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自治領への侵入

 カナル副隊長とケットシーのボーは急遽、作られた櫓の一つから広場前のモニターを見つめていた。


 何度かモニター設置は、まずかったのではと思う場面もあったが今は迎撃の準備が出来る事に感謝していた。奇襲はするのは好きだが、されるのは御免だ。


 既に迎え撃つ準備は整っている。


「それにしても石舞台前に、あれだけの数を投入するとは……此処にも、襲来すると見た方がよいだろうな……」


「……戦いは…避けられそうもないよね………」


 ボーはため息をついた……何とか戦わずに済む方法はないかと模索していたが、諦めるしかないのが残念だった。


「ポン殿は嫌がるだろうが殲滅させる気でやらないと、一般人や非戦闘員を守りながら戦うのは我々とてきついからね……」


 ボーを慰めるように声をかけるが、カナルとて出来れば戦わずに済めばと思っていたのだ。だが、頭を切り替え腹をくくった。


 既に各隊に念話の出来るケットシーやクーシーが配備され、情報の共有も出来ている。




 石舞台の結界が解除され飛び立つ蝶の儚さに、どこか物悲しいような幻想的な光景に見入りそうになる。


 しかし石舞台の爆発にポンとシリウスを心配する間も無く、自治領の上空に幾つもの転移魔法陣が浮かび上がった。


「迎撃用意!」カナル副隊長が伝令魔法で一斉に号令をかける。


『来たよ!』ボーも念話で一斉に伝える。


 多分、フェリクスは奇襲のつもりだっただろうが……魔法陣は下手に干渉するよりは、発動させてしまった方が対処の仕様があるのだ。更には魔法陣が展開出来た事で油断してもらいたい。




 自治領前には魔法陣から次々とオーガにオーク、ゴブリン達が現れて来る。その数は少なく見積もっても一万は下らないだろう。


 オーガ達が自治領に足を踏み入れる前に侵入させないための赤の障壁を展開させると、屋根や櫓から弓部隊が一斉に矢を放つ。


 火魔法の得意なルーチェと雷電隊の弓兵であるマルスとセリューもファイヤーアローや雷魔法を纏わせて飛ばす。


 たちまちオーガやオークが感電して昏倒したり炎に包まれて倒れていく。


 迎撃を予想していなかったのだろう一部の者は逃げ出したが、それでもかなりの数がまだ向かって来る。


 モニターで見た限り、オーガもオークも洗脳されているようには見えなかった。やはり好戦的な種族なのか、単にバカなのか。




 オーク達の後ろから魔導師達に囲まれてフェリクスが現れた。


 エルブ王子を解放しても、やはり止める気は無いという事か……その判断を後悔させてやる。




 洗脳されていても元々が優秀な魔導師達だったのだろう、時期に障壁を破られるとオーガ達がなだれ込んで来た。


 フェリクスと魔導師達が自治領内に入るのを待って、今度は出れなくするための青の障壁を展開させる。今度こそ、逃がしたくはない。


 土魔法を使える斥候のエルとミルトが、フェリクスの後ろに大穴を開けると後続のオーガ達が落ちていく。途端にやかましく悪態をついているのが聞こえてきた。


 我先に何とか落し穴から這い出ようとするのだが、ストーンアローに頭を弾かれるはストームで飛ばされて来たオーク達が上に落ちてくるはで、穴の中は大騒ぎだった。


 ただ全員が思うのは『話と違う! 簡単に制圧出来るんじゃなかったのか⁉』という事だけだった。




 先ずは魔導師達の洗脳を解いてしまいたい。所詮オーガもオークも力押しなだけで、厄介なのは魔導師達と能力の分からないフェリクスだった。


 クーシー達も武装色である深緑色になると、縦横無尽に走りまわる。オーガ達はあまりの速さに何に転ばされたのかも分からないままに、仲間同士で殴り合う者まで出る始末だ。




 フェリクスの注意を引くように、派手に剣で戦う剣士と槍部隊達。誰一人としてオーガやオークに怯む者はいなかった。


 メーアの剣技は元々が兵達を鼓舞する性質のものだ。戦女神の姿に兵達の士気は更に上がっていく。


 メーアにとっては後ろをレオンが守っていてくれると思うだけで、どれ程に心強く無敵のような心持か……まさにメーア自身を鼓舞するのがレオンの存在なのだ。




 この隙に隠密行動にたけた者が動く。


 ケットシーのカイルは影の中に潜むのが得意だが、今は一緒にココも入れられるようになった。


 二匹は最後尾の魔導師の影からそっと浮かび上がると電撃を送り、昏倒させると同時に身体ごと影の中に引き込む。そのまま兵達に引き渡して拘束してもらい、また影から忍び寄るのだ。


 例え気付かれても影から影へと滑り込める。魔導師達さえ捕獲できればオーガもオークもさして脅威ではない。カイルの能力が有ればこそ成りたつ作成だが、つくづく味方で良かったと思う。既に大半のゴブリンは殲滅した。


