表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
深森の魔女セルリアの物語  作者: 端月小みち
第二章 王女に恋した魔女の息子

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/21

最終話 永遠の再会


 それから三年の月日が流れ、ダニーとシェリーの二人は魔法使い見習いを卒業するとすぐに結婚式を上げた。

 二人はセルリアの森小屋からは遠くはなれた異国の地に居を構え、おしどり夫婦の魔法使いとしていつまでも幸せな毎日を送った。




 そして更に四十七年の月日が流れた。


 セルリアは今はもう静かになった森小屋の中で、昔と変わらず森で採集した材料から独り魔法薬を調合する毎日を送っていた。


 そんなある日、レイラ王妃が高齢により逝去されたという知らせがセルリアの耳にも伝わってきた。 

 そしてまた、ディーン前国王は長年連れ添った伴侶に先立たれ、悲しみに明け暮れる毎日を送ってるという噂も。


 立派な魔女となったシェリーは普段もことあるごとに箒に跨り、遠路レイラとセルリアの元を訪ねて来たが、レイラが逝く少し前には床に臥せったレイラの元を頻繁に訪れ、母娘の間の積もる話に花を咲かせたという。


 そんなニュースを聞いて暫く経ったある日の午後、


「みゃぅぅぅ……」


 窓からぴょんと軽快な身のこなしで小屋に入ってきたリーウィッドが、セルリアの足下で一啼きした。

 すると程なくして、誰かが小屋の扉をノックした。


「──はぁい。どなたかしら? 」


──久しぶりにお客様かなぁ?


 そう思いながら、セルリアは扉のドアノブを引いた。


「まぁ! ディーン……」


 そこには、もう大分前に王位を息子に譲った、年老いた前国王ディーンが独り立っていた。


 前王は少しおぼつかない物腰で一礼し、腰を落としながら深森の魔女セルリアの顔を見上げて、にこやかに微笑んだ。


「僕も……あなたとの約束を破って再びあなたに会いに来たことをどうかお許し下さい……」


 ディーンがそう言うと、セルリアは優しく微笑んだ。


「それももう昔のことですわ。それよりレイラ様のこと……お気の毒ですこと……心からお悔やみ申しますわ……」


「ありがとう。セルリア……でも、実際のところそうなんですよ……僕は心にポッカリと穴が空いたようで……それで気が付いたらどういう訳か、再び君の小屋に足が向いていたのです……」


「そうですか……久しぶりにあなたの顔を見られてとても嬉しいわ。さぁ、どうぞ中に入って下さいな? 今お茶でも淹れますわ? 」




 二人は小屋の中の居間に据えられた慎ましやかなソファーに並んで座って、窓から見える深森の緑豊かな眺めや聞こえてくる小鳥の声に耳を傾けながらお茶を愉しんだ。


「流石、魔女は寿命が長い。セルリアはほんとに昔っから若いままだなぁ。羨ましい限りだ……」


「──うふふふ、そうですか? 確かに普通の人よりは長いかもしれないけど、わたしだって少しずつ歳は取っていますから……結局は逝く時は逝くのですわ。それが少し早いか遅いかの違いだけですよ。ダニーとシェリーの子供たちももう随分と大きくなって、わたしももういつ逝ってもいいくらいなんだけど……うふふふ、少し前は寿命が長いのはとっても良いことだとばかり思っていたのだけど、最近は少し考え方が変わってきたのかしらね……」


「そうか……セルリアがそう言うのだから、もうすぐ尽きようとしている僕の命もあながち悲嘆ばかりするものではないような気がしてきましたよ……」


「わたしはまだもう暫くの間は生きますけど、あなたはしっかりと生きて確かに命を刻んできたのですから、もうどうか無理はせずゆっくりと休んで下さいね? 」


「えぇ……そうしようと思います……レイラにはまた『上』で会う時にきつく叱られるのだろうけれど……今日はまたいつかのように、君の胸の中で少し休みたくなりました……どうか僕の我儘をお赦し下さい……」


「まぁ! ディーンったら……うふふふ……どうぞゆっくりなさって下さいな……」


 セルリアはディーンの皺くれた手にそっと自分の手を重ねた。


「……あなたは今でもずっと変わらない、わたしが密かに想いを寄せた大事な人なのですから……」


 セルリアはそう言って立ち上がると、着ていた衣服を静かに脱ぎ捨てた。

 その透き通る白絹のような肢体を露わにしながら、ディーンの傍らにすっと腰を下ろした。


 セルリアは皺の刻まれたディーンの頬を優しく撫でてから、自分の胸へとそっと掻い寄せた。

 セルリアの柔らかな胸の中に顔を埋め、セルリアを見上げたディーンはニッコリと笑った。


「レイラの唇にもまた会えた。嬉しいな……」


 春の陽射しが穏やかに射し込む深森の小屋の中で、ディーンはそっと手を伸ばし、レイラの昔のままの艷やかなピンク色の下唇を、その節くれだった震える指先でくるくると弄んだ。


「わたしのディーン……昔のように沢山良い夢を見て下さいね……」


 セルリアは王子の耳元にそっと囁いた。


「あぁ……セルリア……そして、僕の……」

 

 若き王子ディーンはゆっくりと身体を起こし、魔女の唇に自分の口を重ね、その艷やかで甘いさくらんぼのような膨らみを赤ん坊のようにいつまでも吸い続けていた。



『深森の魔女セルリアの物語』

〜終わり

 いつもご愛読ありがとうございます。

 長い間、拙作をご愛読を頂きましてありがとうございました!!(◠‿・)—☆


 本編は何とか読者様の厚いご支援のお陰で目出度く完結を迎えることができました。

 まだまだ語り切れずに埋もれている深森の魔女セルリアの物語は沢山あるとは思いますが……一旦はこれで完結とさせて頂きます。

 また、魔女セルリアに再会できますことを作者としても願って止みません。


 下欄のポイント評価欄(☆☆☆☆☆)でのご評価や、感想欄への投稿、ブクマ、いいね登録等頂けましたら、作者大喜びしますのでよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
端月小みち先生。完結お疲れ様でした! セルリアのように、若いままでいられるのは羨ましいですが、その実、愛する人々との別れや、時代に取り残されていく感覚と向き合わなければならないので、やっぱり複雑な思い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