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 「神様とな、少しだけ繋がったんだよ、私は。」





 …………はっ?


 なんて言ったんだ? ヤムリは。



 神様と? 

 繋がった?

 何が?



 「そういう顔になるよな。分かるぞ、私も正しくそういう顔になっていたと思うからな。理解はしようと今でも努力しているよ。しかしな、神様、ナディ様と仰るのだがな、その方が言っていた事が真実になるとなぁ。信じなくてはいけないと、そう今は思っているよ。」


 俺たちの顔を見て、してやったりというような、満足げな顔をしてヤムリは言った。

 俺もなんて言えばいいか分からなかったが、先を促したんだ。


 「それで……、なんて言われたんだ?」


 「先ずはな、自己紹介をされた。自分はこの世界を見守ってきた『ナディ』というものだ、とな。その後、時間があまりないと言われたな。チャクラの溜まっている量が少ないとな。それで大事な事だけを伝えると。」


 不思議なことに『嘘だろ?』とはおもわなかった。

 何故か分からないけど、ヤムリは真実を話してるって感じた。

 眼に力が漲っているというか、なにか神々しささえも感じる雰囲気を出していたからかな。

 



 だからその後の言葉にも自然に頷けたんだ。




 「ナディ様はな、こうおっしゃった。『あなたの知っている、ヤクルという人物。彼があなたの元へやってきます。その彼にチャクラとオーラの事を伝えなさい。そして共に修行に励むのです。彼を決して粗末に扱ってはいけません。彼はいずれ私の管理する、七つの世界を救ってくれる存在なのですから。』そうおっしゃられた。」


 「……そうか……。いやさ、信じれないかもしれないけど、俺も何故かチベットに引き寄せられた気がするんだよ。本当なら信じれないような事だよな、ナディ様? のおっしゃっている内容は。でもな、すんなりくるんだよ。俺は自分の意思だけじゃなくここにきたんだってな。」


 正直、どうかと思う。

 こんな内容の話をすんなり聞くなんて。

 でも、さっきまでの輪廻転生の話より、ナディ様の話の方が理解できていた。


 「僕もですね……。なんだか僕もこの為に生きてきたように感じています。何故だろう? ヤクルさんとは今日初めて会ったのに……。何故かお世話をしないと、という感じになっています。」


 「そうだな、チグル。実はナディ様にチグルのことも言われたよ。彼はヤクルの側につけなさいとな。だからまだまだ子供だったチグルを私の元に呼んでいたのだ。普通はリンポチェの世話役に10代の子供がつくことはないからなぁ。他の高僧には不思議な顔をされたよ。」


 「そうだったのですね。かしこまりました。僕は、いや、私はこれからヤクル様の側使いとして動かせていただきます。よろしいですね? ヤクル様?」


 「いや、俺はいいんだけど……。ヤムリ、いいの? チグルがいなくても。そんで、チグル、俺は様つけなくて大丈夫。さっきみたいにさん付けでいいよ?」


 「ヤクル、チグルはお前に付ける。そして心配するな、私も今日からお前の側に付く。本当なら私もヤクル様と呼ばなくてはダメなのかもしれないが……。どうしてだかな、お前とは友達、という感じが強いのだ。」


 「ヤクル様、いや、やっぱりヤクルさんですね。僕もなんでだろ? 神様からのお言葉なのにヤクルさんからは親しみしか伝わってきません。決して高貴ではないというわけではないのですけど……。」


 二人とも、少し酷くない?

 ああ、こちらは所詮庶民ですよ。

 なんなら仕事をクビになって逃げてチベットに来たような、そんな庶民ですけどね!


 「二人、色々言いたいことはあるけど今はいいや。そのままでよろしくな! 俺はヤクルだ。もう日本人の木下矢来ではなくてね。元々日本には帰るつもりはなかったけどな。ここで骨を埋めるつもりで修行させてもらう! これからよろしく頼むよ!」




 そうして俺の第二の人生、チベット人としての人生が始まったんだ。

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