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4 ファーストの街で働いてみようか

働く必要はないが、此処で3日ほどゴロゴロして、飽きてきた。

何もしないで、宿の部屋に一人こもっていて、私は何をしているんだ?折角異世界に来ているのに何も見て歩かずに日がな一日ぼーっとしている。

備え付けの鏡を見て、自分の姿が変わっているのに気付いた。この世界に居る人達と同じ種類の見た目だ。こそこそしないで済んだのに。

これなら、意識せずに出歩けるではないか。何でもっと早く鏡を見なかった?

宿には風呂があったしトイレも清潔だった。トイレには、スライムが居たし風呂にもいた。

この世界は、スライムが、貴重だったのではないか?倒してはいけなかったのかも知れない。風呂に入っているスライムは、一緒に浮かんでいるだけで、食いつかれるわけでもなくぷかぷか浮いているだけだった。何でもスライムが水の浄化をしてくれるので、水は替えなくても良いとか。何となく汚いような気もするが、この世界ではこれが常識なのだろう。

異世界と言えば冒険者だろうが、村長が言っていたように魔物が少ないと言う事は、冒険者という職業はないかも知れない。さて、この世界で私に出来ることは何だろう。


「サムさん、私でも出来る仕事って在ります?」

サムさんとはこの宿のご主人だ。樽のような身体で、ひげが顔中に生えていて、熊みたいなご主人だが、無口で、余計なことは言わないので、安心していられる。

「あんたは、何か得意なものはあるかい?」

「得にはないな。」

「酒場の女給か、洗濯女、小間使い、子守、商人の手伝いくらいか?」

「商人の手伝いってどんなことするの?」

「難しい計算とか帳簿付けだろうな。」

それなら出来そうか。でも前の仕事と変わらない。折角この世界に来たのに。もっと面白そうな、この世界特有のものはないのか。自分で歩いて、探すしかないか。

男なら、力仕事とか兵士とか在るのだろうが、女の仕事は種類がないようだ。


街を歩きながら、大きな建物の前に来た。職業斡旋の様な事が書かれていた。

其処に入ってみる。

「すみません。あの仕事を探しているのですが。」

「はい。此方にどうぞ。」

受付の前の椅子に座らされて、板の上に手を置くように言われた。素直に従う。

「はい、終わりました。魔法の適性があるようですので、此方の仕事をおすすめ出来ます。」

と言われた。そうか。此処は異世界だ。魔法があったのか。そして私にも魔法が使えるようだ。なんだかわくわくしてきた。

渡された内容を見ると、お城の内部で仕事が出来る。魔法の適性が書かれていて、私は、水、土、無と書かれていた。

「三つの魔法が使えると言う事かな。」

でも、使い方が分からない。使っている場面も見たことがないので、この世界では珍しいのかも知れない。

「あの、魔法は使ったことが無いのですがいいですか?」

「はい、職場で教えてくれますよ。平民は殆ど使えませんから。適性があれば、お城で積極的に指導してくれます。良かったですね。」

と言われてホッとした。


翌日早速お城に、紹介状を持って言った。

待合室で待たされ、指導係に面会した。彼女は67歳の魔術師で、水の魔法が使えるらしい。お城で何をしているかは分からないが、結構な位置にいるようだ。

「随分優秀な平民ね。3つも適性があるなんて。あなた、貴族に親戚とか居るのでしょ。」

「いえ。多分、いないと思います。」

我が家は生粋の農民だったはずだ。何代も前からだ。日本ではだけど。

次の日から此方で泊まり、指導と平行して仕事が始められると言うので、宿は引き払うことになった。

採用の際、年齢をきかれた。私は『15歳です』と答えた。

酷い年齢詐称だが、見た目それくらいに感じたし、自分の本当の年齢を言っても信じては貰えなかったろう。何となく、後ろめたいけど。


お城に用意された部屋は個室を与えられた。

十畳くらいの広さで此方では平均の大きさだということだ。ベッドと机、衣装タンスが備え付けてあった。魔法使いみたいなローブも渡された。フード付きの足首まで被う、黒くて長いローブだ。

私の他にも平民出の生徒がいた。17歳の女の子で、名前をキャサリンと言った。落ち着いた感じの優しそうな子で私とは話が合った。自分の人生で初めて出来た友達かも知れない。

「マコト、何処の村から来たの?」答えることが出来ないので、適当にこの間の村の名前を言った。

「そう、直ぐ近くて良いわね。私はずっと離れたところなの、もう帰れないわね。」

と言った。帰れない?どうして?と聞くと、

「お城に勤めていると、休みは貰えても3日くらいだから。それに当分出してもらえない。」

出して貰えないとはどういうことか分らない。

次の日から、魔法の指導が始まるとのことだった。


私達の指導係は、ヴィヴィアン・デズモンドと言った。貴族で、旦那様が男爵だという事だった。10歳から、魔法に目覚め、以来此処で働いている。

随分早くから、働かされているな。貴族とはそう言うものなのか?

話を聞いている内に分ってきたことがある。この世界は、貴族でも魔法の適性があるのは非常に少ない。

適性があれば子供でも直ぐ仕事をさせられるようだ。

今此処に居る魔術師は80人だけだと言うことだ。その内平民出身は32人だ。だが殆どの平民は貴族と縁組みされていて、貴族になっている。わたしとキャスもそれぞれ貴族の相手を紹介された。

相手の人も仕方なく来ているような雰囲気だった。

私は、焦った。こんなつもりはなかった。結婚だなんて、然も魔法狙いの結婚だなんて。





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