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知らぬ事とはいえ……

 私はシリウスの手を振り放すと、長老猫の前にスライディングして土下座をした。



「すみません! シリウスは去勢したんですぅ」一瞬にして静まりかえる。


「私の世界では家で飼うには必要な事でして、保護した後も、ずっと身体が弱くて…いや私の責任です!本当に申し訳ありません」



 シリウスはハッとすると「彼女の世界は、ほとんど魔力が無くて病気がちで……」なんだか一斉に、ため息が聞こえた。



 長老猫は私の肩をテシテシと叩いた、以外に力強い。



「魔力の少ない世界か……ならば仕方ない、こればかりは元に戻しようもない、生きて戻って来た事こそ喜ぶべきじゃろうて」皆も一斉にうなずく。


「生きてて良かった」


「つがいなど大した事じゃない」


「人間のパートナーが居るので十分」


 などと、あわてて言い始めてくれて私もホッとして顔を上げた、ケットシーさん達やさしい。


 もう八つ裂きにされる覚悟してたもの……


 シリウスは困ったような顔をしながら私を見つめる。




「そういえば戻ってすぐに、オークの群れに出くわしたとか?」長老猫が気遣うように話題を変えてくれる。


 シリウスも安心したのか、またシッポが上がっている。


「川の西側に飛ばしてやりました」


「何、西側とな? あそこには人間の村が出来ていたはずじゃが」



 そこへ一匹の大柄な猫が駆け込んで来た。


「先程、人間からの協力要請が入りました! 何でもオークの群れが、突如現れたとかで村の者だけでは対処できないそうです」



 途端にシリウスの全身の毛が逆立った。


「居ない間に村が出来てたの?」

 シリウスは私の両手を取ると「すぐに戻って来るから待ってて」

 そうして一瞬で見えなくなった。


「俺も行く!」そう言うが早いか、ミルトも駆け出して行き、それに続いて何匹か走って行く。




 気がつくと、私の横にルーチェが立っていた。


 これは物凄く怒られそうだと覚悟した。


「シリウス兄さんを助けてくれて、ありがとう…ずっと一緒に居てくれて、ありがとう。今、一緒に居てくれて兄さんが、どんなに心強いかしれない」


 私は思いもよらない言葉にホッとした。ルーチェはニッコリ微笑んでくれた。


「私の事は、ルーって呼んでね、あなたの事はなんと呼べば?」


「私は……………ポンで」



 ルーチェは不思議そうに首を傾げる、それだけの仕草でもなんて可愛いんだろう。


「ポン?……なんて意味?」


「私の世界には、ポン菓子って言って穀物なんかを圧力で膨らませて作る物なんだけど、子供の頃から大好きで、それを作る時に(ドン!)って大きな音がするのが面白くて、私の故郷では時々おじいさんが作りに来てくれてたんだけど、私は作る所を見るのが好きで自分の分が終わっても、ずっと見てたの。で、その姿を見た友達が、私をポンって呼ぶようになってね(笑)大人になってからも、その話をするとみんなポンって呼ぶんだよね」




 それから時期にシリウス達が戻って来たが、何だか試合に勝利した時みたいに、笑いながら肩を叩きあっている。


「さすが異世界帰りは違う!」


「オークの群れが瞬殺だもんな〜」


「次は俺にも残しておいてくれ!」


 シリウスは私達のもとに走り寄って来ると、微笑んだ。


「お待たせ〜」


 長老猫は驚きながら「もう終わったのか?」


 シリウスは頷きながら「オークは村の方々に、迷惑をお掛けしたお詫びに置いて来ました」


「何匹、居たのだ?」


「ほんの二十匹程です」一緒に出掛けた猫達も戻って来て、シリウスの肩をバシバシ叩く。


「俺達が一匹片付ける間に五匹も片付けちまったんですよ、もう強いのなんのって!」


「これが異世界帰りってやつですかね~ㇵ、ㇵ、ㇵ」



 なんか私の知っているシリウスの話とは思えない、だって心臓も悪くなってきてて医師に薬を処方されたばかりだったのに……


 私が驚きを越して、青ざめているのに気がついてシリウスが目を覗きこんで来る……もう頭が追いつかない…そのまま私は意識が無くなった。





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