かった為、その分早く着いた。それだけがいつもと違うところ。

 だけどそれだけで、いつもの日常から放たれた気がして少し心が晴れた。


 下駄箱で靴を履き替え、教室まで歩き、教室のドアをいつも通りにスライドさせる。


 ドアを開けると、何故か数人の女子が窓際に集まっていたが、私を見ると蜘蛛の子を散らす様に各々の席へ戻っていった。私もいつも通りに席に着く。


 私が来た事で、何か彼女達に不利益な事でも生じたのだろうか。

 とりあえず思い当たる節を探す。


 あぁ、なるほど。


 あの子に対するいつもの嫌がらせは彼女達がやっていたのか…。もしかしたら私の思い違いで、彼女達は単なる第一発見者に過ぎないかもしれない。

 でもその事実はどうあれ、窓際に在るあの席には非常理な言葉が机一面に散りばめられている事実は違いない。きっとそこには稚拙美など微塵も感じられない。


 いつでもそうだよね。みんなそう。


 いつも誰かと共感したいが為に、簡単に他人を貶し、排他を起こすよね。最初は陰口で済み、やがては公言するようになり、そして行動に現れる。彼女達はいつか未来で、過去の自分達の行動を後悔するんだろうか。


 きっとしないだろうな。その理由が、必要が、ないから。


 ―――――情けない。変わらない貴方達も。変わらない私も。


 あぁ、やっぱりいつも通りなのだと、私はそう思った所で、眠くなって机に突っ伏した。



   4



 ホームルーム開始のチャイムで目を覚ます。

 お決まりの起立、礼から始まり、担任の先生が伝達事項を言う。


 私は例の窓際の子に目を移す。私の席からは彼女の背中しか見えないが、彼女は今どんな表情をしているだろう。どんな感情を抱いているのだろう。


 クラスのどこからともなく、小さな笑い声が聞こえる。

 それがもし、彼女に対する嘲笑でなかったとしても、私にはそうとしか聞こえない。そしてこれらは必要以上に私の体の隅々を這いずり回ってくる。


 ―――――気持ち悪いよ。


 だけど私は他人が何も言わずとも、胸を張って助けてあげる様な、お人好しほど傲慢ではない。そういう存在には成りたくない。


 もし、私でも他人でもいい誰かが、彼女を助けたとしよう。


 その誰かが、周りの人に彼女を傷付ける事はしないよう、声を大きくして言ったとしよう。それで彼女を傷付ける様な少人数の人間から、それ以外のクラスのみんなが、彼女を守るようになったとしよう。

 その結果はどうなる。


 助けた時点で、彼女は単なる弱者として扱われるだけだろうが。


 彼女はみんなが守るべき存在?かわいそうだから愛しましょう?


 ―――――違うだろ。


 そんなんでいいの?そんなんでみんな満足出来るの?そんな光景を毎日見るのをみんな耐えられるの?


 …そう考える事自体、烏滸がましいのかもしれない。


 どうやら私は、彼女を救ってやれそうにない。


 ただ、彼女が声にすれば、話は違ってくると思う。


 分かっている。それがどんなに困難な事かを。

 それでも出来れば、私はそれを希望する。


 結局は、私も下らない存在だ。



   5



 ホームルームが終わり、授業が始まる。

 ノートを取る作業に没頭しているときは、ある程度悟られないから良い。表情に出てしまっても、どこぞの猫と同じで観測されなければ、誰も私の事など決して分からない。

 しかしなんと皮肉な事か。激務に追われている方が平静を保てるとは。ついでに眠気も襲ってこない。


 一時間目、二時間目、三時間目と続き、四時間目の授業が終わり、昼休みを迎えても私の心が晴れる事は無かった。


 ―――――まぁ、いつも通りなのだけれども。


 そしていつも通り屋上へ行こう。そこにはいつも通り彼が居て、いつも通りに私と接してくれるだろう。

 そうして席から立ち上がろうとしたところで、このクラスでは、割と私と仲の良い方に分類される女子に声を掛けられた。

 どうやら四時間目の授業の内容を、書き逃した為、私のノートを貸して欲しいらしい。

 屈託のない笑顔でそれに受け答えする私。

 彼女は感謝の言葉を述べ、ノートを手に取り明るい表情と軽い足取りを撒き散らしながら、私の席から離れていった。


 今度こそ席を立ち、教室を出て、廊下を歩く。


 あそこでもし、私が暗い表情をしていたら、彼女は私を救ってくれるだろうか?

