第1話 どうやら幽霊になったらしい
突然だが、どうやら私は幽霊というものになってしまったらしい。
一体どういうことかって? そりゃあもちろん、
「うおぉ!? ひ、人とぶつからない!!」
そう、私は今、片っ端から人間という人間にぶつかりにいっている。だが、今のところ誰ともぶつかっていない。というより皆私をいないものかのようにすり抜けていく。
なんとなく手足も透けてる気もするし、やっぱり私はマジモンの幽霊になったのか。
「いやー、しっかし、ここまで誰ともぶつからないとは……幽霊なんてそんなに信じてこなかったけど実際に私がこうなるなんてなぁ〜」
別に信じていなかったわけではない。いたらいいなーってそれくらいは思っていた。だって、いたほうが面白いし、なんだか楽しいし?
だが、誰にも視認されないというのは少し、いやかなりくるものがある。
普段ならいっそ認識されないほうがいいとか、私っていないものみたいな扱いなんだ、、とか思って悲しむ日もあったけど、正直本当に"誰にも認識されない"というのを経験すると寂しさが勝つ。
きっと写真に映るだとか動画に声が乗るだとかそういうのはきっと誰かに自分の存在に気づいてほしかったんだ。こうやって私が誰かに当たり散らかしているのもきっと同じなんだろう。
「いい加減、誰かぶつかってくれねーかな」
いや、そう簡単にぶつかるなんて思ってないよ? けどさぁ、こんだけ当たり散らかしてるんだから少しくらい誰かとぶつかってもいいじゃん!!
いやまぁ、ぶつかったらぶつかったで怖いんだけど……。
「あ、そういえば人は無理でも物とかは触れるのかな」
確かこういうのって、ポルターガイスト? っていうんだっけ。
その、ポルターなんたらが起こるかもしれない。そんな淡い気持ちでなんとなく目の前の男性が持っているスマホに手を伸ばす。
その瞬間、今まで感じたことのない殺気と悪寒がした。
触っちゃいけない。ふれちゃいけない。今すぐここから離れないと。そんな感覚で頭がいっぱいになる。
さっきまでの余裕と好奇心はどこへ行ったのか、冷や汗をかくばかりで足が全く動かない。
"見られてる"
視線を感じる。斜め上から。
触ろうとしていたスマホの持ち主じゃない。それよりももっと上、見下されているような感覚。
すでに幽霊なのだというのに怖くて怖くて仕方がない。
視線が徐々に下へ向いていく。無意識に頭だけが下を向く。少しでもヤツから視線をそらし、視界に入れないように。すでに恐怖で手足は動かなかった。
下げた視線の先。目の前の男性が少し開いていた股の間から、細く、真っ黒な2本の棒が……いや、足のようなものが覗いている。
「はな、離れ、なきゃ」
ザ、ザと徐々に後ろ下がるが、全く動いている感じがしない。さっきまで聞こえていた雑音は耳鳴りへと変わり、頭をガンガンと殴られているような感覚に襲われた。
「あたま、、いたぃ、、」
あまりの痛みに目を瞑る。決して和らぐことはないのに手で頭を必死に押さえつける。頭をブンブンと振ってみたところで更に痛みを増幅させるだけだった。
そっと目を開ける。
「いや、いやぁあああ!!」
私は慌てて駆け出した。
さっきまで動かなかった足はどこへ行ったのか、一心不乱に走る。"あれ"からある程度距離が離れると、頭痛は消えた。どうやら追いかけて来ていないらしい。
全力で走ったからか、急に止まったからか、今度は酸欠で呼吸が変になる。
私は見た。
あの、足が見えていた隙間から。
逆さまの、ニッコリと笑った女のような顔が。
顔と表現して良いものなのか定かではないが、ぐにゃりと変形し、顔のパーツはあれどどれも歪に配置され、耳は大きく、鼻は凹んでいた。真っ黒に塗りつぶされたような目は大きく見開かれ、"私"を凝視していた。
初めてだった。あんなに恐怖を感じたのは。
今まで霊感なんて皆無で、幽霊の姿を見たことも声を聞いたこともなかった私にとってはこれ以上ないほどの恐怖体験だった。
呼吸が落ち着き、改めて私を見渡す。どうやらここは廃ビルのようだ。
やけに静かだが、下手に人がいるよりよっぽど良い。
「しばらくは何も考えたくないな」
幽霊は幽霊で大変なんだな。
……そういえばどうしてあの霊は私がスマホを触ろうとしたときに現れたんだろう。それまでは私のことを見る人も幽霊もいなかったと思う。
だからこそ私は"見えない存在なんだ"と、そう認識した。
「今日は災難だったなぁ」
明日は何もありませんように。
少しひんやりしているコンクリートの上で目を閉じた。
初投稿なので温かい目で見ていただけるとありがたいです。拙い文章ですが、楽しんでいただけたら幸いです!!
感想お待ちして入ります…!




