3 ファーストの城塞都市
城塞都市に行く途中に、スライムを見付けた。
例の如く鍋蓋で、バコンと遣っ付けた。水色のピンポン球がコロンと転がり、私は其れをポケットに突っ込みまた歩き出した。何故か、どんどん出てくる。余り見付からないんじゃなかったの?
城塞都市に着くまで20個程のピンポン球をゲットした。
「此処はスライムが多い所かな。」
これはよく聞く魔石というものだろう。街には入れたとして、いくら何でも只で生活するのは如何なもんかと考えていた。この魔石で生活費になるかな。
自分が大人に見える様な何かはないだろうか。ポケットに手を突っ込んで考えていると、何かピカッと光った。若しかして身長が伸びた?ズボンの裾が短くなっている。上着の袖もだ。魔法のポケットは万能だ。
恐る恐る門に近づき門番に声を掛けてみる。
「こんにちは。ここに入ってもいいですか?」
「ん?ああ、鑑札は持っているか?なかったら金が掛かるぞ。銀貨一枚だ。」
良かった。入れるみたいだ。先ほどの魔石を取り出そうとポケットに手を入れると魔石とは違う手触りがあった。取り出してみると、手の中には綺麗な金色の硬貨が在った。
「あの、これで足りますか?」
「え!お前、金貨なんぞ持っていたのか。危ないから仕舞っておけ。銀貨だ銀貨。持っているだろ。」
私はもう一度ポケットに手を入れて銀貨と念じてみた。手に感触がある。取り出して、門番に渡した。
分けなく城塞都市に入れた。
お金まで魔法のポケットで出せるなんて、ゆるゆるのゲームだ。これで、働かなくても良くなった。魔石もいらないかも。
ゆっくり街の中を見て回ろう。
中央の大通りの端を歩き、家並みをキョロキョロ見ながら歩く。家は三階建てが多い。家がぴったりくっ付いて立っていて5,6件ごとに細い路地がある。路地の奥を覗いてみると大通りとは打って変わってみすぼらしい家並みが続いていた。よくある街の風景と言ったところだ。
この町の中央らしきところに着いた。大きな円形の広場の中央に噴水がある。広場を囲むように立派な四階建ての家が並んで立っていた。矢張ヨーロッパで見るような中央広場だ。遠くにお城が見える。此処よりやや高い場所に立っているようだ。
あの村のように夢見の人と言われて騒ぎになるのは避けたい。
噴水の周りに置いてあるベンチに座って、自分の服装をたしかめてみた。身体に合わなくて、つんつるてんだ。灰色のズボンに茶色のジャケット。靴はブーツ。中に着ているのは丸首のパジャマだった。これだけ、其の儘だった。
「何か、みすぼらしい格好だわ。この格好でホテルに止まれるかな。」
お金は問題ない。どこかで服を買わないと。ゆっくり立ち上がり洋服を売っていそうな所を探しながらお城の方に歩いて行った。
途中で路地の中を入ってみたら、丁度良い服屋があった。看板は日本語の草書体で書かれていた。何故か、読めるようになっていて助かった。読めなかったら、詰んでいた。
「御免下さい。」
「へい。いらっしゃい。」威勢の良い声が奥の方から聞こえて、おばさんが出てきた。
「私に合う服を探しています。見繕ってください。」
「あいよっ!どれどれ、ふんふん。これなんかどう?」
「はい。これで御願いします。」
ささっとお金を支払い、そこで着替えて、そそくさと店を出た。あのように威勢の良い人は、苦手だった。どうも昔から、あの手の底抜けに明るい人が相手だと、気後れしてしまうのだ。
彼女が選んでくれた服は、身体にフィットした、膝下丈のワンピースだった。その上にジャケットを羽織り、また通りを歩き出す。
身体がおおきくなったり、お金が出てくるのなら、服だって出来たかもしれない。今更気付いた。
余り高そうでない小さな宿を見付け其処に泊まることにした。
『火の鳥亭』という名の宿だ。
10部屋しかない小さな宿は、裏路地にあった。表通りに面した宿は、凄く高級そうで、入るのがためらわれた。此処でも私の性格が出てしまう。別に誰も見て居ないのに、変に自意識過剰になって仕舞う。
余り、目立たないようにしてしまうのだ。選んだ宿も同じく目立たない所を選んだのだった。