 おそらく彼女ならば、いや、多くの人は心配して私の話に耳を傾けてくれるだろう。一緒に考えてくれるだろう。


 でも、結局はそこまで。


 話を聞いただけで、自分はその人の為に善い事をしたと、そう勘違いする。話を聞いただけで、その人の事を理解したと、そういう勘違いをする。

 そして次から私がそういう表情を出す度に、愚かにも目障りな言葉を発してくるだろう。もう一度その気持ちに浸りたいが為に。


 大丈夫?


 ―――――ふざけるな。


 私にも同じ事が言える。確かに話をする事で、この胸の内に在る、くそったれな思いを幾ばくか垂れ流す事で、多少はすっきりする。でもそれをしたところで、どうなるというの?

 この思いはそう簡単に失せる物ではないし、簡単に理解して貰えるものでもない。


 まさか毎日毎日、自分の為だけに、他人を自分専用の便器代わりに使えとでもいうのだろうか。


 ―――――笑えないよね。


 そこまで私は出来た人間に成れそうもないし、ましてやそこまで偉くもない。


 そう、鬱ぎ込んでいる自分など、いらない存在。


 でも所詮、気付かぬ所で誰かは誰かの便器となり、ならなければならない時がある。認めたくないけど、認めなければならないのも確かなんだ。


 その事実が、私をより一層眠りへと埋もれさせる。



   6



 廊下を歩いていると―――もう昼食を摂り終わったのだろうか―――数人の男子がボールを手に取り、私を抜き去っていった。

 彼らは皆、楽しそうにはしゃいでいた。

 逞しいなと、正直、そう思った。彼らと私は、今、まさに同じ時間を過ごしている。彼らは現実を堪え、前向きに生きているけど、私はただ、現実に打ち拉がれている。

 人一人が体験する事など、ごくありふれた、良くある話でしかないのに、私にはそれが出来ていない。

 彼らと私とでは住む世界が違うわけがないのに、私も彼等と同じように生きられる筈なのに、彼らと共に居られる自信が、今の私には無い。


 ―――――そこで生きる意志自体、そんなにないのだけれど。


 彼らが、階段を下りていくのに対し、私は一人、彼らを見下ろしながら階段を上っていく。


 私は結局、自分を卑下している様で他人を見下して生きている。自分にはそこまでの価値がない、他人より自分が駄目、自分がいけない、自分が悪い、そう自己陶酔し、結局特別扱いをしている。そういう物の考え方をしている時点で、他人と共生する気がない。

 私は特別、彼らとは違う。何と滑稽な事だろう。

 でもその自己陶酔で私は生きている。私は生きる事ができる。私は、それしか生きる方法を知らない。


 ―――――生かされているのかもしれないけど。


 階段を上り終え、屋上へと続く金属の扉の前に立つ。

 鍵は掛かっている、が、彼はいつも通りに居るはずだ。この扉は、内側からも外側からも鍵の開け閉めが出来る。何故か合い鍵を持っている彼ならば、鍵を開け、扉をくぐった後に、また鍵を掛ける事が出来る。


 扉を足で三回蹴る。私が来た合図だ。


 数秒待つと、足音がこちらへと近づいてきて、扉の前で止まる。

 鍵が開いた音が聞こえ、私はノブに手を掛け、扉を開く。

 この重い扉を開ける度に毎回思う。この先は私の安心できる場であり、私を更なる深みに誘う泥沼であり、やはり結局は単なる現実の延長線上なんだと。

 そして彼の笑顔のお出迎えで、私の昼休みは始まる。



   7



「いつにも増して今日は顔つきが重いね。」

「いつもの事だよ。」

「いつも通りかー。」

「そ、いつも通り。」


 いつもの場所に二人並んで座る。彼は今日もいつもの様にポケットの中からお菓子を取り出す。今日はアーモンドチョコのようだ。彼はその内の一個を口に含むと、いつもの様に私に箱を差し出してきた。

