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余命3ヶ月らしい

「余命3ヶ月になります。」

その宣告は突然だった。

医者の顔は実に真剣で深刻な顔をしていて、冗談を言っている様子はなかった。


「なるほど・・そうですか。それは驚きました。」


医者からの突然の宣告に僕は正直戸惑いを隠せない自分がいた。

衝撃だ、もはや涙を流すと言ったこともできなかった。

そんな僕を見かねて医者はより一層顔を引き締めた。


「治療を進めていくために我々はできる限りサポートは全力でさせてもらいます。

本人の気持ちが第一優先ですが、治療を進めるか、緩和ケアに移行するか検討して頂きたいです。治療についてですが、XXXXーーーーー」


そこからしばらく今の病気について、治療について、ケアについての説明を受けた。

正直あまり頭に入ってはこなかったが、要するに今後どのようにしていくかと言ったところだ。

良い医者に当たったのだと思う、前向きにいくように励まされ、共に頑張ろうと力強く、しかし安心させるために穏やかに話してくれたのは覚えている。

一通り話が終わり、本日は一度帰宅して後日改めてもう一度精密検査という事になり、会計を終えたのち病院を後にした。

時計を確認すると時刻は17時30分。

検査のために有給を使って仕事を休んだが、1日かかってしまったようだ。


季節は夏真っ盛り、まだ空は明るく雲ひとつない空ではあったが、

僕の心の中は雲がかかるような、複雑な感情は拭えなかった。

それは自分が死んでしまう事実を受け入れられなかったり、これから一体どうすればいいか途方に暮れてしまったからなどではない。

この状況はまさに鳩が豆鉄砲を喰らったと言ったところだろうか。

喜ぶべきなのか悲しむべきなのか、、、


そんなことを考えている間に一人暮らしのマンションに到着した。

1Kのマンションは7万円ほど、僕の安月給でもなんとか支払いをしている。


「ただいま」


鍵を回し、誰もいない部屋に帰宅の挨拶をする。

当然返事などはない。

家に帰宅したところで居室に向かった。

居室は8畳、綺麗に整頓された部屋の隅に白い袋がある。


「うーーーん」


袋の中身を見るなり思わず唸り声を上げてしまう。

この袋の中身がこの複雑な感情の答えと言ってもいいだろう。

その理由を説明するために中に入っている物を紹介しようと思う。


・練炭

・ライター

・新聞紙

・ロープ

・包丁

・大量の薬



さて、この袋の中身から導き出されること。

連想できるものは当てられるだろうか。

そう僕は自殺しよう淡々と準備を進めていたのである。


「余命が先か自殺が先か・・・」


僕はベッドに横になり天井を見つめる。

医者にも言われたが考えなければいけないのかもしれない。

今後どのようにしていくかを。


僕はベッドに横になり天井を見つめる。

医者にも言われたが考えなければいけないのかもしれない。

今後どのようにしていくかを。


さて、なぜ僕が自殺しようと考え、行動に移そうとするために準備を進めていたのかを順を追って説明したいと思う。


僕は幼少期から不器用な人間だった。

勉強も運動も得意ではなく

俗に言うとダメ人間のレッテルを貼られてた。

何とか人の何倍も努力し続けた。

そうすることで何とか人並みになろうとした。

そうすることで、いつか報われる日が来るかもしれない。

そんな希望を胸に毎日を生きてきた。


そして大人になり社会に出た。

社会は厳しかった。

社会では結果が求められる。

いくら努力しても結果が出ていなければ意味がないと虐げられた。

それはビジネスの世界では正しいことである。

理解できる。


しかし結果の出せない僕は会社でのヒエラルキーは最下層だ。

嘲笑うように周りの人間は陰口を言い。

数字が出せない僕は上司から毎日詰められた。

そんな僕を見て、周囲はあいつよりマシだと悦にひたわれ

僕と言う人間を消費されて生きてきた。

それでも努力した。

でもダメだった。


「ここでやっていけないお前はどこでも通用しない」


かつて上司が僕に言った言葉だ。

確かにその通りかもしれない。

きっと不器用な自分、ダメな自分は、

どこの職場でもやっていけないのだろう。

心は完全に折れていた。

救いなんてない。

僕は自殺する事にした。


人生は山あり谷ありとよく聞く

その山が急すぎた時、人は山から落ちてしまうのだ。

そう思った。



自己紹介しよう。

僕の名前は坂田大吉。

プロフィール 年齢は30歳 会社員 独身

余命3ヶ月の自殺志願者だ。

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