クソったれの人生
俺の名前は古城波瑠。 平凡にも及ばない人生をだらだらと過ごし気がつけばもう三十歳だ。 三十代って大人なイメージだったけど十代の頃と頭の中は何も変わらない。 見た目が変わるだけで年齢なんてただの数字だって事に気づいた。 人に誇れるようなものも何もない俺は彼女いない歴が年齢で結婚もおそらく出来ないだろう。 高校を中退してからは働いたり働かなかったりで仕事も長続きしなかった。いまだに生活を繋ぐので精一杯だ。 今は半年ほど前から建設会社で働いているが微妙な感じで辛い。 身体を動かす現場仕事は気楽でいいけど人間関係は気楽じゃない。 人見知りの俺には何処に就職しても同じ問題が付き纏う。 社長は二つ歳上の同年代だが社員からの人望も厚く尊敬出来る人だ。 何でこんなに差がつくのだろうかと思ってしまうけど羨んだところで仕方がない。 自分を拾ってくれた社長に恩を返したいが毎日辞める事ばかり考えていた。 そして今日も最悪な一日が始まる。 俺が勤めているエスポワールは主に塗装工事を行う会社だ。 先輩の片桐とゆう一つ年下の男にバカにされイジられる毎日を送っている。 そのせいで若い職人達にも相手にされず無視されるような関係だ。 今日は雨が降っていて全員休み。 俺だけは風が強いから足場が倒壊しないようにと仮設足場に張っているメッシュシートを外す仕事を任された。 いつも会社の悪口ばかり言っているくせに社長の前では要領が良い片桐。面倒くさい事は片桐の嫌がらせでいつも押し付けられる。 冷たい雨の中でカッパを着て一人で作業していると情けなくて泣けてきた。 頬に感じるのが涙なのか雨なのか分からないが鼻水まじりで思わず感傷的な気分になる。 「うぅ…さっ寒いな、ちきしょう」 『ツル…ンッ…ダッダダダダッダダ』 とっとと終わらせて帰ろうと思って焦ったわけではないが階段を降りる時に俺は勢いよく足を滑らせてしまった。 『バァタンッ!!』 メッシュシートを外していた仮設足場の隙間からからそのまま地上に転落。 あまりの衝撃で頭の中はテレビ画面に映る砂嵐のようになっていた。今にも途切れそうな意識の中で嘆いた。 幸せすら望む事なく生きてきた人生の最後が転落事故なんて本当に何なんだ。 今さら後悔ばかりが浮かぶ。だんだん痛みも感じなくなって頭の中に意味不明な幻聴が耳鳴りのように響いた。 逃げるように実家を出て以来ずっと会ってない母さんに会いたい。 女手一つで母子家庭でも何不自由なく育ててくれた母さんにいつか親孝行したかった。 このまま死んでしまったら本当に親不孝な息子だ。 まだある。 何年も前に一度しか会った事がないのに朧げな記憶を何度も思い出してしまう事…。 何故か忘れる事がない女の子がいたはずなのに名前すら思い出せない。 死ぬ間際に思い浮かぶのが名前も覚えてないような女かよ…。 このまま死ぬなんて本当にクソッタレの人生だ!! 俺の意識は完全に途絶えた。 ………………。 ………。 …。 『ードクンッー』 …。 ………。 ………………。 どのくらいだろうか。 時間の流れが全く分からない。死んでもおかしくないとゆうか生きているのが不思議な状況。 地上八メートルから転落したはずの俺は目を覚ました。 十年前の世界で・・・。