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君の不在証明  作者: 讀茸
第一章 日々の終わり
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第八話 監獄落とし

 それから、ルーアとツウィグと色々な話をした。

 アルカナンに来たばかりの私にとって、訊きたいことは山ほどあった。


「さっきの部屋にいた人達が、アルカナンの中核メンバー?」

「さっき、というか今部屋にいるヤツらだな。俺とルーアは中核メンバーかっていうと微妙だし。まあ、このアジトにいられる以上、普通の構成員よりは中核に近いんだろうが……」

「私とツウィグはあんまり作戦会議とか呼ばれないんだ。いつも、言われた通りに動くって感じ」

「そうなんだ。やっぱり、年齢的なアレ?」


 ツウィグとルーアがアルカナンの運営に深く関わっていない理由として、私は年齢の低さを推測した。

 ルーアもツウィグもまず間違いなく十代。ツウィグに至っては小柄な体型も相まって、十代前半にすら見える。ルーアも精々私と同い年といった所だろう。


「いや……多分、純粋な戦闘能力だ。どういう意図があるかは知らないけど、ボスは周りの人間を人外じみた強者で固めてる。ボス自身も強いしな」

「私とツウィグって一芸あるだけで強くないし。そこら辺で一線引かれてるんじゃないかなぁ」


 あの場にいた全員が強者だというのは、何となく納得がいく。

 私も騎士のライセンスを取得してから、多くの戦闘職と関わってきた。

 特に犯罪者が湯水のように湧いてくるこの街では、自然と戦闘職の需要も上がる。

 私と同じ騎士。傭兵団。魔術師。果ては、聖職者でさえ武器を握る。

 そういった人種を多く見てきた私にとっても、アルカナンの中核メンバーは異様だった。

 立ち姿、視線、纏うオーラ。その全てに剥き出しの暴力性が滲んでいる。私の経験と照合すると傭兵が最も近いが、それよりも刺々しい空気を感じた。

 中でも、最も存在感を感じたのは―――――


「シャルナってさ」


 背の高い青髪の女。

 青という色彩が服を着て歩き出したような彼女は、一際鮮烈な存在感を放っていた。

 それはシンプルに髪色や服装が派手な青色だという話ではない。彼女の圧倒的な存在感に、果ての無い青空を幻視するのだ。

 それは鮮やかすぎる青髪であったり、一目で分かるほど膨大な魔力量であったり、トーキンを始末する際に使用した蒼炎であったり――――


「魔術師なの?」


 まず思い浮かぶ具体的な問いはそこだった。

 シャルナがトーキンを殺す時に使った青い炎。

 普通に考えれば魔術なのだろうが、そうとは思えない何かがあった。

 それは、あまりに自然な動作だったから。

 純粋な発動速度の速さもそうだが、シャルナの放った蒼炎は術式を介した魔術とは思えないほどナチュラルだった。

 全部、あくまで私の所感にすぎないが。


「……あの人、は」

「え~、シャルナさんはねぇ~」


 ツウィグとルーアが同時に口を開いた。

 発言が被ってしまったようで、二人とも一旦口を閉じる。

 少しだけ気まずそうに視線を交わす二人の様子は対照的だった。

 暗く陰の差した表情をしているツウィグ。反して、ルーアはほんのりと顔を赤く染めていた。


「シャルナさんはね、別に魔術師じゃないんだよ。分かるよ? あの蒼炎を見たんでしょ? 無詠唱魔術にしか見えないよね~。でも、あれってただの体質なんだって」


 シャルナについて話すのはルーアの方になったようで、彼女は早口でまくし立てた。

 心なしか、ルーアの語りには熱が入っているように感じた。


「体質?」

「そう。シャルナさんは竜種と人間のハーフ、竜人なんだよ。だから身体機能も半端なく高いし、体内で蒼炎を作ることもできるの。めっちゃ強くてめっちゃ美人だから、アルカナンにもファンがいっぱいいるんだよ」


 ルーアはうっとりとした表情で語る。

 その表情を見るだけで、彼女もシャルナのファンなのだろうと分かる。

 まあ、シャルナに華があるのは、私にも理解できる。背が高くスタイルも良いし、綺麗な青髪も目を惹く。

 ただ存在するだけで、その鮮烈な姿が瞼に焼き付く。

 シャルナとはそういう人間だ。


「竜人……」


 竜種との人間のハーフ、というのはにわかに信じ難い。

 だが、そう思わせるだけの迫力がシャルナにはある。

 竜人だなんていう馬鹿げたバックボーンに真実味を持たせるほど、彼女のオーラは鮮明な青を纏う。

 私達がそんな会話に花を咲かせていた時だ。

 医務室の扉が勢いよく開け放たれた。


「おーい、医務室組ー。作戦会議終わったぞー」


 医務室の扉を開けたのは、ちょうど話題に上がっていたシャルナだった。

 鮮やかな青髪をたなびかせて、医務室を覗き込んでいる。


「シャ、シャルナさん!?」


 顔を赤くしてわたわたするルーア。

 憧れの人の話をしていた所に本人が現れたため、どことなく気恥ずかしいのだろう。

 対して、ツウィグの顔色はやはり優れない。シャルナの話をしている時も、ずっと口を噤んでいた。


「明日の作戦。お前らは遠征だから、なんか準備とかあったらしとけよ。まあ、どうせ身一つだし、何もねーと思うけど」


 シャルナは雑に指示を出す。


「遠征?」

「さっきボスが言ってたろ。ソルノットの南東部を本格的に攻めるって。ツウィグとルーア、あとロウリは私と一緒に監獄落としな」


 監獄落とし。

 一般社会では中々聞かない単語だが、文脈から意味は推測できる。


「あそこに捕まってるカス共軒並み解放して、騎士団にぶつけてやんだよ」


 私は予感した。

 ソルノット史上最大級の犯罪を。

 大陸でも類を見ないほどの悪意が、ゴートウィストの善意を押し流す未来を。

ルーア・ラーケイプ、多分ホストとかにハマっちゃうタイプ

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