6 サードの国
ハルは未だ小さい。一人で生きて行くには難しいだろう。サードについたら何か考えなくては。
「ハル、孤児達もいるでしょう。そう言う子は何処に行っているの?」
「神殿。」
「ハルは神殿に行かないの?」
「彼処は、子供を喰うお化けがいる。」
「プッ。何其れ。子供を寝かしつけるときの、お話なんじゃないの。」
「本当だ!皆言っている。神殿に買われた子供はいなくなってしまう。」
本当かしら。何でも、ハルが言うには、人攫いがいて、子供を神殿に売るそうだ。その子供達は何処にもいない。神殿から出てきたところを見たものもいない。だそうだ。
話の信憑性はともかく、子供を浚う奴はいるだろう。
「ハル。誰にも言えない秘密。知りたくない?」
「・・・?」
私はハルを大人の見た目に変身させた。これで人攫いは大丈夫だろう。
ハルは、筋骨隆々のゴツイ男の姿になって仕舞った。これは、将来のハルの姿なのだろう。人攫いの心配は全くなくなった。
「ハル貴男、なるべく話さない方が良いわよ。馬鹿だと思われるから。」
ハルに剣を持たせ、防具も着せてやった。ポケット様々だ。
ハルは喜んで何時も剣を振り回している。頭のイカレタ大人がはしゃいでいるようにしか見えない。
私は少し離れて歩くようにした。変な男と一緒だと思われたくなかったから。
サードの国の街も、ファーストの街と全く同じ造りだった。
一つの国に一つの街で後は村が沢山ある。経済がすべて街に集中していた。人口もそれなりに多い。日本と比べれば少ないが、世界の規模も違うのだ、こんなものだろう。
この分では何処の国に行っても同じなのではないだろうか。
入街料を払い、私達は街の中に入った。
「マコト。何処に泊まる?俺、一緒の部屋が良い。」
まあ、子供だから、寂しいのは分るが、大きい声で言わないで。皆変な目で見てるでしょ。
宿を取るより部屋を借りる方が良いかもしれない。
街を見て回り、不動産屋らしき所を見付けた。
「ここで小さい家を借りたいのですが、どこか空いていますか。」
「では、これなどは如何でしょう。」
と言う事で直ぐに小さな一軒家を借りることが出来た。値段は高いかどうかは分らないけれど、お金はポケットがあるので全然平気だ。
中心からやや離れた処にあるその家は未だ新しく見えた。
当分の間ハルと私は此処で共同生活することになる。