 獣人は商会の者だけ。エルフ族はメーアとニクス以外は研究者ばかりで、戦闘向きの者が居なかった。


 元魔法国の魔導師達には一般人の警護を頼んだ。直接フェリクスが洗脳している魔導師に会わせるのは、リスクがあると判断した。


 つくづく此処にケットシーとクーシーが居てくれて良かったと思った。


 ルーチェは櫓の上からミルトの横に飛び降りるとハイタッチした。シリウスが教えてくれた異世界の激励のしかたらしい。


「シリウス達が、そこまで見えて来たわ」






「…………まさか……本当に攻め入るとは………何故なんだ…………」


 エルブさんの苦渋に満ちた声に頷く。何としてでも本人に聞くよりない。


 私達は身を乗り出すようにして、戦闘の様子を見つめた。




 隊長さんが降下しながらも魔法陣を展開させると数十のオークが金縛りにあったように身体を硬直させて、木が倒れたような地響きをさせて倒れていく。


 結界前でも思ったがオークとオーガは好戦的で、囚われのエルブさんを見ても戦いを止めなかった。


 今エルブさんが声をかけても従うかどうか………彼等を抑えておける魔王って、やっぱり凄いんだろうな。




 アピスちゃんはダイビングするとなった途端に元気になった。本当に飛ぶのが好きなんだね。


 ニクスさんと共にダイブすると、直ぐに気流を捉えると滑らかに滑空して行く。距離を開けたのは、ニクスさんの魔法の発動を邪魔しないため。それとボー兄さんの可愛がっている、大鴉のカー君との連携技のためでもある。


 ニクスさんが竜巻の様にオーク達を吹き飛ばし、追い打ちをかける様にアピスちゃんが火の粉を出すとカー君が大きな翼で煽っていく。頭に火がついたオーク達が慌てふためき、走り回っては仲間同士で衝突しては気絶したり喧嘩になったりしている。




 着地と共にヴェア兄さんがオーガに体当たりしてなぎ倒すとクーシーのノクスさんが駆け寄り、そのままヴェア兄さんの頭に前脚をかけた。走り込んで来た勢いのままにヴェア兄さんが頭を振ってノクスさんをオーガの群れへ飛ばし、まるでボーリングのピンようにオーガ達を倒していく。


『うまい! 練習してたの、うまくいったんだ〜』


 シリウスが大喜びしている。私が寝ている間、ダンス以外にも色々やってたんだね。




 長老猫さんがオークを水魔法で押し流して着地すると、ラークとデューが駆け寄って来る。


「「お爺様〜ケガとかしてない?」」


「大丈夫じゃ! 心配かけたの〜」


 デューが土の壁でオークを閉じ込め、ラークが電撃でオーガを昏倒させると、長老猫さんが蔦を何処からともなく呼び出し縛りあげていく。


 ラークとデューは徐ろにポシェットからキスルンルン飴を取り出すと口に放りこんだ。二匹はまだ力を加減するには魔力の消耗が烈しく、直ぐに腹が空いてしまうのだ。




 ニクスさんが水魔法をかけ、その後を追いかけるように隊長さんが雷魔法を放つ。水の伝導以上にオーガ達が感電しているように見える……まるでレントゲンのように一瞬だが骨格が透けて見えたような。


 二人の連携技が、どんどん磨かれていってなんだか数年来のバディのように見えてきた。二人の表情からも、手応えを感じているのがうかがえる。


 骸骨博士から贈られた魔力が速くも馴染んできているようで、同じ魔力を贈られた事で更に意思疎通がしやすくなったのかも。


 隊長さんが戻ったことで留守番組の雷電隊も増援隊も、更に士気が上がっている。


 皆たぶん生死を問わずに戦う方が楽だろうに、なるべく捕縛するように気遣ってくれている。本当に良い出会いをしたと思う。








 食堂の横手でローザさんを背にかばいながら、オーガ達に立ち向かうアウレアさんが見えた。上空からでも酷く震えているのが分かった。


 助けに向かおうとした次の瞬間、アウレアさんが狼に変化すると目の前のオーガを切り裂いていた。


「僕は……何故か成長が遅くて。気も弱いしウェアウルフらしくなくて………本来なら、とうに成体になって自在に変化が出来なければならないのに……」と辛そうに話していたのは、つい昨日の事だった。


 日の光に赤毛が燃えるように輝いている立派な体格の狼の姿だ。一歩たりともオーガ達を近付けさせない堂々とした姿に、ホッとするやら嬉しいやらで微笑んでしまう。


 アウレアさんの変化を目にすると息を呑んでいた、クラルスさんが瞬く間に狼に変化し飛び降りて行ってしまった。後を追うようにエルブさんが靄のようになったかと思うと、次の瞬間にはクラルスさんの横に立っていた。


 クラルスさんの変化は素早かったが、狼というよりボルゾイかアフガンハウンドのような長毛で優雅な銀色に輝く姿だった。


 二匹の狼は嬉しそうにお互いに体当たりし始めた。その姿にエルブさんとローザさんも微笑んでいる。


「なんて綺麗なんだろう!」


「だね~狼の印象が変わるよね~」


 さすがに目の前に突然、現れたエルブさんの姿にオーガやオークも後退って行く。






『アシエール国側からもオークが侵入して来たよ! 魔法陣はなかったんだけど……』


『ミミねーさん⁉ 今から向かいます!』


 突然入ったミミねーさんからの念話に、アシエール国側に向かおうとした時だった。


『………あれっ? あの青いのは?』


 まるで道の上を青い布のようなものが流れて来るような光景に目を見張った。







いつも読んで頂き、ありがとうございます。

戦闘シーン、難しいです。もっと勉強します。


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