「食べる?少し落ち着くよ。」

 私は少し考え、同じくその内の一個を口に含んだ。

「それでいいんっすよ。」

 彼は笑顔でそう答えた。正直食べたくも無かったが、以前断ろうとしたとき彼は言った。


「幾らでも食べて良いんだ。僕の偽善も、僕の自己満足も。この世の中には幾らでも食べて良いものがあるし、よりおいしい君の偽善と自己満足へ幾らでも料理する事が出来る。飽きて一旦食べるのを止めて、お腹が減ったらまた食べるのも全然構わない。だけど、ずっと食べないという選択肢は存在しない、してはいけない。あったとしてもそれを選ぶ事は許されない。絶対に許されない。それがどんなに口に合わなくても。分かってるんでしょ?」


 反論出来なかった。


 数度、口の中にある甘い物を咀嚼し、飲み込む。もう私には、口に含む物が無いため、膝を抱えて黙り込むしかない。

 そして彼は相変わらず卑怯極まりない。彼は一粒一粒、ゆっくりと食している。彼は待っているのだ。沈黙に耐えきれなくなった私が語り出すのを、いつも通りに。


「………」

「………」


「何で…」

「………」


「何で、頑張らなきゃいけないんだろう。」

「………」


「世の中は、こんなにも諦めてしまう要素で溢れかえっているのに、満ちているのに、何故なんだろう。何で…。」

「………」


 ―――――なんで、私は、まだ………。


 そう、私は常に矛盾している。

 矛盾している存在が幾ら考えを、思いを巡らしたところで、何にも成らない。そもそも矛盾してない人なんて居るのだろうか。矛盾自体は、みんな感じ取っている筈なのに。その矛盾を口にする事は、何故か一般的にタブーとされていて、声に出せば出す程、おかしな人として扱われる。


「………」

「それじゃあ…。」


「…何?」

「とりあえず初めてみる?そこからさ。」


「………」

「………」


 徐々に眠気が襲ってくる。

 そんな中、風が私の体を撫でる。風が私の体を覆う。いっそのこと誘われたいよ。いっそのこと攫われたいよ。


「…なんで出来ないんだろう。ずっと誰かに背中を押されたがっているのに。なぜか自分からは出来ない。人自体にそういう風に刷り込まれているのか、私が現実を知らないだけなのか、思いが足りないのか。ホントは私が出来ないの、分かって言ってるでしょ。」

「うん。それに自分と同じ様な人が減るのは寂しい。けれども自分と同じ様な人が身近にいるのはもっと辛い事だよね。」


「自分勝手過ぎ。少しは何か気の利いた言葉とか出ないの?」

「言って欲しいの?言えと言うの?この僕に?」


 彼の珍しく少しだけ強い口調に、私は少し驚いた。


「………ごめんなさい。」

「君は既に分かっている筈なのに。誰かにどんなに尽くされようと、誰かにどんなに信じて貰おうと、それらよりも今の状況を強く望んでいる。今、こうして望み通りに何もかもが在るというのに、それ以上何を求めるの?」


 私を見ながら、彼は私の心を切り刻んでいく。


「………」

「おまけに求める事は悪い事だと自分の中で勝手に決めつけて、でも欲だけは日を追う毎に蓄積して、行き場のない感情は毎日毎日くすぶり続けて、そしてその全ての原因は自分にあって、求める事を許していないのも自分じゃない?」


 だけど、


「………」

「………ごめん。」


 今度は彼が謝った。


 私は一つの疑問が浮かんだけれど、それを口にする事は怖くて出来なかった。


 ―――――それは君の事なの?


 いつもそうだ。彼が言う言葉は、私に向けられた言葉のように感じられなかった。


 きっと彼も、背中を。



   8



 昼休みが終わるチャイムが鳴り、彼と軽い挨拶をして教室に戻り、席に着く。

 彼は不思議だ。他の人には無い、何かがある。優しくはあるが、簡単に同調を許してくれないような厳しさを感じる。もしかしたら彼は私に合わせてくれているのだろうか。分からない。

 いや、私は彼の事を分かろうとする気が無いのだろう。そもそも誰かを分かろうとした事なんて、私には一度だってない。誰かの事を分かろうとするのは、自分には許されない。なぜなら、私は、私の事を分かって欲しいなんて思わない、思いたくないから。


