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王都からの迎え

 3日間も寝たっていうのに、私は二時間程起きていたが、また寝てしまった。



 起きては食べて、また寝てしまうの繰り返しで、どうしたんだ私の身体!


 シリウスは見るたびに元気になっていくというのに、ウウッ〜悲しいです。



 食事しながら聞いたところによると、なんでも今の王になってから隣国は人間至上主義になって、獣人や魔物達を迫害し、この国にも度々戦を仕掛けてくるとかで、この国の王はなんとか戦を回避しようとしているが隣国の王に理屈は通らず難儀しているとか。



 当然ケットシー達も酷い目にあっていて、ルーチェやミルトが逃げれたのはラッキーだったのだとか。


 あの華奢で、可愛いルーチェちゃんを〜! 思わず拳を握りしめてしまう。


 すでに兵達も疲弊しているし、それは隣国とて同じなのだとか。



 この国は温暖で農業が盛んだったらしいが、戦で男手が足りず今では、自給自足がやっとの状態らしい。


 宿の女将さんも家族を亡くされたそうだ……



 私も大学卒業間近の頃に、両親を相次いで亡くして、シリウスと出会うまでの半年程の記憶があまり無い。


 話を聞くにつけ、私のこめかみがピクピクしてくる。


 これ隣国の王が居なければ暮らしやすくなるんじゃない?





 3日位と言ってたけど2日待たずに兵達が、迎えにやって来た。


 どうやら予備の馬とで、早駆けして来たそうだ。



 私達の部屋に案内されて入って来たのは、本当に兵隊なの? 俳優とかじゃなくて?って位のもの凄いイケメンだった。


 ゆるいウェーブのかかった黒髪に緑の瞳、手足も長くてスラリとしている。


 後ろにはもう一人、金髪碧眼のイケメンが…目の保養になる〜



 後で聞いたところによると、まだ二十代の若さで隊長になられ王様からの信任も厚く、いずれは将軍にもなるだろうという方だそうだ。



「おはつにお目にかかります私、隊を任されていますグランツと申します、どうぞよしなに、こちらは副官のカナルです」二人揃って会釈するのも美しいわ。


「此度は秘密裏に王城にお連れせよとの命により急ぎ参りました、ケットシーのシリウス殿とお見受けいたします……して、お嬢様は?」そう言って部屋を見回す。



 私はポカンと間のぬけた顔になる。副官のカナルさんはギョッとして、隊長さんの袖を引っ張っているが、とうの隊長さんは気がついていないようだった。



 シリウスがプッと吹き出したので、少しにらんでやる。


 まだ笑いをこらえるように肩を震わせながら私を指差す、ていうか正確には爪でね。後で覚えとくように。



 そこからは隊長さん大慌てで、しどろもどろになってて何か可愛いから許す、きっとパンツスタイルだからだね、だよね?


 副官の方まで肩が震えてるけど気にしない、気にしたら負けだもん……



 私は転移した時の白いチュニックブラウスにベージュのクロップドパンツ姿で、ポニーテールは寝てる間に斜めになってるのが急に気恥ずかしくなった。



 副官が申し訳なさそうに「少女に対して、なんと失礼な事を…うちの隊長は優秀なのですが何と申しますか……まったく女性の扱いが分からない武骨者でして…」


 隊長さんは副官の言いように、顔を引きつらせている。



「……少女?あの…私、もっといってまして……二十八歳です」


「エッ……た、隊長と同い年⁉」


 今度はカナルさんが、あたふたしだした。


 ずっと笑い転げてたシリウスが急に真面目な顔になった。



「もしかしたら……僕を助けてくれた頃から、ほとんど年をとっていなかったかも………従魔契約したし、ね…」


 シリウスは小首を傾げ微笑むが私が固まったままなので、今度は目をパチパチさせて上目遣いで見上げてくる。



 私はスンッと鼻をすすり上げた。

 ずっと若く見えるって言われる度に、リップサービスだと思って本気で聞いてなかったわ……


 本来なら、ほとんど老化しないって女性の夢みたいな事だと思うんだけど……なんか違うっていうか、ここだと幼さなく見え過ぎるみたいだし……複雑な気持ちなんだけど。あの頃って……二十一、二十二歳になってたっけ?



「…ア〜ッな、なんとお呼びしたら?」隊長さんが咳払いして聞いてくれたけど。


「あっ! ポンで」私が慌てて答えると、またもや隊長さんは目を瞬いた。



 シリウスがまた吹き出す「まあ、あだ名で通すのもの有りか〜」私が不思議そうな顔をすると、うなずいて見せる。


「術によっては本名が必要なのも有るからね」そういうものなの?



「誤解されるのも無理は無いです……彼女の居た異世界は時とともに男女の境界が無くなっていってまして、女性がズボンを履くのは勿論、短髪にしたりするのは普通の事ですし、男性が化粧したり時にはスカートを履くのも見た事があります(テレビでだけど)」


「なんと! そのような所が……(怖ろしい)」隊長さん、最後の言葉はなんとか呑み込む。


「彼女が奇妙に見える事も多々あるかと思いますが、よろしくお願いしますね」シリウスが、めっちゃ大人っぽいんですけど……


 私を振り返ると「こっちでは女性は、髪も長くてロングスカートだけなんだよね」それは色々、不便そうだよね………



「パンツスタイルのままじゃ駄目なの?」


「いや、良いと思う……動きやすいし、素性は分かりにくいほうがいいよ」私はホッとした……ロングスカートの裾を踏んで転んでばかりいる自分が目にうかぶ………



「御迷惑おかけしますが、よろしくお願いします」と頭を下げる。


「では御用命が御座いましたら何なりとお申し付けください」


 何とか仕切りなおして隊長さんも会釈してくれる。


 異世界生活……大変かも……………大丈夫?私?









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