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第12話 リーフを召し上がれ

 調理には火を使うので、街から出たところで食事の準備をする事になった。


「食材の補充も十分にしたし、チーズフォンデュならぬチーズ掛けいきますか」


翼は長袖を腕まくりすると、収納を全オープンさせて買ってきた食材の一部を冷蔵庫に移した。


焚き火台に火をつけて、鉄板を熱しておく。


今日手に入れた魔氷サイの肉をサイコロ状に切って、きつね色になるまで焼いていく。


付け合わせの野菜はキャベツとモヤシで、肉の横で炒める。


味付けは両方とも塩コショウで、肉にだけコチュジャンをたらす。


フランスパンに似た長細いパンを3センチの厚みに切って鉄板の上にのせておく。


自分用にサイコロ状のパンも焼いておく。


そして大きな二つの耐熱皿を鉄板の脇に置いて、たっぷりのチーズと牛乳を入れて溶かしておく。


「さあ、出来たぞ」


ユキには巨大な葉っぱをお皿にして、輪切りのパンと肉と野菜を山盛りに盛り付ける。


「今日も旨そうだ」


ユキが早速食べようと口を開けた。


「ストップ、まだ食べたらダメだよ」


「お預けか」


「そんな言葉どこで覚えてきたんだよ」


「街で食事を取り上げている極悪人がいて、お預けと言っていたのだ」


極悪人って、飼い主がペットに待てを教えてただけじゃないか。


「そうじゃなくて、ここに温めたチーズを掛けるんだ」


翼はユキの葉っぱのお皿に盛られた料理に、上から溶けたチーズをこれでもかって言う程たっぷり掛けてやった。


「もういいか?もう食べていいのか?」


「どうぞ、召し上がれ」


翼はユキ用のボール皿にワインをいれて食事の隣に出した。


「リーフめしあれ」


自分も食べたいと言うのを、翼の真似をして自分を召し上がれと言っている。


「ぶっ、それじゃあリーフが食べられちゃうぞ」


「リーフもリーフも」


ヨダレでも垂らしそうな勢いのリーフに、ハイハイと言いながら専用のお皿に料理を盛り付けた。


「ここにチーズをたっぷり垂らします。どうぞ召し上がれ」


リーフにはコップにジュースを注いでやる。


「バクバクバク」


リーフは両腕を出して料理を摘まみながら、猛スピードで食べ始めた。


「さあ、俺も食べようかな」


翼は自分用の皿に料理を盛り付けると、フォークでパンを刺したまま鉄板の上にのった耐熱皿に入れてしまう。


フォークを取り出すとチーズがたっぷり絡まったパンが出てきた。


「あ~ん、むぐむぐ。旨すぎる」


翼は一口目が終わるとフォークに肉、野菜、パンを刺してはチーズをたっぷり絡めて口に運んだ。


口休めにワインを飲むと、チーズの濃厚さをワインがさっぱりと洗い流してくれた。


「これはワインが進むなぁ」


薄味にした野菜も、ちょっぴり辛い肉もチーズが濃厚でまろやかなのでよく合う。


「そうだ、あれがあったな」


翼は冷蔵庫から調味料を取り出した。


焼いた輪切りのパンに肉と野菜をのせて、ピザソースを掛ける。


その上に溶けたチーズを掛けたらピザの出来上がり。


「あ~んっ」


ピザを食べようとしたら、二つの視線に手が止まる。


「何だよ」


「それは何なのだ」


ユキが非難の目を向けている。


「アニなに」


リーフまで興味津々で見つめてくる。


「分かった。分かりました」


翼は手に持ったピザを一口で口に放り込むと、口をモグモグさせながらピザを作り始めた。


「ほら、ユキの分だぞ。こっちはリーフの分な」


翼は空っぽになったユキとリーフの皿に、大量のピザパンをのせてやった。


「赤いソースが加わると味が別物になって、また旨いのだ」


ユキは満足そうに平らげていく。


「ん~ん~」


リーフは翼の真似なのか両腕を出して、頬っぺたを押さえて堪能しているみたいだ。


「満足してもらえたみたいで良かったよ」


ユキとリーフの満足そうな姿を見守りながら、翼も食事の続きを始めた。


ちなみにザクロを買った店でくれたオマケは果物じゃなくて、蜂蜜の瓶詰だった。


異世界独自の果物が良かったけど、蜂蜜ならリーフが喜びそうだ。


今度、何か作ってやろう。


◇◆◇


 3日後、翼は道具店に頼んでいた包丁を取りに街へ出掛けていった。


「こんちは。包丁出来てますか」


翼は、声を掛けながら店内に入っていった。


「おおっ、出来てるぞ。久しぶりに良い包丁を作らせてもらった」


店主は、用途別に大きさの違う包丁を並べて見せてくれた。


魔物の肉解体用が3本と調理包丁が3種類で6本と、武器として携帯出来る長ナイフだ。


「凄いです。自分じゃ説明出来なかったけど、まさしく俺が欲しかった物です」


翼は、最高の相棒を作ってもらえたと大喜びだ。


「そんなに喜んでもらえて、ワシも嬉しいよ」


店主は鼻の下にこしらえた髭を触っている。


嬉しかったり、照れると髭を触る癖があるのかもしれないなと翼は思った。


「じゃあ、頂いていきます」


「おおっ、また面白い素材でも入ったら持ってきてくれ」


「はい、そうします」


魔物用の解体包丁を手に入れて、これでユキがどんな魔物を狩ってきても大丈夫だと包丁をマジックリュックにしまった。


◇◆◇


 翼は食事が終わった後に、手に入れたザクロの皮を剥いて果実酒の出来る樽に放り込んでいた。


この樽は翼が全職業VROゲームをしていた頃に手に入れた貴重な物で、果物を潰したり混ぜ続ける必要もない果実酒の作れる魔法道具なのだ。


今まではワインしか作れなかったけど、ザクロの果実酒を作ったら瓶に詰めてマジックボックスに入れておけば好きな時に飲む事が出来る。


「何を作っているのだ?」


お腹いっぱいに食べたユキが、暇潰しに声を掛けてきた。


「いつもは葡萄の酒を飲んでるけど、この間買ったザクロで果実酒を作ろうと思ってね」


「おおっ、ザクロの酒か。楽しみだ」


「リーフも」


言うと思ったよ。


「リーフには、リンゴのジュースをいれてあげるからな。そうだ、今飲んでみるか」


「のむ」


良かった。リーフは翼とユキが食べる物は何でも真似したがるが、お酒はさすがにマズイだろう。


作っておいたリンゴジュースを冷蔵庫から出してコップに注ぐ。


「はい、どうぞ」


翼はリーフにリンゴジュースを手渡した。


コクコクコク


リーフは腕のように体からストローを作って、上手にジュースを飲んでいく。


「我も飲みたいのだ」


今度は、ユキがリーフの飲んでいるジュースを飲みたがった。


「ワインをいれてやってもいいぞ。ジュースでいいのか?」


「うむ。リンゴのジュースを飲んでみたいのだ」


リーフだけじゃない、人が飲んでいる物は気になるんだよな。


「OK。俺もジュースを頂きますか」


「リーフも」


「はいはい」


それから翼は大きなボウル皿とコップ二つにリンゴジュースを注いで、3人分のリンゴジュースを用意した。


「甘くて旨い」


「んまい」


「まったく仕方ないな」


ユキの口癖がリーフに移ると困るけど、せっかく喜んでるんだ小言は止めておこう。


それはよく晴れた日の午後の出来事でした。









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