 ―――――私はいつまでもこのままで在りたい。そして…いつか…。


 色んな事を考えているとまた眠くなってきた。


「ねぇ、今大丈夫?」


 思いがけない一言に驚き、私は顔を上げる。



 次の瞬間、


 教室の風景は跡形も無く消え去り、


 代わりに黒い風景が延々と続き、


 そして私の目の前には、


 やんわりとした光を持った、


 大きな球体が浮かんでいるのが見え、


 不思議とその光景に違和感は無く、


 引き寄せられるように、


 その大きな球体に手を伸ば

「もしもし?」


「あ、大丈夫。」


 二度目の呼びかけに、私はようやく返事をした。

 何故一度目の時に返事が出来なかったのか、分からなかった。

 何か理由があって応対出来なかった筈なのに、その理由を忘れてしまっていた。


 私に声を掛けた人物を見ると、どうやら先程貸したノートを返してくれるようだ。


「昼休みのうちに自分のノートに写しておいたから返すね。ありがとう。」

「いやいや、助けてあげられたのなら良かった。どういたしまして。」


 たまに不安になるのは、ちゃんと笑顔で受け答え出来ているだろうかという事。


「そういや、隣のクラスの子と、良く屋上行っているよね。」

「え?あぁ、うん。そうだけど…。」


 また思いがけない一言に、再度驚く。

 咄嗟の事とは言え、肯定してしまって良かったんだろうか。少しだけ彼に申し訳なくなった。

 それよりもなんで屋上とまで言えるのだろうか。一応さり気なく行っているつもりなのだけれども…。


「もしかして…、割と知られてる?」

「あぁいや、ただ単に彼の家が私の家の隣だから、彼の事に少し目が行くだけ。」


 彼女の言葉に、少し安堵した。余り変な噂を立てられても困る。


「あ、安心して。別に彼との関係を勘繰ったりはしないから。」

「ありがとう。」


「ただ…その…。」

「ただ…?」


「彼、夜中に一人で出かけたりしてて…。何て言うか…、危なっかしい所があるから、少し注意して見てあげて欲しくて…。」

「…。分かった。」


「お願いするね。」

「優しいんだね。」


「そう?普通の事だと思うよ。」


 ―――――普通ってなに?


 そして五時間目のチャイムが鳴った。


 簡単な別れの挨拶をして、彼女は去っていく。普通の人だったら、あそこで照れるのだけれど、彼女はあんな事じゃ照れない。そんなところに、大人っぽさを感じる。

 彼も不思議だが、彼女も不思議だ。

 彼女は所謂人気者で、他人に嫌がられない明るさを持っていて、私とわざわざ仲良くしなくても、他にいくらでも友達は居るのに、私と仲良くしてくれる。


 それにしても大丈夫?なんて、簡単に他人に言わせてしまうとは…。

 また自分が情けなくなった。



   9



「住む世界が違う?そんでまた自分を特別扱いか?」


 目の前が歪んでいる。


「結局は他人を見下しながら生きているんでしょ?下に位置する人間ほど、安心したくて下を作る。分かってるんでしょ?」


 目の前が歪んでいるのではなく、自分の感覚が歪んでいる。


「君はさ?結局は優しい人が苦労するだとか、自分は努力している方だと思うのに報われないとか、どっかにそんな考えがない?」


 動けない。苦しい。


「それはさ、単に君が自分は優しいと思いたいだけで、自分は努力してるって思いたいだけなんだよ。」


 視界が、思考が、ただただ回る。


「君は自分の醜さには目もくれず、それを他人に押しつけているだけなんだよ。」


 解放されたい。


「ホントお前は真剣に生きた事も無い癖に!口だけは達者だな!いい加減お前の言葉には重さがないのに気付いたらどうだ!」


 私だって、本当は…!



