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せつなる願いですかね……

 準備でき次第出発との事で、私とシリウス達も宿の女将さんに挨拶を済ませると揃って宿を後にした。


 なるべく速い移動のため少数精鋭で来たとかで総勢十二名だけど、私には隊の基本人数とか分からないんだけどね。


 兵達はケットシーのシリウスよりも、私の方に面食らっているような感じだった……アジア系の顔立ちが珍しいのかな、やっぱり……



 私、馬に乗るの初めてなんだけどって言ったら隊長さんの後ろに乗せられてしまった、無理! 視界が高すぎる…………


「馬車とかないですかね?」って聞いたけど、急ぎなので却下されてしまった。


 シリウスが馬に話しかけ、私の後ろに乗ってくれて、やっと何とか気を落ち着ける。



 ルーチェとミルトは自分で走った方がいいって、先に走って行ってしまった。


「例え落馬しても状態異常耐性で怪我しないから安心しなよ~」


 何さらっと怖い事言ってるのかな? シリウス君、そろそろ泣くぞ。




 でも最大の問題は高さやスピードでは無かった、問題は私がどんなに怯えていようが、二時間程しか起きていられない事でした~


 魔法で運ぶとか固定しようともしたけれど、何故だか私自身に魔法を掛けようとしても掛からず、何度もスイッチが切れたみたいに寝て落ちかけては、馬を止めてと、いっこうに距離を進めないため何と隊長さんにくくられてしまった。


 恥ずかしいのも起きてる間だけなのが救いだったわ……確実に黒歴史を重ねてる。シリウスは苦笑いしてるし、隊長さんもグッタリしてるしで、いたたまれないです。でも起きていられないんですよ、これが。



 日暮れ前に野営するとかで森の中にとまった。


 じきにルーチェとミルトも合流したけど、やっぱり笑ってらっしゃる、何も言ってこないのが救いですよ………




 私は木に寄りかかってシリウスを見やる。「これが何日も続くの? 魔法で、ひとっ飛びできない?」


「まだ無理だね~」


「まだ?」それ以上は怖くて聞けません、どこまでが冗談なんだか…………




 翌日は、もう高さにも慣れただろうと半ば強制的に、シリウスと二人で乗せられてしまった。


 懲りたんですかね、やっぱり。心なしか目を合わせてくれない。




 今日も唐突に眠って落ちかけては、シリウスの魔法で受け止めてくれてたけど昼休憩の時に「僕が馬さんに、くくりつけようとしたら隊長さんが、それは可哀想だって……たしかに馬さんも災難だよね」


 隊長さんは慌てて「イヤ、イヤ! ポン殿がお気の毒だと申したのです、断じてそのような……」


「かえすがえすも急ぎという事と、ケットシー殿には失礼になるかと、馬車を持って来なかったのが悔やまれます………申し訳ない」


 私はうらめしそうにシリウスをにらむが、シリウスも負けじとにらんでくる。「寝ちゃうのは仕方ないけど、いびきはうるさいし寝相は悪いし僕が恥ずかしくなっちゃうよ」


 あれ、これ結構怒ってる? これでも起きていようと頑張ってるんだけどね(泣)




 ちょっと一人になりたくて、その場を離れて木洩れ日のさす草むらに座る、やっぱりシリウスもついて来たけどね。


 コップの水を一口飲み、しみじみと「コーヒー飲みたい……」つぶやいた瞬間、手の中にあるコップが温かくなり夢にまで見た良い香りが漂ってきて、ハッと手元を見る。




 そこには、いつも飲んでたホットラテが……夢なら覚める前に飲むべし、うんまーい! 五臓六腑に染み渡る〜


 一気に飲み干してシリウスの顔を見る、シリウスも目がキラキラしてる。


「お水! もっと、お水欲しい!」と言うと、目の前に皮水筒が突き出された。




 見るとピクシードラゴンとエルフさん!


 実はルーチェ達に、並走して来るエルフとピクシードラゴンが居るって聞いてたんだけどね。


 さすがエルフさん、美形です、でも今の私はそれどころじゃないんですよ。




 シリウスも警戒するどころか、心ここにあらずでソワソワしている。


 チラッと見て水筒を受け取ると、コップに水を注ぎ念じる、と、またもやラテに! きゃ〜やったね!


 エルフさんもクンクン匂いを嗅いでる、コーヒーの香り最高〜




 シリウスもエルフさんそっちのけで「ネェ、ラテが出来るんなら、あれも出来るんじゃない? あれ!」キラキラした目ですがりついてくる。


「あれ?」少し考えると閃きました。




 エルフさんに向きなおると「お兄さん、干肉か干魚なんか持ってません?」


 エルフさんは、プッと吹き出すと鞄から干肉を取り出し、渡してくれた。


「ありがとうございます」と言って代わりにラテを渡した。


「良かったら飲んでてください」




 それから、いつの間にかシリウスが出していた皿に干肉を入れ念じる……はい、いっちょ上がり!


 皿の中にはクリーム状の物が。


 そう、あれとは全ての猫科動物が大好きな、猫が思わずキスしたくなる美味しさ! ことキスルンルンだ。




 シリウスは、おそるおそる皿を受け取るとひと舐めして、パーッと顔を輝かせた「美味しい〜! 似て非なるものだけど……これは、これで、いい!」


 食べた事なくても何とか作れるのか~


 ピクシードラゴンも羽ばたいて、シリウスの横でホバーリングしているのに気がついて、シリウスが皿を差し出してあげると一口食べてからは夢中で食べてる。


 さすがシリウス、どんな時でもジェントルね。




 エルフさんもラテを一口飲んで、カッと目を見開くと後は一気に飲み干してしまう。


 シリウスは、もう一つコップと皿三枚をアイテムボックスから出してきた、だよね~さらに干肉を出してもらう。




 私が寝ている間に食器や着替えなんかを村で調達していてくれたそうで、アイテムボックスってめちゃ便利。うちの子、なんて気がきくんでしょ。


 お金は長老猫が人間の国で必要になるだろうと持たせてくれたそうだ、さすが長老猫様。今度、お会いしたら御礼しなければ。




 そこへ、シリウスにタックルする勢いでルーチェが飛びこんで来る。


「それ何? シリウスだけズルイ〜!」ミルトも鼻をヒクヒクさせてる。


 二匹にも出してやると、口々に「うま〜い!」と、ヒゲをぷるぷるさせてる。食べている姿を永遠に見てられそうだわ……


「何これ!? とろける〜」それからは全員ありったけの材料を食べ尽くすと、やっと落ち着いて話し出した。





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