第2話 幽霊の大本は人間らしい
ひんやりとした風で目が覚める。
薄っすらと目を開けるが、視界は真っ暗で何も見えない。
「寝てる間に夜になっちゃったのかな」
どれだけ寝ていたのだろう。ああやって人にぶつかってはしゃいでいたのはまだお昼前くらいだったと思うんだけど……はしゃぎすぎたのかな。
しかし、真っ暗なのは私の目の前のみ。そこ以外はまだ陽の光がコンクリートを照らしている。
「ま、まさか」
嫌な予感がする。いやぁ、ま、まさかそんなはずないよね?
だが、先程までの殺意、というか嫌な感じはしない。もしかしたらさっきのやつじゃなくてまた別の幽霊が私の目の前に立っているという可能性もある。
このままでは動こうと思っても動けない。
意を決して首を上へ向ける。が、やめておけ〜!! と心が拒否してグギギと効果音がつきそうな、そんな感じで視線を上へと向けた。
「ぎ、ぎゃぁ!?!??」
驚きすぎて後ろに仰け反った。
目の前に立っていた人物は案の定、先程見た幽霊だった。
「ゴメン、ナサイ……ソんなに、驚かせるつもり、ナカッタ」
「えぁ、え、しゃ、喋れる、んすか」
伸びきった首を私の目線まで下げ、謝罪する。
いや、喋れるんかい!? いや、まぁ?? その、喋れないとは思ってなかったよ? 私が喋れてるからね? でも、あんな感じのが喋れると思わんやん??
「ワタシも、喋れる」
「そう、ですかァ……」
最初はあんなに恐怖を感じるほどヤバイ奴だと思ってたけど、意外とそんなこともないらしい。
「アナタ、さっき、スマホ盗もうと、シタ?」
「はい?」
どうやら私は先程の男性のスマホを盗もうとしたように見えたらしい。別に私はそんなことしようとしたわけではないけど、まぁそう見られても無理はないかもしれない。
現にスマホに触れるのか検証したかったんだし。
「いや、そんなつもりなくて。人にはぶつかれなかったので、物体には触れるのかなって検証しようと、スマホに触ろうとしただけなんです」
「ソ、ソウ、だったの。圧かけて、ゴメン」
もう一度謝られてしまった。
確かにあの圧は死ぬほど怖かった。
少し話を聞いたところ、この人はミチさん。
生前に酷いいじめを受けていたらしく、モノを盗まれることが多かったそう。その"モノを盗まれる"という意識だけが強く残り、盗みを働こうとする者に対しての執着がすごいみたい。
だから私がスマホを触ろうとしたところを見て、盗みそうと思って私にめちゃめちゃ圧かけたらしい。
ちなみに詰まりながら喋ってしまうのは死因が首吊りだったかららしい。発見が遅れたせいで……ああなっちゃったんだと。本人も、まさかここまで伸びるとはってコンクリートぶっ叩いてた。
私もそうだけど、幽霊の大本は人間なんだなぁ。そう考えると世の中の怪異と呼ばれるものも元を辿れば人間だったりするのかな。
「なるほどぉ。いやぁ、迷惑かけちゃった」
「イイノ。ワタシも、ゴメン」
しばらく身の上話を続けていると、何故かミチさんの姿が変わった。
学生服? というかセーラー服を身にまとい、髪は綺麗な黒髪のボブ。真っ白な肌にパッチリとした目。まるで人のような姿。けど、長い首だけはそのまま。
「え、姿、変わって……」
「ホントだ。なんでだろ」
でも、ちょっとありがたい。あの見た目、殺意がなくてもちょっと、いやかなり怖かったから。
てか、ミチさん学生だったの、若くして亡くなるって、やっぱり少し悲しくなる。
まぁ、私も高校生だったんですけどね!
なんで死んだかすら覚えてないけど!