 次に私の意識に飛び込んできたのはチャイムの音だった。


 ようやく、六時間目の途中で寝てしまった事に気が付く。時計とノートを見る限り、寝ていたのは十分程なのに、もっと寝ていた様な感じがした。

 幸い、寝てから今まで、大して黒板に板書されていなかった為、授業の内容をほとんど取りこぼす事なく、授業を終える事が出来た。


 やがて帰りのホームルームも終わり、下校時間となった。


 今日は塾もなく、学校や帰り道で特にやる事もないのですぐさま帰る事にする。

 帰ったからといって、特にやる事もないのだけれど。


 まだ少し寝ぼけているようで、持って帰らなければならない物と、持って帰らなくてもいい物との判別を、のらりくらりとしながら、鞄に荷物を詰め込んでいく。


 自分の周りの席の友人達が、私にさよならの一声をかけては、各々が部活やら習い事やら帰宅で教室を後にしていく。


 ぼんやりと、そんなクラスを眺めていると、すぐにでも私は一人になった。

 私も出よう。そう思い、立ち上がって、私も教室を出た。ふと振り返って、誰も居なくなった教室を見た後、私は一人、歩き出した。

 一人か。でも人は独りじゃない。断言出来る。どんな状況にあっても、人は決して独りじゃない。

 分かっているのに。眠くなりながらも何度も考えて、やはりそうなのだと自分の中で何度答えを出しても、そう考えると、何故か涙が出そうになる。

 なんで独りは駄目なの?許してくれないの?貴方は貴方、私は私じゃないの?なんで誰かの助けが必要なの?なんで誰かに認めて貰いたくなるの?なんで独りじゃ生きられないの?


 ―――――なんで私を構成するものは私じゃないの?


 眠くなる。


 考えは加速する一方で、体は脱力に支配されていく。

 廊下を見回すと、みんな思い思い歩いているのに、そんな中、私だけが歩くのを辞めたくなる。倒れてしまいたくなる。

 自然と歩くスピードが遅くなってしまう。

 眠くなる。目を閉じたくなる。


「わっ」

「っぷ」


 突如何かにぶつかって、私はバランスを崩して倒れてしまった。


「大丈夫ですか?」


 声をかけられ、ようやく私はぶつかってしまった対象が人と事に気付く。

 尻餅をついてしまうとは、恥ずかしい。

 それにしても、また他人に同じ事を言わせてしまった。再三情けなくなる。


「ごめんなさい。大丈夫だから。」


 大丈夫な事を相手に知らせる為に、そう言ってすぐに立ち上がった。


 ―――――大丈夫?一体何が?


 立ち上がって相手と向き合うと、相手の背が高い事が分かる。私の背は真ん中くらいだと思うのだけれど、相手の背はかなり高い。

 他クラスの人だけれど、何回か目にした事がある顔だった。こんなに背が高かったとは…。

 近くで見ると優しい顔つきなのが分かる。


「廊下にただ立っていた俺も悪いんだけど、ちゃんと前を向いて歩いて下さいね。」

「ほんとにごめんなさい。」


 反射的に頭を下げて謝罪をする。

 動いてもない人とぶつかってしまったのか…。想像すると余計恥ずかしくなった。


「あ。」


 そう言った彼は、体を少しずらして私の向こう側を見る。


「それじゃあ俺は行くから。気を付けてね。」


 彼は私の向こう側に何かを見つけたのか、私の進行方向とは逆の方向に走っていった。


 私も行かないと…。


 一階へ下りた時点で、さっきの出来事を思い出して、一人で再び恥ずかしくなった。

 下駄箱へ向かおうとしていたが顔が赤くなるのを感じて、先程の出来事を見てしまった人が周りからいなくなるのを待つために、一息つこうと私はトイレに寄る事を無意識に選択した。



   10



 トイレのドアを開けて、中に入ろうとした時、私の体は一瞬固まってしまった。


 即座に何も見なかった事か、何にも気付かなかったフリをして、平静を装って個室に入る。


 ―――――またそうやって色んな事に平気なフリをするの?


 焦る。

 ただ焦る。


 慎重に呼吸を整えてから座って、とりあえずは自分の用を済ませる。


 大丈夫。


 きっと個室から出て行った後、トイレの手洗い場には誰も居ない。

 居たとしても、普通に手を洗っているだけだ。

 だから気にせずに、自分も手を洗って、そのまま帰れば良い。


 ―――――またそうやって色んな事に目を瞑るの?


 よし、行こう。

 私は、自分の心を落ちつけてから個室を出た。


 そして彼女が居た。


 そして彼女は泣いていた。


 手洗い場で手を洗う事もせず、正面の鏡から目を背けるように下を向き小さく嗚咽を漏らしながら。


 また焦る。

 ただただ焦る。


 手を差し伸べてはいけない。


 分かる。


 手を差し伸べるタイミングは、今じゃないんだ。


 それだけは分かる。


 ―――――でも見過ごせる?何も無かった事にして、この出来事を忘れられる?後悔出来ずにいられる?


