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第9話 世界樹の子

 翼はリーフをギュッと抱き締めた。


「いたいの葉っぱいる?」


リーフは自分の事で、翼が辛いとは理解出来ていなかった。


でも、翼が辛いなら痛くても自分の葉っぱで元気ななって欲しいと思った。


「ありがとう。でもどこも痛くないよ」


「落ち着かぬか。世界樹になるとしても1000年後だ」


「え?」


「そなたが100年後に死んで、さらに900年経ってからだな」


「いや、俺は100年も生きられないけど」


「人間は短命だからね」


アルルが頭の周りをくるくる回った。


「なにっ、ジイに100年遊学してくると言って出てきたのに」


「ははっ、長生き出来るように頑張るよ。でも1000年後って言っても」


1000年後に、リーフが木になってしまうのは、やっぱり嫌だと思った。


「出来るなら俺が永遠の命を手に入れて、世界樹になったリーフの側にいてやりたい」


「永遠に生きられる生き物なんていないわよ。妖精だって代替りするんだから」


「うむ」


だったら、俺の子孫がリーフと旅をして、世界樹になったら、そこに家を建てて暮らせばいい。


俺に子供が出来なくても、ユキの子だっていい。


キマイラの麓の村だって、俺達の田舎みたいなものじゃないか。


世界樹になっても、リーフが寂しくないように土台を作っておいてやりたい。


「まあ、そんなに早まらないで。世界樹の子が1000年生き続けるのは稀なのよ」


「どういう事だ」


「うむ。リーフスライムは、それほど強い魔物ではない。まず外敵にも弱い」


何十、何百のリーフスライムの中で、世界樹になるのは数本あるかないかだと言い伝えられている。


でも、それはこの世界のどの生物にも言える事だ。


「でも俺がいる。ユキもいる」


「うむ」


「リーフも」


リーフがピョーン、ピョーンと跳び跳ねて、自分をアピールした。


「そうだ。リーフもいる。力を合わせて生きていこう」


「ふ~ん、あんた人間にしては面白いわね。気に入ったわ。あたしも一緒に行ってあげるわよ」


「いえ、結構です」


「うむ、羽虫はいらん」


「何ですって」


アルルは、ムキーっと両腕を下に向けて怒りのポーズをしているようだ。


「ないない」


「リーフもこう言ってるので」


「なんて言ってるのよ」


「え?今、いらないって言ったじゃないか」


「むむむっ、本当に通じ合ってるみたいね。でもあたしが一番長生きなのよ」


「いや、必要なのは長く一緒にいてくれる人じゃなくて、誰が一緒にいるかだから」


「腹が減ったぞ。マッド狼の肉を食べるのか」


「収納全オープン。いいや、解体だけして、毛皮を剥いで干しておこう。高く売れるぞ」


解体はあっという間に終わり、木の枝に大きなマッド狼の毛皮が干されていた。


翼は焚き火台の火をつけると、保存しておいたご飯を取り出して、鉄板で薄く伸ばす。


モヤシ、キムチ、小松菜、ひき肉、卵を用意した。


野菜と挽肉を別に炒めて、卵は目玉焼きにする。


ユキには大きな葉を皿にして大盛、翼とリーフは普通の皿にこんもりよそる。


お焦げご飯に具材をのせて、最後にコチュジャンと卵焼きをのせて出来上がり。


「これをよくかき混ぜて食べる」


翼はビビンパを混ぜてやった。


「そちの飯で、混ぜて食べるのは始めてではないか。んんんっ味が絶妙に絡み合って旨い」


焦げた米が半熟玉子と相まって、旨いと唸っている。


「んまい」


リーフはユキの口真似が好きで、もう本当に仕方ないなと翼も黙認する事が多くなった。


「それはよかった。ほらっ」


アルルにも小さな小皿で石焼ビビンパをよそって出してやる。


「なんなの、これ?」


「あ~おれ以外スプーンがいらなかったから、これでいいか」


翼は近くにあった枝を付けた小さくて硬めの葉っぱをスプーン代わりにアルルの皿にのせた。


「混ぜて食べるのね。んんっ、なんて刺激的なのよ。妖精がこんな物食べていいと思ってるの」


アルルは文句を言いながら、ガツガツ食べている。


「俺とユキはワイン、リーフはジュース、アルルは?」


「ワインってお酒じゃない。妖精が人間とお酒なんて」


「じゃあ、葡萄ジュースで」


