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第3話 怪異にも悩みはあるらしい

「なるほどねぇ、首が長いってのも大変なんだ」

「そう、なの。壁にはぶつかるし、そもそも、背が、高いから余計に縦幅取っちゃって」


 今、私は何をしてるんだ。

 なんで幽霊と会話してるんだ? いや、喋れる相手がいるってのはいいんだけど。


「ちなみに、ワタシは、幽霊じゃなくて、怪異、ダヨ」

「エッ、怪異?」


 幽霊と怪異にはぼんやりとした違いがあって、生物やモノに害を与えるか与えないかだけ。

 ただ漂うだけの"霊"は幽霊と呼ばれ、基本的には何もしない。生前の自分を探して成仏する術を探してるだけ。

 だけど、怪異はチガウ。人間を襲ったり、乗っ取ったり、時には物の破壊や殺害もする。呪いと呼ばれる類も怪異のせいだったりスル。

 だから、ワタシは怪異に該当スルの。


「はぇー、ってことは私は幽霊って認識でいいんだよね?」

「それで、ダイジョウブ、だと思ウ」


 ということは、私が人間に害をなせば晴れて私も怪異の一員になるってことか。

 怪異の一員にならなくても既に霊だからさほど変わらない気もするけど。


「あれ、でもミチさんが怪異ってどういうこと? 私にしたみたいな圧を盗人にかけるくらいならそんなにじゃない?」

「アァ、それはね。ワタシ、いじめてきた人タチ、呪いコロしちゃった、カラ……」

「エッ」


 ミチさんってやっぱりヤバい人なの!?

 いや、殺してやりたいほどの仕打ちを受けたのかもしれないし、そういう話とかあったりなかったりするし、小説でもよくテンプレとしてあるけど、ホントにあるんだぁ……。


「エぁ、その、コワがらないで、ワタシ、もうヒト殺したり、しない、カラ」

「そ、そう? なの?」

「ウン、コロしたい奴、全員、コロした、から」


 やっぱりそうなのね!? もう手を汚す必要ないからなのね!? 世の中物騒すぎるだろ。

 というか、怪異からしたら人間を殺すなんて一発なのかな。私もほぼ同類みたいなもんだけど、殺すとか思ったこともないし、そういった衝動もないから。


 自分の手を見つめる。私も、そうならないという自信はあるだろうか。

 私は、死因もわからなければ、自殺したのか、殺されたのかもわからない。

 覚えているのは、自分が柴崎真弥であること。年齢が17であったこと。あとは、家の場所や学校。だから自分の死以外は覚えていると言っても過言ではない。






「そういえば、その首、邪魔なんだっけ」

「ウン、とってもジャマ。ぶった斬りたい」


 そういうことなら、ちょっと家にアレを取りに行こう。


 随分話し込んでいたようだ。

 差し込んでいた陽の光は疾うに消え、代わるように月の淡い光が私達を照らしていた。

 コンクリートにずっと座っていたから心做しかお尻が痛い。ついでに座布団も取ってこようかな。


「ミチさん、私ちょっと家に帰るね。帰るって表現で良い分かんないけど」

「ワカッタ」


 幸い、家の場所は知ってる。ただ、近寄るのになんだか抵抗があるってだけで。

 別に家族と仲が悪かったわけではない、と思う。でも、大して仲良くもなかった。だからこそ、こうして死んだ身が平然と家に帰って良いものかわからない。


 家族が、私が死んだことを悲しんでいないかもしれない。そう考えるとなんだか虚しくなる。


「まァ。悲しむとかは、ナイよな」


 別に家に一人いなくなったところで、いなくなるのが少し早まっただけなのだから。

 意味が違えど、旅立っただけなのだから。


 だから、ワタシなんて、いてもいなくてもカワらないんだよ。

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