 個室を出たところで、ただ立っているわけにはいかないので―――なんで?―――私は手洗い場に近づく。


 くそっ、くそっ。


 どうする。どうする?


 彼女が使っている蛇口と、一つ間を空けところの蛇口を捻り、出てくる水を手で受け止める。


 ここで偽善者ぶって、彼女の涙をこの手で受け止めたとしても、彼女は救われないんだ。


 力になる事は出来る?そんなんが彼女のためになるの?


 力になってあげれて、彼女が自分に自信を付けたとしても、それは誤った自信だ。


 彼女が彼女自身の力で、何かをしなくちゃいけないんだ。


 だからここは手を出してはいけない。


 徐々に寒さが増すこの季節の中、水に長い事さらしていた為か手が震える。


 私は一旦蛇口を閉め、今度は石鹸を手に付ける。


 でも…、でも…!


 彼女は今!


 誰か本当の自分に気付いて欲しくて!

 誰かそんな自分の力になって欲しくて!

 誰かに助けて貰いたくって!


 救って欲しいと!


 叫んでる!


 私が!毎晩そうしてるように!


 ―――――自分は「そう」して貰いたがっているのに、他の人には「そう」してあげないの?


 そしてまた蛇口を捻り、手を洗う。


 嫌な汗が出る。


 焦って体が熱くなるのが分かる。


 口の中が乾く。


 心臓の鼓動が大きくなるのが分かる。


 最後に多少石鹸の付いた蛇口を水で洗い、蛇口を閉める。


「あの…、さ。」


 語りかけた。語りかけてしまった。私は私に負けた。


 だけど…。


 分かる。


 この先、近い未来で、良くない何かが起こる。


 何故かは分からないけれど、ただ分かる。


 でももう戻れない。


 やるしかない。


 もし私が原因で誤った事が起こる可能性があるのならば、誤った事が起きぬ様、私が出来る最大限の努力をするしかない。


「そんな風にしてても、誰にも助けて貰えないの、本当はわかってるんでしょ?」


 彼女は泣くのを止め、顔を私の方に向ける。


 だけど私は下を向いて、彼女の顔を見ない様にしていた。


 私は怯えていた。


 この先起こるであろう何かに。その何かの、罪の意識から逃れようとするであろう未来に。


「貴方がそうだから駄目なの。分かってるでしょ?」


 彼女を見ずに、語る。


「今の貴方は泣いてるだけ、悲しんでるだけ。」


 ―――――何を偉そうに。


「それを誰かに分かって貰って、助けて貰いたい。全部他人任せ。」


 ―――――お前にこんな事を言う権利があるのか?


「見せつけてるだけなのよ。」


 ―――――見せつけてるのはお前の方だろ。


「私はこんなにも悲しんでいます。」


 ―――――じゃあお前は悲しむ姿を絶対に見せないって言えるの?


「私はこんなにも打ち拉がれています。」


 ―――――じゃあお前は打ち拉がれてる姿を絶対に見せないって言えるの?


「誰に言ったら良いか分からず困っています。」


 ―――――そんな事があって当然じゃない。


「その姿を見せつけてるだけ。」


 ―――――もういい。やめろ。


「だから何にも変わらないのよ。」


 ―――――お前もその一人じゃないか!


「私が言いたいのはそれだけ。」


 そう言ってトイレのドアを押して、


 私は逃げた。


 下駄箱へ早歩きしながら悔やんだ。とにかくひたすら悔やんだ。


 もっと他に言いたい事は沢山あった、伝えたい事は沢山あった。

 でも私は無理に終わらせようとした。


 彼女を抱き締めてあげられたなら。

 大丈夫、私が少しでも力になるって、少しでも支えになるって。


 言えていれば。


 でも怖かった。

 だから怖くて逃げた。


 無責任なそんな言葉を放ってしまいそうだったから。

 優位性を確保しようとして駄目になる自分と、守られる事に安心してしまって自分からは何もしようとしなくなる彼女が同時に見えてしまった。


 人はなんて弱いんだろう。


 弱すぎる。


 助けるのすら怖いなんて、弱すぎる。


 でももし、あなたが自分自身の力で行動に出たのならば、その時は必ず…。



   11



 下駄箱で靴を履き替え、私はようやく校舎から出た。


 どっと疲れた為か、グラウンドをゆっくり歩きながら、さっきの出来事を思い出す。


 顔が赤くなった姿を誰かに見られたく無いなんて理由で、トイレによらなければ良かった。


 それにしても廊下でぶつかった彼と、トイレの彼女、きっとどっちも、私とは相容れないかもな、とも思った。


 ―――――またそうやってすぐ自分を不幸せに見立てるの?