「飲むわよ。飲めばいいんでしょ」


面倒な子だな。


翼は自分もワインを楽しみながら、あっという間に片付けをした。


「じゃあ、俺達は先に進むから」


「分かったわよ。でも困った事があったら森に入って、あたしを呼びなさいよ」


「ああっ、またな」


「うむ」


「またね」


リーフが腕を2本頭の上に出してバイバイしている。


うちの子、可愛い。


アルルは森の上空へ昇って光って姿を消した。


◇◆◇


 リュシオン王国の手前で、食事を済ませて翼は片付けをしていた。


「え~ん、え~ん」


このめちゃくちゃ聞き覚えのある泣き声は┅┅。


「リーフ、どこだ?」


今度は何だと、リーフを探し始める。


すると木の上から泣き声がした。


木登りをして降りれなくなったようだ。


「リーフ降りておいで」


翼は、飛び降りて大丈夫だよとリーフに向けて両手を広げた。


「こあい、こあい」


リーフが木の上で怖い怖いとブルブル震えだした。


翼は怖がるリーフを見かねて、どうにかこうにか木に上っていく。


ああっ、そう言えば木登りなんてした事なかったよ。


「リーフ、迎えに来たよ」


翼は自分も木の幹にしがみつきながら、リーフを探した。


「なっ、何で下にいるんだよ~」


なんとリーフは、木から滑ってしまい一人でに落ちてユキがキャッチしていた。


リーフを助けるのに夢中で忘れていたが、翼は高所恐怖症だった。


「ユキ様、助けて下さい」


「おちてもないない」


「え、落ちても痛くなかった?ユキ様が助けてくれるのですか?」


「うむ」


「アニぽ~ん」


「よし。ぽ~ん」


ドスンっ


「痛えっ」


ユキがキャッチしてくれたけど、そもそもユキの筋肉と骨が当たって、凄く痛かった。


「アニいたい葉っぱ?」


「俺は大丈夫」


翼は涙目で強がって見せた。


リーフに心配されてしまった。


情けない。


「リーフは痛がってないのに。そなたは弱いのだ。くくくくっ」


「どうせそうですよ。ちょっと休憩しよう」


翼はユキの上から下りた。


「ステータス全オープン」


【名前 ユキ

【HP 6530/6800

【MP 4850/5150

【スキル 神獣

【種族 キマイラの王



【名前 ツバサ

【HP 92/250

【MP 101/125

【スキル テイマー

【従魔 ベビーリーフスライム キマイラの王

【職業 料理人



【名前 リーフ

【HP 155/170

【MP 79/95

【スキル 回復

【種族 ベビーリーフスライム


またデタラメな数字でHPとMPが上がってるんですけど。


まあ、ユキが倒してくる獲物が、通常のレベルじゃないからな。


でも、俺まで人類捨てちゃってる感じがする。


「いたいいたい」


「大丈夫。何でもないよ。って言うか、俺回復しなきゃヤバいじゃん」


収納から樽を出してコップにワインを注ぐ。


ゴクゴクゴク



【名前 ツバサ

【HP 192/250

【MP 101/125

【スキル テイマー

【従魔 ベビーリーフスライム キマイラの王

【職業 料理人


おっ、ワイン一杯で100上がるようになってる。


レベルが上がって、俺の作るワインの回復力も高まったのか。


「ん?」


ステータスを閉じると、目の前にユキとリーフがいた。


「何だ。休憩でワインを出してくれぬのか」


「ワインワイン」


「分かった、分かった。ただしリーフはジュースな」


樽からボールにワインを注いでユキの前に出す。


「うむ」


「ほら、リーフにも」


「ジュースジュース」


「もうすぐリュシオン王国だな」


「うむ」


「どんな国なんだ?」


「100年前は」


「待って、100年前の情報って役に立つの?」


「うむ」


「とりあえず教えて」


「隣国のマケドニヴァとよく戦争をしていたな」


「最悪だ。今は、どこか戦争をしている国ってあるの」


「隣国と接している国は、いつ戦争になってもおかしくなかろう」


「そう言えば俺、戦争があるのは知ってたんだ。でもゲームでの戦争とは違うよな」


王国に着く前から怪しい雲行きになってきた。


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