2 異世界に来ていました
「おじいちゃん・・・」
私は14歳から18歳まで、おじいちゃんに育てて貰ったが、無口な彼とは会話もなかったし、余り懐かなかった。
成人してからは会うことも数年に一度くらいだった。何故、私が人生に倦いていると分かったのだろう。
私は人と馴れ合わないし、人付き合いが悪く皮肉屋だ。必然、友達も出来にくいし、人の輪の中にも入れない。そんな私の事を心配したのだろうか。
「見たものを素直に信じろという事ね。異世界を楽しんでから、帰れと言っているの?」
ふふ。良いわ。ちゃんと帰れると言っていたけど、楽しかったら、ずっと居ても良いかしら。帰ったところで死んで仕舞ったおじいちゃん以外家族もなく、知り合いだって余り居ない。職場の関係は希薄だし、誰も私の事なんて気に掛けないだろう。
城塞都市には入れないなら、村はどうだろう。彼処に見えてきた村は入れるかしら。
囲いはないから、そのままずんずん村の奥まで入ってみる。真ん中に大きい井戸があり、周りで村の女達が洗濯しながらワイワイがやがやと、井戸端会議をしていた。
「こんにちは。此処は何という村ですか?」
「おや、小っこい子供が一人で何してる?何処の子だい」
自分は自分はそんなに小さいとは思えないが。此処の人々は、確かに皆背が高いようだ。私の事を10歳位に思っているのかも知れない。
「私は35歳です。」
「は、は、まあ、そりゃわるかったね。で、嬢ちゃんは何でここに来た?親と一緒ではないみたいだが。」
年齢を言っても信じて貰えないみたいだ。仕方ない。
「私も分からないんです。気付いたらここに来ていました。ひとりぼっちで。」
「・・・」
「もしかして、夢見の人かも知れない。」
もう一人の女の人が私の事を言い当てた。この世界では良くある事なのか。私はコクリと頷いて、その人の方を見た。
それからは、村中大騒ぎになった。私は、村長の家にやっかいになることになった。
村長は、私に色んな話をしてくれた。
この場所は、春の世界と呼ばれている。どこまで行っても同じような世界で、草原と森と低い山がある。国は6つ在るという。ある探検家が、世界の端を見極めようとどこまでも歩いて行った。1年後これが世界の端だと思ったところは、靄に被われたところだった。その中に入って通り抜けると探検家が初めにいた所に戻っていたと言うことだ。
まるで、昔のヨーロッパ世界の常識だった、世界は平面だと言う話を地で行っているような話だった。
この国はファースト国と言うらしい。1番目の国と言う事だろう。1番目から6番目まであるはずだ。覚えやすいが、安直な名付けだな。
この村には600人住んでいる。皆農民で、麦や野菜を作っている。偶に男達が草原に行って、動物を捕まえてくると言う。大事なタンパク源だ。
私はポケットから、ウサギの尻尾を出して見せた。村長はニコニコして
「流石は夢見人だ。魔獣を見付けたのだね。ファーストの国では魔獣は滅多に見付からないのだよ。見付けられたら幸運だ。魔獣の素材はお城に持って行くと高値で引き取って貰える。」
と言った。異世界もののお話はよく読んだ。でも魔獣を見付けて幸運だという話は珍しいのではないか。
確かにいくら探してもあれ以降、ウサギは見付からなかったけれど。
私は当分やっかいになるお礼にこの、ウサギの尻尾を受取って貰った。
この村には一週間お世話になった。村長は
「何処に行っても、夢見人は歓迎される。物怖じせずに、ハッキリ自分は夢見人だと言えば良い。そうすれば何処でも只で泊まらせて貰えるよ。」
と言ってくれた。ではあの、城塞都市にも入れるのかしら。でも、見た目が子供だとまた追い返されそうだ。