 でも結局は彼や彼女も私と同じ筈。何かの本で読んだのだが、N極のみ、S極のみの磁石は存在しないのだそうな。


 ―――――じゃあみんなこんな思いをいつも抱えてるの?


 ―――――彼と彼女と私とあなた、一体何が違うっていうの?


 部活している人達を眺めながら、校庭の脇を歩く。


 ―――――それでみんなは平気なの?


 ―――――自分がみじめだと思わないの?


 ―――――自分がちゃんと生きてるって自信はどこから出てくるの?


 ―――――みんなもう倒れたいんじゃないの?


 ―――――その後に抱き締めてくれる誰かが欲しいんじゃないの?


 ―――――なんで声に出さないで心の奥に押し込む事が出来るの?


 途端に私の体のどこかの何かが、目から感情の行き着く先を掃き出そうと躍起になって、私はそれを堪えようと何度も何度も瞬きをする。


 ―――――それともみんな辛い時だけ目をつぶってるの?


 ―――――日々の忙しさや疲れを免罪符にして考えるのを止めているの?


 ―――――こんなにも確かに在る疑問を、なんで誰一人として口に出さないの?


 ―――――口に出した時に、変な目で見られるのが怖いから言わないの?


 ―――――「そんなのみんな一緒だよ」とか言われて一蹴されるのが嫌だから言わないの?


 駄目だ。抑えきれない。


 ―――――そうやってみんなこの思いを忘れていくの?


 ―――――単なる時間だけで?


 ―――――みんなは時間だけで忘れられる程、その思いは小さいの?


 ―――――それともその思いを抱く事に飽きちゃうの?


 ―――――同じ思いの繰り返しだから薄れていっちゃうの?


 既に目が潤っているのを見られたくなくて、足早になる。


 ―――――ねぇ。


 ―――――みんな思ってるんでしょ?


 ―――――今は思ってなくても、前はあったんでしょ?


 ―――――なんでなくしてしまったの?


 ―――――この思いが無くなって、あなたのなかで何かが変わったの?


 ―――――変わってないんでしょ?


 校門に着いた時点で、目に溜め込むのが限界で、自然と生暖かい液体が零れる。


 ―――――本当はさ?


 ―――――まだあるんでしょ?


 ―――――何かで蓋をしてるだけなんでしょ?


 ―――――でも、もう蓋を開けられないんでしょ?


 ―――――何か違う事に意識が行く様になったから、蓋をしたんでしょ?


 ―――――そして蓋が自然と重くなったんでしょ?


 最後に後ろを振り返って、青空の下にある学校全体を一瞬だけ見る。


 ―――――その蓋が閉じられた状態で、あなたは本当のあなたって言えるの?


 そして私は誰にも見られないように涙を流しながら走って帰った。



   12



「ただいま。」


 玄関のドアを開けて、私は一応、恒例の挨拶を口に出した。


「あ、おかえり。」


 居間から、のほほんとした口調の母の声がする。

 一応、顔を見せに居間に入ると甘い匂いが鼻を刺激した。


「今ね、クッキーを焼いている所だから、後で食べましょう?」


 母の背中越しの明るい声とクッキーの匂いが私の心をかき乱す。


「おいしいクッキーの作り方をこの間、近所の方から教わったのよ。良い匂いでしょう?」


 途端、あまりの甘さに気持ち悪くなった。


 そんなんで私に対する罪悪感を払拭する気なの?


 大体なんでそんな元気でいられるの?

 喧嘩した思いはどこへ行っちゃったの?


 喧嘩したから解消されたの?

 自分の言いたい事をいっただけで心が晴れるような、そんな小い思いの為に喧嘩してたの?


 分かる、分かるよ、分かるとも。無理に明るく振る舞って、私に気を遣って、継ぎ接ぎな関係を取り繕いたいのよね?演じているのよね?貴方は貴方で必死なのよね?


 でも違うの。何も分かってないのよ。


 喧嘩してるお前らを見て心が削られた私はどうしたらいいの?

 それで帰ってきたら無かった事にしようと励む姿を見せつけられる私は何を思えばいいの?


 どうなの?


 私にそんな姿見せられないから、そういう態度を取っているのは分かるよ?分かるけど。


 変だよ。


 気持ち悪いよ。


 悲しいよ。


 むかつくよ。


 ―――――死ねばいいのに。


「じゃあ後で食べに来るね。ありがとう。」


 そう言って、私は居間を出た。


 折角帰ってくる途中、帰ったときに今まで泣いた事が悟られないように、泣くのを我慢して、目を多少乾かして、目が真っ赤になっていないようにしてきたのに。


 部屋に戻ったとき、私はまた泣いてしまった。



   13



 夕食を食べ、お風呂に入り、宿題を終わらせ、ベッドの中で一人蹲っていると、今日の出来事が私の中で蘇ってくる。


 結局トイレで怖くて逃げた。


 結局居間でクッキーを食べた。


 結局自室で一人で泣いた。


 どうとでも出来たのに、しなかった。

 選択肢は一つじゃなかったのに、私はそれを選んでしまっていた。

 より良い展開への選択肢も確実にあったのに、私は目を瞑ってしまった。

 やらなければいけない事を、今じゃなくても良い、大丈夫、まだ間に合う、出来る出来るって。

 最悪出来ませんでした、私はこういった駄目な人間でした、って開き直ればいいやって。


 自分に納得させて。

 すぐ言い訳を考えて。

 他人に噛み付かれても、受け流せる様に身構えて。

 後悔した事で後悔しないよりはマシだと思って。

 後悔した振りをした事で後悔した振りをした自分を慰めて。

 終いには良く出来た方だって自分を褒めて。


 気持ち悪かった。

 自分の中で消化しきれなかった。


 ―――――やっぱり食べるのは気持ち悪いよ。


 こういう時は自分がどうしたいのか分からない。

 自分がどうするべきなのかも。


 他の人は何を思って眠りに就くの?

 他の人はこういう時どうするの?


 みんなはこれから先、自分がどう生きていきたいのか、分からない時は無いの?


 過去の後悔と、現在の堕落と、未来の不明確さ、この三つが同時に存在している時、誰かに引っ張っていって貰いたいと、他の人は願わないの?

 それともみんな心のどこかでは願っているのに、声に出さないでいるだけなの?

 せめて誰かが傍にいて、その誰かが今の日常の何かが変わる様な、そんな行為を一緒にしてくれたら、きっとみんな変わるのに。


 あぁ駄目だ。


 また結局は一人なんだって、そう考えたくなる。そう考えた方が楽だから。


 ―――――他の人は上手くやっているのに、自分は上手くやれてないとか、上手に生きてないとか生きられないとか。


 ―――――甘えるなよ。喚き散らすなよ。クソガキがよ。


 そう考えているとまた眠くなって、

 でもまだ眠りたくなくて、

 まだこの時間を過ごしていたくて、


 そして、私はこの眠気に逆らって、


 また今日もいつも通りに密かに外にでた。



   14



 夜、道を歩く。


 出来るだけ街灯の無い道を、人気のない道を選ぶ。

 たった一人、当てもなくふらふらと夜道を行く。

 照らされることのない、見つかることのない時間。


 こんなことをしても、何も変わらないのに…。


 私は馬鹿だ、こんなことしか出来ない。


 こんなことでしか、自分を表現出来ない。


 ―――――遠い正面から、車が走ってくる。


 しかしそれでも、私は簡単に照らし出される。

 私はこれほど望んでいるのに。これほど、これほど…。


 ―――――徐々に、その瞬間が近づいてくる。


 分かってる。単に幸福を拒否する事で、私で居ようとしている事も、本当は照らして欲しい事も、いつか見つけ出して欲しい事も、全部分かってる。


 ―――――痛々しい光りが、私に当たる。


 だから、私は多少の皮肉と確かな感謝の意を込めて、何も言わぬ自動車のライトにこの言葉をそっと送る。


 ―――――今日は、最後の一歩を、踏み出せるだろうか。


 ありがとう、と。


 そして次第に…、


 またあの眠気が襲ってきて…。



 次に私の意識に飛び込んできたのは、ブレーキの甲高い音だった。





 Long Runner A interval

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